区役所市民課へのマイナンバーカードに関する電話のうちの約半分をAIが完結。北九州市が挑むAI電話自動応対
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区役所市民課へのマイナンバーカードに関する電話のうちの約半分をAIが完結。北九州市が挑むAI電話自動応対

2026.01.26 Mon

「Graffer AIオペレーター」を活用し、区役所市民課市民係への問い合わせ電話のうち、マイナンバーカードに関する問い合わせをAIが音声で回答する実証実験に取り組む北九州市。「AI活用ナンバーワン都市」を目指し、市民の利便性向上と、職員がよりきめ細やかな支援や相談に注力できる仕組み作りに挑戦しています。

AIによる電話自動応対の仕組み

——AIによる電話自動応対の具体的な流れを教えてください。

堀尾:市民が区役所市民課市民係に電話をかけると、まずはAIが用件を聞き取ります。マイナンバーカードに対する質問の場合にはそのままAIが自動音声で回答を行い、それ以外の質問の場合には担当課へ転送する仕組みです。このように、AIによる自動回答と職員への取り次ぎを自動で振り分けるのが大きな特徴です。

問い合わせ内容に応じて、AIが回答か転送かを判断。全ての電話をAIで完結させるのではなく、職員の対応が必要なものは転送する、ハイブリッドな仕組みとなっている。(2025年12月現在、小倉北区役所市民課市民係で実証実験中)

——どのくらいの問い合わせがAIの自動音声で完結しましたか。

堀尾:実証実験では、区役所市民課市民係の直通電話に寄せられるマイナンバーカード関連のお問い合わせのうち約半分をAIで完結しています。区役所全体の代表電話は、従来どおり電話交換手が取り次ぎを行っており、今回の実証実験の対象外として切り分けています。

マイナンバーカード関連の問い合わせのうち、約半分がAIのみで完結。

——AIの自動音声のみで完結した問い合わせには、具体的にどのようなものがありましたか。

堀尾:例えば、マイナンバーカードの交付通知書や電子証明書の有効期限通知書の到着後のお問い合わせについては、AIの自動音声のみで回答が完結しました。通知が届いた直後は、「まず何をすればいいのか」「持参するものは何か」といった定型的な質問が多く寄せられます。こうした、手順や持ち物に関する回答はAIとの親和性が非常に高く、職員が直接対応することなく、AIの回答のみで完結した事例が複数確認できています。

回答パターンが決まっている定型的な質問は、AIによる自動音声のみでスムーズに完結している。

——マイナンバーカードに関する問い合わせでも、現時点ではAIが回答できなかったのはどのようなケースでしょうか。

堀尾:例えば、「マイナ保険証が医療機関で使えなかったけれどなぜか」といった、原因の切り分けが複雑な問い合わせは、AIによる自動回答は行っていません。こうしたケースは、職員による状況確認が必要なケースとして、市民から質問があった時点で、職員に転送される仕組みにしています。

市民と職員、それぞれの反応

——新しい取り組みとなりますが、市民からはどのような反応がありましたか。

堀尾:市民からは、ポジティブな反応とネガティブな反応の双方が寄せられました。まずポジティブな点としては「機械音声の方が、かえって音声がクリアで聞き取りやすかった」という反応がありました。

一方で、「説明が長い」「AIが話している途中で割り込めないのが不便」といったネガティブな指摘もありました。現在は「人間が話し終わった」もしくは「転送の必要がある」とAIが判断するまでの待機時間を2秒以上に設定しているのですが、この「間(ま)」が長く感じられるといった反応もあり、よりスムーズな会話のリズムを作るためには、改善の余地があると感じています。

市民から寄せられた主な反応。音声の聞き取りやすさが評価された一方、会話の「間(ま)」や割り込み不可の仕様には課題も見られた。

ただ、導入前に最も懸念していた「ハルシネーション(AIがもっともらしい嘘の情報を伝えてしまう現象)」については、現在のところ指摘は入っていません。正確な案内ができているという点では、ひとまず安心しています。

——職員からはどのような反応がありましたか。

堀尾:職員からは「心理的な負担が減った」という反応が寄せられています。これまでは電話に出るまで用件が分からないケースが多くありましたが、現在はAIが一次対応を行い、用件を把握した状態で転送されてきます。AIによる要約は端的で分かりやすいため、「何の電話なのかを把握した状態で受話器を取れる」という安心感が喜ばれています。実証実験が進むにつれて、「今後もAIによる応対を継続してほしい」という前向きな感想も寄せられています。

