ガブテック(Govtech)とは。行政デジタル化の最新事情
Govtech動向

ガブテック(Govtech)とは。行政デジタル化の最新事情

2019.08.19 Mon

Govtech(ガブテック)とは、行政が民間企業のテクノロジーを活用して、電子申請やデジタル化などを進める取り組みを意味します。国内では、ベンチャー企業やスタートアップと連携することで、すでにガブテックを導入している自治体もあります。
日本では使われ始めて間もない言葉ですが「行政×IT」によって、政府や役所の業務や働き方を変えていくガブテックは、2019年以降注目を集めています。さらに2020年にはデジタル庁の設立が具体的に議論され、行政デジタル化が飛躍的に進もうとしています。
この記事では、ガブテックとは何か、ガブテックのメリットをはじめ、ガブテック業界のイベントやセミナーなど、ガブテックの動向や事例について解説します。

更新日:2020年10月15日

Govtech(ガブテック)とは

Govtech(読み方は、ガブテック・ガヴテック。Gov Techとも記載する)とは、ガバメント・テクノロジーの略で、Government(行政)とTechnology(技術)を組み合わせた造語です。行政の業務にテクノロジーを取り入れることを意味します。非効率なアナログ業務に対して、デジタル技術を用いることで効率化していくのです。例えば、市民がスマートフォンから行政手続きを完結して、役所で長時間待つ必要がなくなるといったことも、ガブテックの一種です。

これまで日本の行政手続きの大半は対面で行われてきました。市民は手続きのために役所の窓口に並び、申請書類に何度も同じ情報を書くといった面倒な手続きに、多くの時間をかけてきました。混雑時には、数時間の待ち時間が発生することも珍しくありません。約6万2,000以上の行政手続きのうち、オンラインで完結する手続きは約14%と言われています(※)。
(※)出典:内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室・総務省『行政手続等の棚卸結果等の概要

このような状況に変化をもたらすのが、ガブテックです。テクノロジーを取り入れて自治体業務にデジタル技術を応用することで、オンラインで行える手続きが増え、市民の利便性は大きく向上し、自治体業務が効率化するのです。

ガブテックの具体的な取り組み

ガブテックの具体的な取り組みとして、「申請手続きのデジタル化」や「相談や問い合わせのデジタル化」などがあります。


1. 申請手続きのデジタル化

市民や事業者が行政に対して行う手続きをオンライン化する取り組みです。オンライン申請を導入することで、申請のために直接役所に出向く必要がなくなり、市民や事業者の手間が大幅に削減されます。

2. 相談や問い合わせのデジタル化

窓口で行っていた相談や問い合わせをデジタル化する取り組みです。例えば、チャットボット(※)を導入したり、手続き案内をオンライン化(※)することで、相談受付をデジタルに置き換えることができます。

(※)チャットボットとは、「対話(chat)」する「ロボット(bot)」という2つの言葉を組み合わせたもので、AI等の活用により問い合わせ対応を自動化する仕組みです。

(※)手続き案内のオンライン化とは、グラファーが提供する「Graffer 手続きガイド」等を利用することで、スマホで質問に回答していくだけで、必要な行政手続きを確認できる仕組みです。

3. 情報発信のデジタル化

SNSやLINEを活用した情報発信を行う取り組みです。FacebookやTwitter、LINEの公式アカウントを活用することで、市民に対して、デジタルで効率的に情報を届けることができます。

4. 定型業務のデジタル化

大量の定型業務をデジタル化する取り組みです。AIやRPAなどのテクノロジーを業務に取り入れることで、大量の定型業務を機械に代替させたり、「kintone」などの業務システムを導入することによって、書類の処理をなくして運用を標準化します定型の単純作業の時間を短縮して業務負荷を軽減する取り組みによって、業務の効率化や職員の長時間労働の削減効果が期待できます。

※RPAとは、Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略で、定型作業を自動化する手法を意味します。

