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2021.05.12 Wed

「お悔やみ窓口」×「デジタル」最新事例。宝塚市の挑戦

お悔やみ窓口とは、亡くなった住民のご遺族が、手続きをワンストップで行える窓口です。この「お悔やみ窓口」を立ち上げ、さらにそこにデジタル手法を取り入れたのが宝塚市です。宝塚市は、なぜ「お悔やみ窓口」をはじめたのでしょうか。「こんなに反響があると思わなかった」と語る宝塚市のプロジェクトメンバーに、実際に導入して感じた効果や、苦労したことをお伺いします。「お悔やみ窓口」を運用する際の流れについても詳しく取り上げます。聞き手:本山 紗奈、及川 涼介(Govtech Trends編集部)

「お悔やみ窓口」×「デジタル」最新事例。宝塚市の挑戦

「お悔やみ窓口」とは?

「お悔やみ窓口」とは、住民が亡くなった際にご遺族が行う手続きを、ワンストップで行える窓口です。亡くなった際の手続きは、福祉や税関連、相続に関するものなど多岐に渡り、ご遺族には大きな負担がかかります。そこで関連窓口への案内を一元化。ご遺族の負担を軽減します。

宝塚市の「お悔やみ窓口」利用の流れ

1. ご遺族を「お悔やみ窓口」にご案内

ご遺族を、「お悔やみ窓口(宝塚市では「おくやみ手続き案内コーナー」)」にご案内します。

ワンポイント
ご遺族が他の窓口に行ってしまった場合にも、亡くなった際の手続きであることが判明した場合には「お悔やみ窓口」にご案内します。

2. 受付票に記入いただく

ご遺族の方に、亡くなった方と手続きに来た方の氏名・住所を記入いただきます。

ワンポイント
このタイミングで本人確認を行います。本人確認書類のコピーをご遺族にもお渡しすることで、他の窓口に回った際の本人確認もスムーズにします。

3. 「宝塚市 くらしの手続きガイド」に回答

ご遺族の方に「宝塚市 くらしの手続きガイド」に回答いただきます。回答に迷われる場合は、職員がヒアリングを実施して助言します。

ワンポイント
画面に回答を入力していくと、自動的に「必要な手続き一覧」が洗い出されます。

4. 必要書類の準備

職員が、「必要な手続き一覧」をもとに、必要な申請書を印刷します。申請書には、最初に記入した受付票をもとに氏名・住所などが記載されています。

ワンポイント
手元に小型プリンターを設置。プリントアウトした書類を取りに行くことなくすぐにお渡しできるようにすることで、お待たせする時間を短縮しています。

5. 必要書類と庁内マップのお渡し

職員が、「必要な手続き一覧」や、印字済みの申請書、庁内マップを、紫のファイルに入れてご遺族にお渡しします。

ワンポイント
紫のファイルに入れることで、他の職員に対して「お悔やみ手続き」の対応中であることを知らせることができます。

6. 各担当課を順番に回っていただく

ご遺族の方に、指定した順番に沿って各担当課を回って手続きを行っていただきます。

ワンポイント
手続き場所が分かりにくい課では「このファイルをお持ちの方はこちらへ」といった案内を出しています。ファイルには、宝塚市の花である、すみれ色を採用しています。

なぜ「お悔やみ窓口」を始めたのか

——宝塚市では2021年1月に「お悔やみ窓口」を開始しました。はじめようと思った発端は何だったのでしょうか。

東野:ご遺族の負担を軽減したいと考えたのが発端でした。ご遺族は、故人が亡くなられている時点で、既に心理的な負担を感じていらっしゃると思います。しかし、行政では対象となる手続きごとに、各窓口で何枚もの申請書に同じような記載をする必要があり、さらにご負担をかけていると考えています。そこで、ご遺族のご負担を少しでも軽減できないかという発想のもと、「お悔やみ手続き」の窓口のあり方を考え、開始しました。

——ご遺族の負担を軽減するために、はじめられたのですね。

東野:はい。もう一つの背景として、お悔やみの際の手続きは複数に渡るため、「どの手続きを行うべきなのか」という全体像が分かりにくいといった課題もありました。亡くなられた方の状況によって、手続きには多様な種類があります。もともと、本市は市民課の業務をベースにライフイベントに紐づいた手続きを行う、総合窓口を設置していたため、そこでお悔やみのご相談も受けていました。しかし、引っ越しなどの一般的な手続きも同じ場所で行っていたことから、お悔やみに特化した十分な案内をするのが難しい状況でした。

