四條畷市の住民票・転出届のオンライン化 —スマホ申請で実現したスマートな行政サービスの全貌—
国内事例

四條畷市の住民票・転出届のオンライン化 —スマホ申請で実現したスマートな行政サービスの全貌—

2020.04.07 Tue

「市民がスマホから、ボタン一つで住民票を請求できるようにしたい」という発案から、数ヶ月で電子申請を導入した大阪府の四條畷(しじょうなわて)市。四條畷市は、現役最年少市長である東修平市長のリーダーシップのもとで、本格的な業務改革やスマートシティ化に取り組む自治体として全国に広く知られています。人口1000人に対して職員数5人という、同規模の自治体と比較すると圧倒的に少ない割合で運営している四條畷市が実現した、スマートフォンでできる電子申請とは、どのような仕組みなのでしょうか。電子申請の実態や効果、はじめた経緯、業務の変化、これからの取り組みに迫ります。(更新:2020年12月8日)

聞き手:本山 紗奈、小寺 広晃、東 真希(Govtech Trends編集部)

こだわったのは、市民が役所に行かなくても24時間365日どこからでも申請できる行政サービス。

——「住民票のインターネット請求」はどのような仕組みなのでしょうか。

四條畷市 市民生活部 市民課長 木邨(きむら)吉洋氏

「住民票のインターネット請求」は、市民がオンラインで住民票を請求できる行政サービスです。市民は、スマートフォンで必要事項を入力して本人確認を行い、クレジットカードで決済を済ませるだけで、住民票が郵送されてきます。住民票を取るために市役所に行く必要も、窓口で待つ必要もありません。郵送請求を行う場合に面倒な、手書きでの申請書の記載や、定額小為替の購入、返信用封筒や切手の準備も不要です。市民は、一般のオンラインサービスで買い物をするのと同じような感覚で、スマートフォンで簡単に取り寄せられるのです。

——市民はどのような流れで住民票をオンラインで請求するのでしょうか。 

市民は、スマートフォンの申請画面で必要な通数や記載事項を入力して、マイナンバーカードで本人認証を行い、クレジットカードで支払いを行います。申請書を印刷して記入したり、郵便局に定額小為替を買いに行ったりする手間と比較すると、市民は圧倒的に簡単に郵送請求を行うことができます。

市民は、簡単なフォームに沿って入力していくだけで、住民票を取り寄せることができる。決済はクレジットカードだけで完結するので、振り込みやインターネットバンキングは必要ない。面倒な手続きはなく、慣れれば1分程度で申請を完了することができる。

——本人確認は、マイナンバーカードで行われているのですね。

本人認証にはマイナンバーカードを利用しています。マイナンバーカードで認証を行うことで、市民は、氏名や住所などの個人情報を入力する必要さえなくなります。マイナンバーカードは、専用のアプリで読み込むことができるので、外付けのICカードリードライタは不要です。市民は、iPhoneやAndroidをはじめとした一般的なスマートフォンがあれば24時間365日、どこからでも住民票を請求できます。

市民は、専用のアプリ(iOS、Androidに対応)にマイナンバーカードをかざすだけで、スマートフォンで簡単に本人認証を行うことができる。ICカードリードライタは必要ない。

——転出届のオンライン申請にも対応されたのですね。

2020年12月には転出届のオンライン申請に対応しました。市民は転出届の手続きをネットから行うことができます。

なぜ電子申請の導入に踏み切ったのか。きっかけは、市民目線の問題解決思考だった。

——住民票請求の電子申請を行おうと考えたきっかけは何だったのでしょうか。

市民課の職員の「住民票を取るために、市民の方にわざわざ市役所まで来てもらうのが申し訳ない」という市民目線の発案がきっかけでした。東市長のもと業務の効率化を目指して全課で業務の洗い出しを行っていた際に、郵送請求に時間がかかっていることがあぶり出されてきました。郵送請求は、市民にとっても準備に手間がかかる手続きですが、市役所の職員にとってもボリュームが大きい業務の一つです。両者にとっての無駄を省けないかということで、検討がはじまりました。

——新しい行政サービスを導入する際には、不安を感じる方も多いかと思います。電子申請の導入に対する不安はありませんでしたか。

不安が一切ないということはありませんでしたが、実際には心配していたようなことは起きませんでした。当時は、オンラインなのでエラーが発生してデータが届かないことはないのか、二重で処理してしまうことはないのかなどの不安もありました。しかし、打ち合わせを通してグラファーとやりとりを進めていく中で、一つずつ不安を解消していきました。

——現場職員の方々からの反対はありませんでしたか。

現場の職員からの反対は全くありませんでした。四條畷市は、人口1000人に対して職員数5人という、同規模の自治体と比較すると圧倒的に少ない割合で運営しているということもあり、現場職員の中にも、手間を少しでも省こうという意識は浸透しています。また、マイナンバー関連やパスポート関連事務など、職員の業務負荷が増える中で、業務の効率化が必要なことは明白です。現場職員には、グラファーとの打ち合わせにも参加してもらい、一緒にプロジェクトを進めていきました。