導入の背景と、庁内で議論された懸念への対策

——改めて、今回の取り組みをはじめた背景について教えてください。

石松:北九州市では、「AI活用ナンバーワン都市」を目指すことを宣言し、令和9年度までに、「AIによる社会課題等を累計10件解決する」といった指標を掲げています。その戦略的な取り組みの一環として、市民に身近な窓口業務として、今回の実証実験を行いました。

——数ある業務の中でもなぜ、マイナンバーカードに関する問い合わせに着目されたのでしょうか。

堀尾:マイナンバーカードに関する問い合わせは、定型的な質問が多く、質問と回答の内容が国や自治体の中で既に整理・集約されているためです。こうした点からAIとの親和性が高く、自動化による導入効果が出やすいと判断し、マイナンバーカード関連の問い合わせを最初の対象に選びました。

小倉北区市民課 市民係長 堀尾 勇氏

——電話応対にAI活用を検討する際、庁内ではどのような懸念があり、どのように整理しましたか。

石松:検討段階で庁内では、「ハルシネーション」「システム障害」といった懸念が挙がっていました。

——まずは、ハルシネーションに対する懸念について教えてください。

石松:ハルシネーションについては、AIが誤った回答をするのではないかという懸念がありました。そこで、回答できる範囲とできない範囲について、事前に明確に線引きを行いました。回答できないものは即座に職員に転送することで、誤った情報を伝えてしまうリスクを回避することを重視しました。

堀尾:例えば、「マイナンバーカードの代理受け取り」や「特急発行」といった、個別の判断が必要なケースはAIが回答せず、最初から職員に取り次ぐ仕組みにしています。

——次に、システム障害に対する懸念について教えてください。

石松:「AIやシステムがダウンしたら業務が止まるのではないか」といった懸念もありました。このような懸念に対しては、障害発生時のマニュアルを詳細に定め、バックアップ体制を明確にすることで、庁内の理解を得ることができました。

政策局 DX・AI戦略室 DX推進コーディネーター 石松 研一氏

実証実験に向けた事前準備の工夫

——AIの回答精度を担保するために、具体的にどのような工夫をしましたか。

石松:回答のベースとなる知識データには、地方公共団体情報システム機構やデジタル庁が公開しているマイナンバーカード関連の「よくある質問」を活用しました。そこに、北九州市で設置しているマイナンバーカード特設コーナーや区役所の窓口情報などを追加することで、AIが参照する回答データベースを用意しています。特に、窓口情報を追加する作業は丁寧に行い、市民が迷わないように注意を払いました。

——新しいシステムを市民に広く知ってもらうための広報施策について教えてください。

石松:市の公式ホームページによる発信や、市長の定例会見における発表に加え、ローカルテレビ局に取り上げられました。例えば、ローカルテレビ局では、キャスターが実際にAIと対話する様子が放映され、AIとどう話せばいいのかが視覚的に伝わったことで、多くの市民へのスムーズな認知につながったのではないかと感じています。

人口減少社会を見据え、AIと職員が「補完し合う」未来へ

——今後、取り組みをどのように発展させていく予定でしょうか。

堀尾: 市民課としては、マイナンバーカード関連に加えて、例えば印鑑登録や証明書の発行といった定型的な問い合わせが多い他の業務にも対象を広げ、AIで完結できる範囲拡大を検討していきます。将来的には、今回の実証実験で得られた知見を他部署にも共有し、全庁的な展開も見据えていきたいと考えています。

石松:AIの立ち位置は「一次対応」であり、その先の「個別対応」は職員が担う。この役割分担をさらに明確にしていきたいと考えています。今後の人口減少に伴い、職員数が限られていくことは避けられません。だからこそ、自動化によって生まれた時間を、福祉分野や複雑な相談対応など「人が人に向き合うべき業務」にあてていくための仕組み作りが不可欠だと考えています。

北九州市には、市長の強力なリーダーシップのもと、職員全体に「AIを活用して課題を解決しよう」という文化が根付いています。この強みを活かし、テクノロジーによる市民の利便性向上と、持続可能な行政サービスの両立に取り組んでまいります。

取材:柏野 幸大 / 取材・文:東 真希 / 写真:菅原 大

(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)

北九州市が取り組む、電話応対の自動化は「Graffer AIオペレーター」によって実現できます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。

グラファー Govtech Trends編集部

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