いまさら聞けない デジ田交付金「デジタル実装タイプ TYPE1」準備のきほん 特別編
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いまさら聞けない デジ田交付金「デジタル実装タイプ TYPE1」準備のきほん 特別編

2023.11.07 Tue

2024年度のデジ田交付金(デジタル田園都市国家構想交付金)についても、予算確保に向けた動きが進んでいます。これまで約半数の自治体がデジ田交付金を利用していますが、まだ活用いただいていない自治体もあります。そこで初めてデジ田交付金を活用してデジタル化に取り組む自治体に向けて、デジ田交付金のうち「デジタル実装タイプ(TYPE1)」の準備で気をつけたいことなど「基本中の基本」を内閣官房の小野参事官補佐に伺いました。

※本記事の内容は取材時の内容となります。今後の予算編成過程において、制度詳細、スケジュール等については変更となる可能性がございますので、あらかじめご理解ください。

内閣官房 参事官補佐 小野 康佑氏

きほん1「デジタル実装タイプ TYPE1」でできることは?

デジタル実装タイプには複数のTYPEがありますが、行政デジタル化のためにデジ田交付金の利用を考える自治体がまず検討したいのが、このTYPE1です。

TYPE1の特徴は、他自治体ですでに導入されているサービスを活用して迅速にデジタルサービスを実装できることです。他自治体のノウハウや実績を得てそのまま展開することができるため、デジタル化に対する知見が十分でなくても比較的低いハードルで取り組み、かつ失敗のリスクを抑えることができます。

採択実績としては500万円以下の事業が全体の4分の1を占めますので、まずは小規模でいいので始めてみることが大事です。行政サービスのデジタル化領域における例としては「書かない窓口」や「オンライン申請」、住民サービスとしては「自治体公式LINEの整備」「公共施設予約システム導入」などが特に多く採択されており、規模の小さい事業も含めて、市民の利便性向上につながっています。

きほん2 いつから取り組めば間に合う?

スケジュールは例年どおりに調整が進めば、2023年12月に説明会、2024年2月に申請締め切りとなる予定です。12月よりも前から庁内調整などの準備を進めておくとさらに安心ですが、事務局では説明会に参加してから着手しても、事前相談を行う内容をブラッシュアップしながら申請いただけるように尽力します。1月には多くの自治体が事前相談を活用しています。

きほん3 必要な提出物は?

説明会等で正式な案内がありますが、実施計画に具体的な事業の内容やスケジュール等を、実施計画に記載していただく形になります。


きほん4 高評価を目指すには

デジタル実装タイプの評価項目には国の施策と連動した政策的優遇措置があり、要件を満たすことで加点されます。例えばサービス提供者としてスタートアップ企業を活用した場合は4点、定住自立圏や連携中枢都市圏に基づく地域間や、隣接していない遠隔での地域間で連携する取り組みの場合は3点が加算されます。さらに地場スタートアップなら2点、地域間連携による付加価値を定量的なKPIで設定すると3点など、条件を満たすことでさらなる加点があります。

きほん5 前年度採択されていても申請してもよい?

現時点においては、過去に採択された自治体も上限数に影響なく申請可能です。申請上限数は都道府県が9、市区町村が5となっていますが、昨年度までに採択された事業数は、今年度の申請に影響しません。

きほん6 実施計画のポイントは?

実施計画を作成する際には6つのポイントがあります。特に次の①〜③については重要となります。

①実装するサービスが地域の課題解決等に資するものか

地域の課題を解決する事業内容になっている必要があります。例えば、職員の業務効率化に閉じた内容や、実証実験にとどまったもの、単発のイベントのみのもの、効果が具体的でない事業はこの交付金では対象とされていません。

②課題や将来像とリンクした事業の成果を測ることのできるKPIが設定されているか

成果を測るKPIが適切に設定されている必要があります。例えば、KPIが職員の時間外労働の削減時間など行政内部のみの効果を設定している場合や、実装自体をKPIに設定している場合は対象とされず、地域の課題解決や市民の利益を計測することが求められます。

③官民が連携した推進体制が整っているか

デジ田交付金は、サービスの実装後も事業が継続されることを前提に交付されています。そのため継続できるような推進体制が構築されていることが評価されます。例えば、オンデマンドバスの導入事業を例にとってみると、交通課と業務委託先だけで推進するような推進体制ではなく、地域の事業者や老人ホーム、介護施設、小学校などの関係者を巻き込んだ体制づくりが求められます。

