
小規模自治体の電話対応の「今」〜代表電話の53%を職員の兼務が支える〜
行政デジタル化が進む今も、住民にとって最も身近で確実な行政との接点である「電話」。
ではその電話には、誰が、どのような体制で対応しているのでしょうか。専任の電話交換手を置く自治体もあれば、他の業務と兼務しながら取り次いでいる自治体もあります。同じ「電話対応」という言葉でも、その中身は自治体によってかなり違うはずです。
実際に、全国371団体への調査結果を人口規模別に分析したところ、その違いは想像以上に明確でした。この記事では、数の上では7割以上を占めながら、事例として語られる機会の少ない人口5万人未満の小規模自治体(※1)に注目し、電話対応の「今」と、住民サービスの維持と職員の負担軽減を両立させる選択肢を紹介します
(※1)大規模自治体:人口20万人以上
中規模自治体:人口5万人以上20万人未満
小規模自治体:人口5万人未満
電話対応は住民サービスに欠かすことのできない業務
オンライン申請やチャットボットの普及により、行政デジタル化は着実に進んでいます。国の進める「自治体フロントヤード改革」でも、デジタル技術の活用による住民接点の多様化・充実化と業務の効率化が掲げられています。
一方で、緊急性や個別性の高い相談、デジタル手段の利用が難しい住民への対応などでは、電話が引き続き中心的な役割を担っています。こうした意味で電話対応は「削るべき仕事」ではなく、住民サービスの中核をなす業務のひとつだと言えます。
「電話が他業務を圧迫している」という課題
電話対応が重要な業務である一方、現場では課題も生じています。その負担がどこに、どのような形でかかっているのかを把握しておくことが出発点になります。
実際に、2026年7月に全国の自治体に「電話対応の課題」を調査したところ最多だったのが「電話対応に時間を取られ、他の事務作業に支障が出ている(全体の69%)」という回答でした。人口規模別に見ると、20万人以上で79%、5万人以上20万人未満で84%、5万人未満で64%。いずれの規模でも6割を超える結果となりました。

(n=371、複数回答)
「特に課題は感じていない」という回答も多い
一方で、「電話対応の課題」として2番目に多かったのが「特に課題は感じていない」という回答でした。この回答は特に自治体の規模による差が顕著で、人口20万人以上のすべての自治体で何らかの課題を感じているのに対して、5万人未満では21%が電話対応に関する「課題はない」と回答しています。
代表電話への対応の半数超は「職員の兼務」で支えられている
小規模自治体のほうが「課題はない」のであれば電話対応の負荷が軽いのかといえば、そうでもなさそうです。代表電話の運用体制を尋ねた設問でも、人口規模による体制の違いが明確に表れました。
外部委託を含む専任の電話交換手を配置している割合は、人口20万人以上で9割超、5万人以上20万人未満で87%であるのに対し、5万人未満では28%にとどまります。5万人未満で最も多いのは、「専任の交換手は置かず、総務課等の特定部署の職員が通常業務と兼務して取り次いでいる」で53%でした。この回答は20万人以上で0%、5万人以上でも7%であり、兼務による運用は小規模自治体に集中しています。

(n=371、単一回答)
兼務体制は、負担が数字に表れにくい
兼務体制では、着信のたびに業務が中断されます。中断と再開を繰り返すことは、電話対応と本来業務の双方の効率に影響します。心理的負担の面でも、体制の差は無視できません。
また「電話対応時の不当な言動や要求(カスタマーハラスメント)が、対面窓口より多い」という回答は、5万人未満でも13%にのぼります。専任者や交代要員のいない兼務体制では、こうした対応も特定の職員が担い、その後すぐに業務へ戻ることになります。
つまり、「課題を感じていない」ことと、負担が存在しないことが必ずしもイコールではなく、負担が職員の業務の中に吸収され、数字として可視化されていないとも読み取れます。
デジタル技術を活用した業務改善、5万人未満では86%が未着手
それでは、電話対応においてどのくらいの自治体が、デジタル技術を活用した業務改善に取り組んでいるのでしょうか。調査では「取り組んでいない」という回答が、20万人以上で50%、5万人以上20万人未満で55%にのぼり、この領域の取り組みは規模を問わず途上にあります。中でも5万人未満では87%と、特に進んでいない様子がうかがえます。

