電話応答の約45%を削減
——「自動音声による電話案内」をどのような業務に利用していますか。
国民健康保険課への問い合わせを担当グループに振り分ける際に、自動音声を利用しています。市民は、宅配便の音声ガイダンスのようなイメージで、問い合わせ内容に応じて電話機の数字を押すと、適切な担当者につながることができます。
役所に電話した市民は、取り次ぎのために待ったり、たらい回しにされたりすることなく、適切な担当者につながることができる。
——「自動音声による電話案内」の導入後は、電話の応答数にどのような変化がありましたか。
導入後は、1カ月で約50時間以上の業務が削減されました。国民健康保険課では、1カ月あたり6,000〜8,000件の電話問い合わせがあり、特に繁忙期には、1日中電話が鳴りやまないこともありました。しかし、導入によって全体の45%ほどの受電が自動化され、体感できるくらい、目に見えて電話が減ったと感じています。
導入から数カ月のタイミングで、電話応答の45%ほどが自動化された。繁忙期ほど業務削減効果は大きくなる。
——以前は電話応対に負荷がかかっていたのですね。
以前は、常に誰かが電話をしている状態でした。電話の取り次ぎも多く、職員に負担がかかっていました。ひっきりなしに電話があるため業務が停滞し、残業も多く発生していました。
——電話の取り次ぎについては、導入後、どのような変化がありましたか。
適切な担当者に自動で振り分けられるため、導入後は取り次ぎの電話が発生しなくなりました。取り次ぎがなくなったことによって、職員が自分の業務に集中しやすい環境になっています。
——業務の大幅な効率化につながっているのですね。市民にはどのような変化がありましたか。
市民は、夜間や土日などの閉庁時でも、電話で疑問点を解消できるようになりました。例えば、保険証の再発行や加入や脱退の方法など、よくある問い合わせ内容については、担当者と話すのではなく、適切なページのURLをSMS(※)で受信することができます。
(※)SMSとは、携帯電話番号を用いて短いテキストメッセージを送信する機能です。
市民に対して送信した実際のSMS。市民は、市のホームページなどのURLを簡単に受信できるため、必要とする情報を適切に得ることができる。
——電話が減ったことによって、職員からはどのような反応がありましたか。
職員からは「電話が常に鳴っていることがなくなった」という反応がありました。折り返しの電話も減少し、例年よりも繁忙期の業務が楽になった感覚があります。
以前は電話のために業務が中断されて、手戻りが発生することもあったのですが、受電が大幅に減少したため、これまで手が回らなかった業務に取り組みやすいようになってきています。
自動発信によって、市民から「教えてくれてありがとう」の声
——業務の大幅な効率化につながっているのですね。次は電話の発信業務について教えてください。自動発信をどのような業務に活用していますか。
国民健康保険料の口座振替ができなかった方に対するお知らせや、健診のお知らせに対して、自動音声による発信を利用しています。
国民健康保険課では、国民健康保険料の口座振替ができなかった方や、健診の対象者への案内に、自動音声による電話発信を利用している。
——どのくらいの方が自動音声による電話に応答しましたか。
自動音声による電話を確認したのは、対象者の62%です。以前は口座振替ができなかった方に対しては、適切な案内を行えていませんでしたが、導入を機に必要なタイミングで案内できるようになりました。
折り返しも含めると、対象者の62%が自動音声を確認した。
——自動音声発信の電話に出られなかった方が折り返し電話をした場合、どうなるのでしょうか。
折り返しの電話があった場合には、発信したものと同じ音声を再生するようにしています。発信直後に、折り返しの電話がかかってくることが多いため、職員の手をかけずに、案内できるような仕組みにしています。
——実際に自動音声による電話案内を利用した市民からは、どんな反応がありましたか。
自動音声で案内した市民からは「教えてくれてありがとう」という声が届いています。対象者には高齢の方の割合が多いため、導入前は、機械的な音声が受け入れられるのかどうかという不安もありました。
しかし実際には、音声に関する不満は届いておらず、自動音声が市民になじみのある手段となってきている様子がうかがえました。自動音声に加えて、SMSで市のホームページのURLなどを送信することもできるため、口頭のみの説明よりも、市民の負荷軽減につながっているケースもあるのではないかと考えています。
健康医療部 国民健康保険課 資格・賦課グループ 下野 一樹氏
案内から疑問点の解消まで市民目線で設計
——導入時に工夫したことはありますか。
自動音声の内容が分かりやすくなるように工夫しました。意識したのは、耳での聞き取りやすさです。専門用語などの難しい言葉は省き、音声だけで意味が理解できるように一文を短く簡潔にして、何度もテストを繰り返しました。
——市民にとっての分かりやすさを重視したのですね。他に配慮したことはありますか。
市のホームページに発信時の電話番号を記載し、検索エンジンに適切に表示されるように配慮しました。自動音声による電話を受信した方が、「本当に役所からの電話だろうか」と疑問に感じて検索した際、しっかりと不安を拭い去ることができるようにしています。
——他にも市民目線で取り組んだことがあれば教えてください。
自動音声で案内される、市のホームページについても、より分かりやすくなるよう改善しました。これまでは情報が多く、必要な情報にたどり着けないこともありましたが、内容を簡潔にし、よくある疑問点を解消できるようにしました。結果として、一般的な内容に関する問い合わせは、以前よりも削減された実感があります。
自動音声による案内とあわせて、市のホームページを改善。市民が、よりスムーズに疑問を解消できるようにした。
——実際に運用を行っている中で、便利な機能はありますか。
「Graffer Call」では、ログが見られるため役に立っています。電話がかかってきた時間、電話番号、終話までの長さ、押されたガイダンスの番号がひと目で分かるため、どのくらいの効果があったのかを日々確認することができます。
電話に関する業務は、手動で計測するのが難しく、業務量が見えづらいのが課題です。しかしログを見れば、すぐに結果が分かり、取り組みを改善できるため、職員のやりがいにもつながっています。
今後はさらなる活用に取り組んでいく
——「Graffer Call」を利用してみて、率直にどのように感じていますか。
「Graffer Call」は、簡単な設定で、受電と架電を自動化できるサービスです。課のように小さい単位から短期間で導入できるため、低コストではじめやすいのも魅力です。携帯電話番号を把握していない対象者に、固定電話で自動連絡ができる点も導入のポイントでした。
——今後はどのようなことに取り組む予定ですか。
今後は、国民健康保険課の問い合わせ先を自動受電の電話番号に統一することによって、さらなる業務効率化につなげていきます。
あわせて、これまで郵送で行っていた案内にも活用の幅を広げていきます。例えば健診のお知らせをはがきから自動音声に変更し、オンライン申請のURLをSMSで送信するようにしたところ、大きな反響がありました。この取り組みは市民の利便性向上だけでなく、事務コストの削減にもつながるものです。
このように、特に自動音声と親和性が高い領域については、積極的に活用を検討することによって、市民サービスの向上と職員の業務効率化を両立させていきたいと考えています。
取材・写真:佐竹 佳穂 / 取材・文:東 真希(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)
吹田市が取り組む、自動音声による電話案内は「Graffer Call」によって実現できます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしで分かりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。
グラファー Govtech Trends編集部
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