ガブテックのメリット

ガブテックは市民、行政の双方にメリットがある取り組みです。

市民の利便性向上

ガブテックが導入されると、市民の利便性は高まります。これまで政府や行政では、多くの手続きがアナログで行われてきました。そのため市民の多くは「手続きが面倒だ」「税金に見合ったサービスがされていない」「民間ではオンラインが当たり前となっているのに」という点で、公共サービスに対して不満を感じていました。しかし、ガブテックが進み、手続きがネット上でできるようになったり、書面での手続きが必要なくなることによって、市民の利便性は大きく向上します。

行政の業務効率化

ガブテックの取り組みを進めることは、自治体の業務効率化にもつながります。自治体がデジタル技術を活用することによって、紙ベースで行われていた業務が、デジタルに置き換えられます。例えば、「紙で提出された申請書の内容を手作業でパソコンに入力する」といった業務が不要となったり、「書類の内容を目視でチェックして、誤りがあれば赤ペンで修正する」といったチェック業務が自動で行われるようになったりします。

業務の効率化に伴って、コスト削減や行政職員の働き方変革が進むといったメリットもあります。多くの自治体では、職員数が減少傾向にあるにも関わらず、市民からは安定的で質の高い行政サービスが求められています。テクノロジーを取り入れることは、人員の効率的な配置につながります。適切な職員配置が進むことで、長時間労働を削減しながら、本来力を入れたい業務に集中することが期待できます。

参照:内閣府『将来の公共サービスのあり方に関する世論調査
参照:総務省『地方公共団体定員管理調査結果の概要

ガブテックを後押しするベンチャーなどの民間企業

ガブテックを推進する際に注目されているのが、スタートアップ・ベンチャー企業です。たとえば神戸市では、2015年から民間企業と連携することで日本のガブテックをリードしています。また横浜市、鎌倉市、神戸市などの自治体では、ガブテックスタートアップであるグラファーと連携して、電子申請を押し進めています。

ベンチャーの持つテクノロジーを公共分野に活用することは、政府が推進していることでもあります。2019年の統合イノベーション戦略推進会議では、日本国内のスタートアップ企業を倍増する計画が発表されています。公共調達における先進技術の導入や中小・ベンチャー企業の活用促進のための公共調達ガイドラインの策定も行われています。

参考:首相官邸『統合イノベーション戦略2019

国内で進むガブテック事例

日本では、四條畷市などの自治体が先行して行政業務に積極的にデジタル技術を採用し、効率化を図っています。

1. 四條畷市の「住民票オンライン請求」

大阪府四條畷市では、2020年4月から住民がスマホで住民票を請求できる「住民票のインターネット請求」を開始しました。

住民は、スマホの申請画面で必要な通数や記載事項を入力して、マイナンバーカードで本人認証を行い、クレジットカードで支払いをするという流れで、住民票をオンラインで請求できます。申請書を印刷して記入したり、郵便局に定額小為替を買いに行ったりする手間と比較すると、圧倒的に簡単に請求できます。

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2. 宝塚市の「お悔やみ窓口」へのデジタル活用

兵庫県宝塚市では、2021年1月から「お悔やみ窓口」へのデジタル活用を開始。

お悔やみ窓口とは、亡くなった住民のご遺族が、手続きをワンストップで行える窓口です。。亡くなった際の手続きは、福祉や税関連、相続に関するものなど多岐に渡り、ご遺族には大きな負担がかかります。そこで関連窓口への案内を一元化。ご遺族の負担を軽減します。

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3. 横浜市の「融資関連手続きのオンライン申請」

神奈川県横浜市では、2020年5月から事業者がオンラインで融資の関連手続きを行えるサービスを開始しました。事業者は、ウェブから危機関連保証制度の認定申請手続きを行えます。

新型コロナウイルスの影響で融資手続きを行う事業者が急増し、「三密」が全国的に懸念される中、横浜市が全国ではじめて、手続きをオンライン化しました。混雑時には最大3時間の待ち時間が発生しており感染リスクが心配されていましたが、オンライン手続きが行えるようになったことで、混雑した窓口に並ぶ必要はなくなりました。

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4. 神戸市の「新型コロナ関連補助金申請オンライン手続き」