(n=431、複数回答)
取り組みとしてよく行われているのが「コールセンターの外部委託」ですが、ここでは自治体規模による差が顕著です。20万人以上の29%、5万人以上の24%に対し、5万人未満では3%でした。電話件数が相対的に少ない小規模自治体では委託の費用対効果が合いにくいという事情も考えられます。
小規模自治体の視点で考える、3つの選択肢
電話業務の効率化に向けた取り組みには、大きく3つの選択肢があります。中でも、限られた人員と予算で運用する小規模自治体にとって現実的なのはどれなのか、順に見ていきます。
1. コールセンター業務の外注
関連業務をまとめて委託することで、職員の負荷は大きく軽減できます。一方で毎年のコストが大きく、電話件数が相対的に少ない小規模自治体では費用対効果が合いにくい面があります。ただし、電話業務の内容が近隣自治体間で共通化できる場合は、複数自治体の電話業務を共同で外注する共同BPOという手法が有効になる可能性もあります。
2. 職員の増員
負荷の分散には有効ですが、増員自体は容易ではありません。業務量そのものが減るわけではないため、長期的には業務の見直しと併せて検討する必要があります。
3. システムの導入
IVR(自動音声応答)やAI電話などのシステムは、比較的低コストで始められる選択肢です。システムでは次のように、一次受付や要件の聞き取り・振り分けなどの業務を支援することが可能です。

システム導入をためらう自治体は少なくない
このように小規模自治体にとってシステム導入が現実的な選択肢の一つであるのに対して、システムの導入にあたっては、「住民が自動音声に戸惑わないか」「設定や運用がかえって負担にならないか」といった懸念もあります。
この点は調査結果にも表れています。代表電話へのIVR・AI応答システム等の導入意向を尋ねた設問では、5万人未満の自治体では「導入の必要性は感じているが、予算の確保や高齢者への配慮等の観点から慎重に検討している」が27%(59団体)と、「特に検討していない」(53%)に次ぐ回答となりました。必要性の認識と導入への慎重さが併存している状況がうかがえます。(5万人未満 n=219)
まずは業務や期間を絞って「小さくはじめる」
導入への懸念を抑えながら効果を確認するには、範囲を絞って始める方法が有効です。絞り方には、大きく2つの方向があります。
1. 対象業務・時期を絞る
問い合わせが集中する時期や業務に限定して導入する方法です。例えば、「選挙関連の問い合わせ」や「引っ越し関連の問い合わせ」「マイナンバー関連の問い合わせ」「粗大ごみ関連の問い合わせ」など、問い合わせの内容が想定しやすい場面から始めることができます。対象業務を特定しやすく、意思決定の階層が少ない小規模自治体は、こうした段階的な導入と相性が良い面もあります。
2. 自動化する範囲を絞る
電話対応件数の最も多い代表電話にシステムを導入しつつ、システムで自動化するのは「取り次ぎ」だけに絞る方向もあります。用件の聞き取りと担当課への振り分けはシステムが行い、質問への回答はこれまで通り職員が行う形です。この方法の場合、個別性の高い相談は引き続き職員が対応するため、回答の質は変わらないというメリットがあります。また、回答内容をあらかじめ登録する必要がなく、準備の負担が小さい点も大きな利点です。
電話業務改革に取り組んでいる自治体の最新事例
今回ご紹介したような電話業務の課題解決は、「Graffer Call」によって実現できます。実際に、以下のような自治体が取り組みを進めています。
・区役所市民課へのマイナンバーカードに関する電話のうちの約半分をAIが完結。北九州市が挑むAI電話自動応対
・調布市保険年金課、デジ田交付金活用によるIVR(自動音声応答)導入で、「マイナ保険証などによる電話混雑時でも市民の利便性を向上」
・小平市市民課がIVR(自動音声応答)でマイナンバーカードの問い合わせ満足度を向上。「電話がつながらない」という市民の不安を防ぐ
・オートコールの活用で納付率が向上した大東市。固定資産税等の未納対象者の約3割が支払い
・オートコールで、水道料金未納のうち約30%を督促前に徴収。尼崎市の最新事例
・自動音声による電話案内で約45%の応答業務を削減「目に見えて電話が減った」大阪府吹田市
・【セミナーレポート】京都市・寝屋川市が語る、IVR導入の効果と課題
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調査概要
【※要確定:調査主体・調査時期・調査対象・調査方法を補記してください】
Q8「電話対応の課題」/Q9「電話対応の業務改善」: n=371(複数回答。%の分母は回答自治体数)
Q10「代表電話の運用体制」: n=371(単一回答)
Q10-1「IVR・AI応答システム等の導入意向」: n=312(単一回答。%の分母は当該設問の回答自治体数)
人口規模区分(Q8・Q9・Q10): 20万人以上 n=24/5万人以上20万人未満 n=75/5万人未満 n=271 人口規模区分(Q10-1): 20万人以上 n=23/5万人以上20万人未満 n=70/5万人未満 n=219
※人口20万人以上の自治体はサンプル数が少ないため、参考値としてご覧ください。


