オートコールで、水道料金未納のうち約30%を督促前に徴収。尼崎市の最新事例
国内事例

オートコールで、水道料金未納のうち約30%を督促前に徴収。尼崎市の最新事例

2023.07.11 Tue

兵庫県尼崎市では、水道料金の支払いが滞った市民に対して、「Graffer Call」の機能である、自動音声による電話の一斉発信(オートコール)を活用。電話を自動発信することによって、督促状発送前に水道料金未納者のうちの約30%から徴収できる仕組みを構築しました。

オートコールを収納対策に活用。対象者の約30%が督促前に支払い

——オートコールをどのような業務に利用していますか。

中納:水道料金を納付書払いしている方を対象に、納付期限内に支払いが行われなかった場合に、オートコールを利用して案内を行っています。自動音声では、「支払いが確認できていない」という主旨の案内を行っています。

尼崎市では、水道料金の納付期限が過ぎた方に対して、オートコールで案内を行っている。

——どのようなタイミングで一斉に電話発信をしているのでしょうか。

中納:督促状を送付する前のタイミングで電話発信を行っています。「支払いをうっかり忘れた方」に向けて電話を発信するのが効果的だと捉えているため、督促や催告を行う前の段階が適切であると考えています。

納付書払いの方を対象に、納付期限までに支払いがなかった方に対して、自動電話による案内を行っている。

——オートコールによって、どのくらいの効果がありましたか。

中納:自動電話で連絡した方のうち、約30%が数日中に納付書で料金を支払いました。自動電話をしなかった頃は、督促状を送付するまでの期間に納付する方は約8%だったため、納付率は大幅に向上したといえます。ここまで改善するとは予想していなかったため、率直に驚きました。

自動音声による一斉発信によって、督促状を送付する前の段階で、約30%の方が支払いを行った。

——他にはどのような効果がありましたか。

中納:副次的な効果として、督促状を送付した後の段階でも、支払いを行う方が30%から約75%に増加しました。オートコールを通じて、注意を与える効果があるのか、電話案内を聞いた段階では支払わなかった場合も、督促状を受け取った後すぐに支払うケースが増えています。人の手を介せず、早期に回収できるようになり、大きな変化を感じています。

督促状を送付する前の自動電話は、送付後の収納対策にも効果があった。

——職員の業務にはどのような影響がありましたか。

中納:督促状の郵送コストが約30%分削減されました。電話発信の後すぐに支払った方については、督促状を送付する必要がなくなったためです。

未払いの初期の段階で支払いが行われることによって、最終的には、その後の督促、催告の段階に進む方の母数を削減し、訪問や納付相談などに取り組む時間に当てる時間を拡充していきたいと考えています。

上下水道部 お客さまサービス課 料金・ICT担当 係長 中納 啓輔 氏

——市民からは、自動電話に対する意見などはありましたか。

中納:市民からは自動音声に対するネガティブな意見はありませんでした。導入前には機械的な音声アナウンスが受け入れられるかどうか不安がありましたが、実際には不安や不満の声は届いておらず安心しました。

約64%が自動音声電話に応答

——どのくらいの方が自動音声による電話に応答していますか。

中納:折り返し電話も含めると、約64%が自動音声による電話に応答しています。郵送などの手段の場合、送付しても確認されているかどうか分からないという課題がありますが、「Graffer Call」では、反応が数値で確認できるため状況が把握しやすいのがメリットです。

自動音声による電話案内に応答したのが約64%(そのうち電話を最後まで聞いたのが約74%、途中で切断したのが約26%)。応答なしが約34%(そのうち折り返しをしたのが約36%、折り返しをしなかったのが約64%)という結果だった。

——電話発信は何件くらい行っているのでしょうか。

中納:発信件数は、初回は105件、その後480件、2000件と様子を見ながら徐々に増やしています。発信件数を増やしても、約7割が電話に応答するという傾向は変わりません。

——電話に出られなかった方が、折り返し電話をした場合はどうなるのでしょうか。

中納:折り返し電話については、発信時と同じ自動音声が流れるようになっています。

直感的な操作画面で、職員自身が柔軟に設定できる

——導入時に工夫したことはありますか。

藤井:機械音声によるアナウンスを、耳で聞いて、聞き取りやすい内容になるように工夫しました。機械音声ではなく録音した音声の方がよいのではないかという声もありましたが、音声を聞いた人が、実際の人間と間違えて話しかけてしまうこともあるのではないかと考え、あえて機械らしさも残すようにしました。グラファーの担当者にアドバイスをもらいながら、何度もテストを繰り返し、より適切な内容を目指しました。

——運用を行う中で、便利だと感じる機能はありますか。

藤井:架電先の電話番号リストを簡単に編集できる機能が便利で気に入っています。職員自身が気づいたらすぐに追加・削除できるため、自由度が高く、運用に馴染みやすいと感じます。「Graffer Call」自体が直感的に操作できるサービスで、機能もどんどん追加されるため、今後の新機能や機能改善にも期待しています。

上下水道部 お客さまサービス課 料金・ICT担当 藤井 嵩士 氏

今後はさらなる活用に取り組んでいく

——今後の課題を教えてください。

中納:発信件数のうち約7%については、職員に直接つながる番号に折り返しの電話がかかってきます。そのため、一気に発信すると、折り返しの問い合わせで電話が一時的にパンクしてしまう課題があります。そこで、今後は電話の発信については、件数を分散させながら実施したいと考えています。

——尼崎市では、職員への直接の折り返し電話を削減するのではなく、分散させるという考え方なのですね。

中納:折り返し電話の大半は、納付書の紛失などの相談です。これらは支払いのために必要なアクションのため、省くことができません。ただ、殺到すると回線が不通となってしまうので適切に分散させていく予定です。

——最終的には、どのくらいの業務削減を目指していますか。

中納:1カ月あたり約7,000枚の督促状を送付しているのですが、そのうち約3,000枚程度の削減を目指していきます。発信を分散させながら、徐々に発信件数を増やしていきたいと考えています。

——他にはどのような取り組みを進めていきますか。

中納:「Graffer Call」では、連絡手段として電話以外にショートメッセージ(SMS)も選択することができます。そのため、電話とSMSで効果を比較し、さらに公開的な案内を行っていきたいと考えています。

あわせて、「Graffer Call」の活用の幅を広げていくことも検討しています。例えば、事故や災害で水漏れが発生した際、特定の地域の対象者にだけ、水道の使用を控えるような自動電話をかけるような取り組みもできるのではないかと思います。「Graffer Call」は慣れれば5分程度で設定できるため、適切に活用することによって、より市民に寄り添った取り組みを進めていけるのではないかと考えています。

取材・写真:佐竹 佳穂 / 取材・文:東 真希(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)

尼崎市が取り組む、自動音声による電話案内は「Graffer Call」によって実現できます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしで分かりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。

グラファー Govtech Trends編集部

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