——宝塚市の「お悔やみ窓口」は、ご遺族が各担当課を回るという方法を採用しています。なぜこの方法をとったのでしょうか。

《ワンストップ窓口の種類には、一人の職員が一つの窓口で全ての手続きを行う「スーパーマン型」や、複数の職員が一つの窓口で全ての手続きを行う「職員派遣型」がある。一方、宝塚市が採用したのが、利用者自身がガイドに沿って複数の窓口を回る形だ。》

森本:ご遺族の方に各担当課を回っていただく方法をとった一つ目の理由は、間違った案内が発生しないようにするためです。一人の職員が一つの窓口で全ての手続きを行う「スーパーマン型」の場合は、頻繁に変わる制度を、一人の職員がすべて正しく理解する必要がありますが、人事異動もある中、そのための人材育成や制度の変更に対応していく知識の習得には最初は良くてもいずれ限界が生じます。専門的な内容は担当課に委ねた方が適切なご案内ができると考え、手続き案内という形式を採りました。

——他にはどのような理由があるのでしょうか。

森本:二つ目の理由は、手続きにかかる時間を短縮したいと考えたためです。複数の職員が一つの窓口で入れ替わりながら手続きを行う「職員派遣型」を採用した場合、担当の職員が移動する間、お悔やみ窓口でご遺族をお待たせしてしまいます。また、すべての手続きをお悔やみ窓口で行うと、お悔やみ窓口での手続き時間が長くなり、次のご利用者様をお待たせしてしまうことになります。

——なるほど。そういった理由でご遺族の方に各窓口を回っていただくようにしているのですね。

森本:すみれ色のファイルを持って各課を回っていただくため、ご遺族の方が各担当課で来庁目的を告げなくても、すぐに「この方はおくやみ関連の手続きに来られている」ということが分かります。また、ファイルの中に死亡された方や申請者などの基本情報が入っているので、同じことを何度も伺う必要がありません。追加で必要な情報だけをお聞きすれば手続きができるので、各担当課での手続きに要する時間は、平均5分前後と、非常に短くなっています。

利用者からは「大満足です」の声

——何名ほどの住民が「お悔やみ窓口」を利用されているのでしょうか。

藤岡:利用者は一日平均7、8名ほどです。実際に亡くなった方の数とかなり近い数値です。計算上は、対象の半数以上の方に利用いただいていることになります。

——利用者からはどのような声が届いていますか。

藤岡:利用者の92%から「満足している」という回答をいただいています。利用者アンケートでは、「手続きが大変だと友人から聞いていましたが、とても楽にできました」「母のときは何をどうすればよいのか分からず不安でしたが、今回は分かりやすくよかった」といった声が届いています。


図1:利用者アンケートの結果


——ほかには、どのような効果を感じていますか。

藤岡:「お悔やみ窓口」を設置することで、手続きの案内漏れが発生しにくい仕組みを構築することができました。これまで、例えば税の変更手続きなどについて、ご遺族の対応が漏れていることがありました。亡くなった時点で必要な税の手続きが行われていないと、未納や納め過ぎが発生します。このような手続きについても「お悔やみ窓口」でデジタルを活用しながら案内することで、漏れなく案内できるようになりました。その結果として、担当課からも「効果を実感している」といった声が集まりました。

「お悔やみ窓口」×「デジタル」の仕組みとは

《宝塚市が採用した「Graffer 手続きガイド」。PCやスマートフォンからアンケートに回答していくと、必要な手続きを洗い出すことができる。宝塚市では、「お悔やみ窓口」で必要な手続きの一覧を簡単に導き出せる仕組みを取り入れた。》

——なぜ「お悔やみ窓口」にデジタルの要素を取り入れようと考えたのでしょうか。

佐伯:宝塚市が目指す「お悔やみ窓口」は、ご遺族の負担と不安を軽減するものです。そのためには、いつでも安定した案内ができる必要があります。しかし、窓口には新人が配属されることもあります。そこで、デジタルを取り入れることで窓口での対応を標準化して、漏れなく案内が行えるようにしました。また、窓口で利用している手続きガイドは、ご自宅でも自由に使っていただけます。