兵庫県神戸市では、新型コロナウイルス感染症の影響で中小企業への迅速な支援が求められる中、市が独自に制定した補助金の申請受付に、オンライン申請を活用しました。

実際に「中小企業チャレンジ支援補助金」では申請全体の8割がオンラインで提出され、オンライン申請が広く活用されました。

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5. 広島市の「被災者支援ナビ」

広島県広島市では、被災者がスマートフォンで公的支援をリストアップできる「被災者支援ナビ」を活用しています。

被災者は、スマートフォンで質問に回答していくだけで被災状況に応じて、受けられる支援をリストアップすることができます。これまで大規模な災害が発生した時に被災者は、窓口に相談しながら、自分に必要な支援策を確認する必要がありました。しかしスマートフォンから支援策が確認できるようになることで、役所に行かなくても簡単に確認できるようになりました。

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6. 呉市の「放課後児童会のオンライン申請」

広島県呉市では、放課後児童会(学童保育)の申し込みにオンライン申請を活用しています。

「忙しい親に何度も訪問させたくない」という思いから、放課後児童会の申し込みをデジタル化した呉市。保護者はこれまで手続きのために、多い場合で3回、児童会に足を運ぶ必要がありました。しかし、オンライン申請を導入したことによって、訪問回数は個別面接時の1回に減少。オンライン申請の利用率は約97.1%と非常に高く、多くの保護者に利用されています。

呉市の事例詳細を見る

ガブテック関連のセミナーやイベントも定期開催

国内では2019年を皮切りに、ガブテック関連のイベントやセミナーなどが開催され、国内のガブテックを後押ししています。

「Govtech Conference Japan 2020 #4」

2020年9月15日に、経済産業省が開催する「Govtech Conference Japan 2020」が開催され、国内のガブテックの動向や新しいテクノロジーなどの事例が紹介されました。Govtech Conferenceの過去の開催はすでに4回にのぼります。

「GovTech Summit 2019 in 東京」

2019年2月10日には、神戸市が主催する「GovTech Summit 2019 in 東京」が開催されました。神戸市は2019年を「ガブテック元年」と位置付け、自治体側から先進的な取り組みをリードしています。

日本のGovtechは今後さらに拡大していく

ガブテックとは何か、どんなメリットがあるのかを解説しました。

労働人口の減少や行政の財政問題などの課題を背景に、その解決策の1つであるガブテックは、今後さらに国を挙げて推進されていくことが予想されます。2019年5月には行政機関に手続きのオンライン化を義務づける「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(デジタル手続法)」が施行。2020年には新政権のもとデジタル庁の設立が重要課題となり、押印廃止や行政におけるデジタル化導入が具体的に進みつつあります。

一方で、日本の自治体の手続きにはまだ紙や手作業によるものが非常に多く、それらをデジタルに置き換えるためには、制度面や運用面で多くの変更が必要になるといった課題があります。デジタルに置き換えるためには費用も手間もかかるのです。しかし、労働力不足が深刻化することが予想される社会で、行政手続きだけが非効率なまま続くことは難しいと考えられます。今後、各自治体でのより具体的な対策が期待されます。

行政デジタル化の実現に向けて、各自治体では取り組みが進んでいます。デジタル改革を後押しするのは、あらゆる行政手続きをオンラインで完結する「Graffer スマート申請」、簡単な質問に答えるだけで行政手続きを洗い出せる「Graffer 手続きガイド」などの製品です。Graffer 製品の導入期間や費用については、お問い合わせ窓口からお気軽にご相談ください。

グラファー Govtech Trends編集部

Govtech Trends(ガブテック トレンド)は、日本における行政デジタル化の最新動向を取り上げる専門メディアです。国内外のデジタル化に関する情報について、事例を交えて分かりやすくお伝えします。

株式会社グラファー
Govtech Trendsを運営するグラファーは、テクノロジーの力で、従来の行政システムが抱えるさまざまな課題を解決するスタートアップ企業です。『Digital Government for the People』をミッションに掲げ、行政の電子化を支援しています。