オートコールの活用で納付率が向上した大東市。固定資産税等の未納対象者の約3割が支払い
国内事例

オートコールの活用で納付率が向上した大東市。固定資産税等の未納対象者の約3割が支払い

2024.11.22 Fri

大阪府大東市では、固定資産税や住民税等の納付期限が過ぎた市民に対する案内に「Graffer Call」の機能である、自動音声による電話の一斉発信(オートコール)を活用。対象者のうち約3割が支払いを行いました。

対象者のうち約3割がオートコールによって納付

——オートコールの利用場面を教えてください。

固定資産税や住民税等の税金に未納のある市民を対象に、納付勧奨として電話の一斉発信(オートコール)を利用しています。

オートコールによって、納付を忘れている住民に対して案内を行っている。

——どのようなタイミングでオートコールを実施していますか。

納付期限後の、督促状を送付する前のタイミングにオートコールを利用した案内を行っています。


督促や催告を行う前の段階で、オートコールを利用している。

——督促状を送付する前にしたのはなぜですか。

新しいシステムを導入することによる庁内の反応も鑑みて、滞納の督促ではなく納付勧奨からはじめようと考えたためです。対象者は限定されますが、まずは小さくスタートして効果を明確にすることから進めたいと考えました。

——どの程度の効果がありましたか。

オートコールで電話発信したうちの3割程度が、数日以内に納付書で支払いを行いました。導入前は、1割以上の効果があれば費用対効果が見込めると試算していましたが、実際には3割と、目標を大きく上回る効果が得られました。また、早期に納付されることで、これまで納付書の期限を過ぎた方に対して発送していた督促状を送る必要がなくなり、郵送費用削減の観点でも効果が出ています。

オートコールをした対象者のうち約3割が、納付書で支払いを行い、納付率の向上に貢献した。

——市民から、自動電話に対する意見や反応はありましたか。

市民からは、極端にネガティブな反応はありませんでしたが、少数からは「詐欺と勘違いした」といった意見がありました。しかし、督促や納付勧奨の業務では、納付してもらうことが重要です。そうした意味では「反応がある」ということは「認知している」ということのため、ポジティブに捉えています。

一度に300件を一斉発信

——一度にどのくらいの量を一斉発信していますか。

一度に約300件の一斉発信を行っています。導入以来、合計約1,500件の発信を行っている計算となります。職員の手は不足しているため、仮に職員自身が電話をかけて同じことを実現しようとすると、この取り組みは不可能でした。

——発信は毎月固定のタイミングで行っているのでしょうか。

各月、第三日曜日に一斉に発信しています。日曜日に発信している理由は、自動電話を受けた市民が、市役所に折り返し電話を行うという選択肢ではなく、必要に応じて自らネットで検索を行うなどの方法で、納付書の再交付のためオンライン申請を行うなどの選択肢を取りやすくするためです。

また、折り返し電話を行った方に対しては、導入後に追加で、自動音声による電話案内(IVR)での対応を試行しています。


左から、永田主査、宮本課長、鈴木補佐、八木主査、中村上席、西山氏

——IVRによる受電にも対応しているのですね。

折り返し電話がかかってきた場合には、「納付書の再発行をご希望の方は1を押してください」のように、よくある質問に対して自動で回答できるようにしています。そのため、市民はより少ない手間で、目的とする情報にたどり着くことができます。

機械音声によるアナウンスは、未納者だけが分かる内容に

——自動電話で工夫していることはありますか。

自動電話で発信する文言については、個人情報を含まないような文言にするよう配慮しています。仮に本人でない電話番号に自動音声が流れた際にも問題が起きないよう、「税金の納付の確認ができておりません」のようにすることによって、未納者本人だけが分かるように気を配りました。

機械音声によるアナウンスは、個人情報が分からないように配慮した。

——導入時の庁内調整について、何か注意したことはありますか。

折り返し電話に対してはIVRによる自動音声を流すといった工夫はしていますが、それでも代表電話や他の課の電話に折り返し電話がかかってきてしまうケースも想定されます。そのため、庁内の関係各所には事前に電話がかかってくる可能性がある旨を共有して、混乱が発生しないようにしました。

今後は、さらなる納付率の向上に取り組んでいく

——今後の展開について教えてください。

今後は、オートコールの対象範囲を、督促状を発行した後の対象者にも広げていくことを検討しています。

さらに領域としては、国民健康保険料や市営住宅使用料の納付勧奨、口座引き落としの残高不足にも広げていけるのではないかと考えています。

——他にはどのような取り組みを検討していますか。

納付書の期限を延ばすことを検討しています。現在は納期限と有効期限が同日のため、納期限が過ぎると再交付が必要となり、市民に不便をかけてしまいます。他市の事例も参考にしながら、期限を発行日から30日に変更することによって、利便性の向上とあわせて、納付率の向上につなげられると見込んでいます。新料金の適用に伴って、郵送料金も値上げとなっているため、印刷コスト・郵送コストとして1件あたり数百円の削減にもつながります。

——納付率向上に向けて、多方面からの取り組みを予定しているのですね。最後に、他の自治体の方に向けてアドバイスをお願いします。

納付率の向上のためには総合的な取り組みが必要だと考えています。今回行ったような、税の納付勧奨・督促にかかわるチャレンジは、市の財政圧迫に直面した状況で行うのは難しいことです。さらに、庁内の理解を得ながら行うのは簡単とは言えません。実際に当市でも、少なからず後ろ向きな反応がありました。しかし、まずはスモールスタートで結果を出すことによって、結果としては想定以上の効果が確認されています。もし、現場で納付率に関する課題を感じている場合は、まずは小さい範囲から試していくことをお勧めします。当市でも、今後活用の範囲を広げていくことによって、さらなる効果を生み出していきたいと考えています。


取材・写真:柏野幸大 / 取材・文:東 真希(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)

大東市が取り組む、自動音声による電話案内は「Graffer Call」によって実現できます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしで分かりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。

グラファー Govtech Trends編集部

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大東市

人口:
11.94万人(令和2年国勢調査)

導入サービス:
Graffer Call