図2:手続きガイドの画面
宝塚市が採用した「Graffer 手続きガイド」。簡単な質問に回答していくと、必要な手続きをリストアップすることができる。

——「宝塚市 手続きガイド」の導入は、どのように進めたのでしょうか。

藤岡:各担当課の職員を巻き込みながら導入を進めました。「手続きガイド」を導入する際には、各担当課に協力してもらう必要があります。各担当課からは、当初「何のためにやるのか」といった反応もありましたが、ガイドの操作画面を見せながら直接説明を行うことで、作成や確認業務を進める上での協力を取り付けることができました。

森本:手続きガイドの質問は、シミュレーションを繰り返して何度も練り直しました。具体的には、窓口での事務フローを実際にやってみて、課題を洗い出して修正するという方法をとりました。グラファーの皆さまにも、何度も相談に乗っていただき、最終的には5分程度で入力を終えることができるように質問を整理しました。

——「宝塚市 手続きガイド」は「お悔やみ窓口」だけではなく、電話応対の際にも活用されていると伺いました。どのように利用しているのでしょうか。

藤岡:電話で、お悔やみに関する手続きの問い合わせがあった際に「宝塚市 手続きガイド」を案内するようにしています。「宝塚市 手続きガイド」は、どなたでも、スマートフォンやPCからアクセスできるサービスです。これまでは、お悔やみ手続きのお問い合わせに対しては、限られた職員しか対応できませんでしたが、お客様ご自身がウェブから利用できるようになったことで、24時間いつでも簡単に必要な手続きを確認いただけるようになりました。お客様にウェブでご自身でも確認できることをお伝えすると、手続きガイドの利用を選択されます。「宝塚市 手続きガイド」の公開に伴い、ガイドを利用した電話用のマニュアルを作成しましたが、マニュアルを利用する機会は全くありませんでした。

今後は、さらに広報にも力を入れていく

——すでに多くの方に利用いただいている「お悔やみ窓口」ですが、今後どのようなことに取り組んでいきますか。

藤岡:「お悔やみ窓口」に来られる方の6割は、市役所に来てはじめて「お悔やみ窓口」の存在を知ったという方です。例えば「健康保険証が手元にあるので返納しなければ」といったきっかけで来庁して、そこで「お悔やみ窓口」があることを知ります。どうやって情報を届けるかが課題になっていますが、そもそもおくやみコーナーは何度も利用するものではありません。そこで、市内にお住まいの方の死亡届が出された際に、葬儀社の方に市で作成したパンフレットをご遺族にお渡しいただくようお願いすることにしました。死亡届はほとんどの場合、葬儀社の方が代行されるためです。

現状、約2割の方は葬儀社から受け取ったパンフレットをきっかけに「お悔やみ窓口」を知ったと回答しています。ご遺族にとって、葬儀社が手続きの最初の接点になるため、もう少し案内を分かりやすく載せることで、ウェブの手続きガイドとの連動を図りたいと考えています。

図3:「お悔やみ窓口」を知ったきっかけ

「こんなにありがとうと言ってもらえる窓口はなかなかない」

——今後、「お悔やみ窓口」の導入を考えている自治体の方に向けてコメントをお願いします。

佐伯:今回の取り組みを通じて、お悔やみの際に住民が感じる不安と負担は「お悔やみ窓口」によって、解消に向かうと感じました。実際に、「ありがとう」「助かった」という反響が多く、予想以上に喜んでいただくことができました。「こんなにありがとうと言われることはない」と語る職員もいるほどです。新しい取り組みにはやはりパワーが必要です。ガイドを作るための作業は大変ですが、今回は、なぜおくやみコーナーを入れるのか、を広く共有でき、多くの職員が積極的に関わってくれたので、思った以上のものを作ることができたと感じています。

また、「スーパーマン方式」は担当職員の負荷が高く、「職員派遣型」は庁舎のレイアウトに左右されるところがあります。そういった課題がある自治体にとっては、今回宝塚市が導入した、デジタルによって関係課を結びつける「お悔やみ窓口」は取り組みやすいものだと思うので、ぜひひとつの事例としていただければと思います。


プロジェクトメンバーの皆様。左から、市民交流部 市民生活室 窓口サービス課 係長 東野 智氏、係長 森本 千奈氏、藤岡 聖奈氏、課長 佐伯 聡子氏

写真:本山 紗奈 / 文:東 真希 (Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名は取材当時のものです。)


宝塚市のお悔やみ窓口は「Graffer 手続きガイド」によって実現することができます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしでわかりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。

グラファー Govtech Trends編集部

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