導入後、市民からは「オンラインで便利になったよ」というポジティブな声。職員の業務負荷も減少した。

——職員の業務には、もともとどのような課題があったのでしょうか。

住民票の郵送請求に関する業務は、申請内容の確認や、内容に不足があった際の本人とのやりとりに手間がかかってしまう、という課題がありました。職員の業務の流れとしては、郵送されてきた申請書を開封し、申請書の内容をチェックします。そこで誤りがあった場合の申請者本人に連絡して確認する必要が出てきます。また定額小為替の金額に誤りがあった場合には、本人に再提出を依頼したり、おつりを返したりする必要もでてきます。定額小為替の換金などの業務も発生します。個人が申請する件数としては年間2500件程度ですが、これらのチェックややりとりに手間がかかるため、第三者請求も含めると、1人から2人の職員が専任で必要になる量の業務が発生していました。

——電子申請に対応したことで、職員の業務にはどのような変化がありましたか。

住民票をオンライン請求できるようにしたことで、申請内容や定額小為替の確認、申請者本人とのやりとりにかかっていた手間がなくなりました。申請書の内容に関しては、市民がインターネット上で入力する時点でシステムによる自動チェックが行われるため、記入ミスや記入漏れがなくなりました。支払いに関しては、手数料の決済はクレジットカード払いで完了しているため、金額のチェックや定額小為替を換金する手間もなくなりました。業務全体で見ると、負荷はかなり軽減されていると感じています。

——職員の業務フローは変更する必要はありましたか。 

オンラインで対応するからといって、担当職員の業務フローを大きく変更する必要はありませんでした。担当職員は、一日に何回かグラファーの申請画面をチェックし、申請が来ていたら申請書をプリントアウトして、その内容をもとに住民票を発行して郵送するだけです。決済は既に完了しているので、定額小為替を確認する必要はありません。そのため、職員の業務運用フロー自体は変更することなく、業務が削減できている状態です。

——市民の反応はいかがでしたか。

実際に住民票のインターネット請求を利用した市民からは、「オンラインで便利になったね」という声をいただきました。役所に行かなくても24時間申請できることをメリットに感じていただいているようです。従来の郵送請求の際には、郵便局に定額小為替を買いに行ったり、返信用封筒を準備したりする必要がありましたが、今では、スマートフォンから申請ができるので、市民から見ても利便性が大きく高まったのではないかと思います。

今後の展望「市民がすべての申請をオンラインでできるようにしていきたい」

——今後は、さらに多くの電子申請に対応していくのでしょうか。 

ゆくゆくは市民がすべての申請をオンラインでできるようにしていきたいと思っています。戸籍謄本の取り寄せ、課税証明書の取り寄せ、児童手当現況届の提出、国保脱退届の提出などを検討する可能性があります。法律や社会の変化の流れを汲みながら、将来的にはできるものはすべて対応していきたいと考えています。そのためには、マイナンバーカードの普及策もあわせて行っていくことも必要だと思います。市としてのマイナンバーカードの普及率は伸びてきているものの、さらなる対策を検討しています。市民の利便性を向上させながら、市役所の職員の業務負荷も削減していくために、今後も電子申請を活用していければと考えています。

(※文中の敬称略。所属や氏名は取材当時のものです。)

四條畷市様が取り組む、住民票・転出届のオンライン申請は「Graffer スマート申請」によって実現できます。複雑な設定や手続きは一切不要。市民がスマートフォンからいつでもどこでも使える電子申請サービスを導入することができます。

導入時は、さまざまな優良事例を取り込んだテンプレートが活用可能。他にも、転出届の申請、戸籍謄本の取り寄せ、課税証明書の取り寄せ、児童手当現況届の提出、国保脱退届の提出などのさまざまな手続きに活用できます。費用や導入期間については、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。

聞き手:本山 紗奈、小寺 広晃、東 真希 / 写真:櫻井 優 / 文:東 真希 (Govtech Trends編集部)

グラファー Govtech Trends編集部

Govtech Trends(ガブテック トレンド)は、日本における行政デジタル化の最新動向を取り上げる専門メディアです。国内外のデジタル化に関する情報について、事例を交えて分かりやすくお伝えします。

株式会社グラファー
Govtech Trendsを運営するグラファーは、テクノロジーの力で、従来の行政システムが抱えるさまざまな課題を解決するスタートアップ企業です。『Digital Government for the People』をミッションに掲げ、行政の電子化を支援しています。

四條畷市

人口:
5.54万人(令和2年国勢調査)

導入サービス:
Graffer スマート申請