保健所の代表電話の取り次ぎをAI電話で9割自動化した福岡市。市民の利便性向上と職員の負担軽減をどう両立したか
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保健所の代表電話の取り次ぎをAI電話で9割自動化した福岡市。市民の利便性向上と職員の負担軽減をどう両立したか

2026.08.24 Mon

市民サービスの向上に取り組む福岡市。「Graffer AIオペレーター」を活用したAI電話によって、保健所の代表電話への入電の約9割の取り次ぎをAIで完結。AI電話が担当課へ取り次ぐため、市民が何度も電話をかけ直す手間の解消につながっています。

AIが用件を聞き取り、担当課へ自動で取り次ぐAI電話

——福岡市保健所が活用するAI電話の仕組みを教えてください。

高園:福岡市では、保健所の代表電話の取り次ぎにAI電話を活用しています。市民が保健所の代表電話にかけると、まずはAIが応答して用件を聞き取ります。市民は音声ガイダンスで番号を選択したり、決まった言い回しを意識したりする必要はありません。普段どおりの言葉で話すだけで、AIが適切な担当課を判断して、そのまま電話を取り次ぎます。一方、AIが用件を判別できなかった場合は、これまでどおり職員が電話を受け、担当課の電話番号を口頭で案内する運用としています。

ファーストコンタクトはAIが担い、判別できなかった問い合わせのみを職員につなぐ設計とした。

市民負担ゼロでの解決を目指してAI電話の検討を開始

——AI電話の検討を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

高園:代表電話にかけた市民に、担当課へかけ直してもらう「二度手間」を解消したかったことがきっかけです。福岡市では令和6年の組織再編で、それまで7つの区ごとに設置していた保健所を1つに集約しました。一方で、市民に密着したサービスは引き続き各区役所の担当課が担っており、代表電話で受ける電話のうち約8割は、各区役所で対応する内容でした。

加えて、保健所と各区役所は庁舎が別々で、電話をそのまま担当課へ転送できないシステムでした。そのため、担当が異なる際には、担当課の電話番号を口頭で伝えて終話し、市民に改めてかけ直してもらう方法をとっていました。こうして生じる二度手間を、何とか解消したいと考えていました。

福岡市保健所 健康危機管理課長 高園 英太郎氏 

——職員の電話対応には、どのくらいの負担がかかっていたのでしょうか。

高園:保健所の代表電話には、月に450件ほどの電話がかかってきており、件数こそ膨大ではありませんが恒常的な負荷となっていました。ひっきりなしというほどではないものの、昼休みの時間帯も含めて交代での対応が必要な状態でした。

——そのような流れの中、検討を開始したのですね。

高園:コールセンターへの委託も検討しましたが、試算してみるとコスト面で見合わない部分もあり、より安価に解決できる手段はないか模索していたところ、AI電話が候補に挙がり、まずは実証実験を行う流れとなりました。

福岡市保健所 健康危機管理課 企画調整係員 大森 日南子氏 

——実証実験にあたり、市民への広報や周知はどのように行いましたか。

大森:ホームページ上への掲載や報道発表を行いました。ニュース等で大きく取り上げられることはありませんでしたが、市民が使う代表電話の番号自体に変更はなく、これまでどおり保健所の代表電話にかければ、そのまま自動でAIに接続されるため問題ないと考えました。市民側に新たな負担は生じない点も実証実験の後押しとなりました。

取り次ぎの9割をAIが完了。市民の利便性向上と職員の負担軽減を実現

——実証実験の結果として、どのくらいの割合の電話がAIで完結したのでしょうか。

大森:AIが応答した電話のうち、AIだけで約9割の取り次ぎが完了しました。残りの1割には、福岡市外の窓口宛ての問い合わせなどAIでは判別が難しいものが含まれていました。

AIが応答した電話のうち約9割は、AIだけで担当課までの取り次ぎが完了。

——実際にAI電話を利用した市民からは、どのような反応がありましたか。

大森:市民からは、「電話をかけたら最初にAIが出てきたので驚いた」という驚きの声がありました。一方で、実証実験中にAIが対応したこと自体へのクレームはありませんでした。AIの音声を聞いて戸惑う方もいるのではと考えていたので、想像以上の結果でした。

——職員の業務にはどのような変化がありましたか。

大森:AI電話によって、対応する電話数が体感として大きく減りました。一方で、実証期間後には従来どおりの電話数だったため、AI電話がどれだけ職員の電話対応を吸収してくれていたかが実感できる結果となりました。

誤案内を防ぐ品質管理と、改善サイクルによる継続的なチューニング

——AIの取り次ぎ精度を高めるために行った工夫はありますか。

古賀:運用を始めてしばらくの間は、各区の担当課から「うちの担当ではない案件が転送されてきた」という声が一部届いていました。AIの判定が誤ってしまったケースがあったためです。こうした事例は対話ログを確認しながら、都度改善を重ねました。その結果、期間の後半には誤転送に関する声はほとんどなくなりました。

福岡市保健所 健康危機管理課 企画調整係長 古賀 康雅氏

——AIが誤った案内をしてしまうリスクには、どのように備えましたか。

古賀:AIが市民の言葉を正しく理解できないと、誤った担当課へ取り次いでしまうリスクがあります。市民ごとに言い回しは大きく異なりますし、保健所の業務では専門用語も多く登場します。こうしたリスクを抑えるため、AIが参照するFAQを整備していきました。あわせて運用開始前には事前テストを繰り返し行い、想定される問い合わせに対して正しい判断ができることを確認しています。

加えて、AIが用件を聞き取れなかった場合には無理に判断させず、これまでどおり職員へ電話をつなぐ運用としています。この設計によって、誤った転送先に振り分けてしまう事態を防いでいます。

——AIの精度やハルシネーションについては、どのような考え方で挑んだのでしょうか。

古賀:AIに対して最初から100%の精度を求めるのは現実的ではない、という認識でした。事前のテストで通常の問い合わせには十分対応できることを厳密に検証しつつも、実運用では想定外の言い回しやパターンが発生することを想定し、地道に改善サイクルを回していくというアプローチをとりました。 

AI活用の幅を広げ、市民の利便性向上と職員の負担軽減の両立をさらに進める

——今後、AI電話をどのように活用していきたいと考えていますか。

高園:実証実験の成果を踏まえて、本格的な運用を7月から開始しています。運用にあたっては、対話ログを継続的に確認しながら、FAQの内容をさらに見直し、市民がよりストレスなく担当課につながる体験を作っていきたいと考えています。

将来的には、担当課への取り次ぎだけでなく、その先の応対にもAIを活用できないか検討していきたいと考えています。取り次ぎと応対の両面でAIを活かすことができれば、市民の利便性向上と職員の負担軽減をさらに両立させていけるのではないかと考えています。

(※文中の敬称略。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)

福岡市のAI電話の取り組みは「Graffer AIオペレーター」によって実現できます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。

グラファー Govtech Trends編集部

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