きほん7 やってみたいという熱意はあるが「ノウハウやリソースがない」「多忙で手がつけられない」そんなときは……

「デジタルサービスの導入による費用対効果が分からない」「デジタル関連企業との接点がなく、進め方が分からない」「他の業務と兼務しながら情シスを一人で担っているため十分な検討ができていない」といった課題を感じている自治体に対しては、デジタル実装計画策定支援事業を通じた伴走支援も用意しています。令和5年度には計23団体が支援を受けてデジタル化の第一歩を踏み出しています。あきらめず、必要に応じてぜひこちらをご検討のうえ申請してください。

自治体へのメッセージ

「誰一人取り残さないデジタル化」のために

——デジ田交付金の事務局を担ううえで大切にしている考え方はありますか。

特に大切にしているのは「誰一人取り残さない」という考え方です。デジ田交付金を通じて自治体の規模や地域に関係なくデジタル化を推進することで、日本の社会全体の生産性向上や経済再生につなげていくことを目指しています。

また、自治体がデジタル化に取り組むうえで課題となるのが、予算化と人材不足です(※)。デジ田交付金やデジタル人材派遣制度を通じて、国がこの2点を下支えしていくことで、自治体のデジタル化を後押ししていきたいと考えています。

(※)補足:グラファー「行政デジタル化実態調査レポート2023」においても、デジタル化を進めるうえでの障壁として「庁内に最適な人材がいない(31%)」「予算化が難しい(30%)」が大きいという結果が出ています。

デジ田交付金で予算を、デジタル人材派遣制度で人材を後押しする。

——そういった考え方が「事業KPIの適切性」や「取り組む地域課題の具体性」といった評価項目(※)に表れているように感じます。

(※)デジタル実装タイプ TYPE1の評価項目。「取り組む地域課題の具体性」は正式には「取り組む地域課題及び実現したい地域像の具体性」

デジ田交付金の評価項目は、市民の生活に役立つ事業が地域全体に定着することが評価されるような配点となっています。地域の課題をできるだけ明確にしたうえで、その効果を具体的なKPIを複数年設定することによって、デジタルサービスが継続され、自治体が地方の社会課題解決や魅力向上の取り組みを加速化していく支援をしていきたいと考えています。

——これまでにデジ田交付金を利用した自治体からはどのような反応がありましたか。

デジ田交付金を利用した自治体からは、「市民の満足度が向上した」「成果が出て、業務効率化も図れた」などの反応がありました。このような反応が得られて、私自身も大変うれしく感じました。

——採択された事業としては、どのような事業が多い印象でしょうか。

デジタル化というと、打ち上げ花火のように大規模かつ一気に進めるような派手なイメージを持つ方も多いのではないかと思いますが、実際の事業を見ていると、線香花火や常夜灯のように長く継続して市民に寄り添うような事業が多いように感じられます。これから申請を考えている自治体においても、ぜひ地域の持つ課題に対して着実に解決できるような事業を検討してほしいと考えています。

——まだデジ田交付金を利用していない自治体はどのくらいありますか。

1,788自治体中924自治体がデジ田交付金を利用しています。残りの796自治体についてはまだ利用されていないため、ぜひ地方の課題解決のために利用を検討してほしいと考えています。


出典:『デジタル実装タイプ サービス実装地域(令和3年度補正予算、令和4年度第2次補正予算)』地域・都道府県別の採択状況

——まだデジ田交付金を利用したことのない自治体に向けてメッセージをお願いします。

これまでデジ田交付金を利用したことのない自治体から「既存業務が忙しくて手が付けられない」「改善や新しいことに取り組む余力がない」といった声を聞くことがあります。一方で、そういった状況の中でも「新しいチャレンジをしたい」というありがたい意見も耳にします。こうした想いを持っている自治体は、ぜひチャレンジの一つとしてデジ田交付金を活用してほしいと思います。

①チャレンジする:デジ田交付金を活用することによって職員が新しいチャレンジをする
②効果が出る:取り組みに対して一定の成果が出て、地域に喜んでもらえる
③取り組みが加速する:仕事が楽しくなり、デジタル化に向けたさらなる取り組みが進む

という好循環が日本中で生まれることを目指して、我々も全力でサポートしていきます。

 

制度についてのお問い合わせ先

内閣府地方創生推進室
内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)担当
・電話:03-6257-3889
・Eメール:digitaldenen-kofukin.f7k@cao.go.jp


デジ田交付金を活用したデジタル実装を検討中の場合

デジ田交付金を活用できる以下のサービスについては、グラファーGovtech推進支援室へお気軽にお問い合わせください。

  • 電話の自動応対サービス「Graffer Call(市民の待ち時間減少・いつでも問い合わせできる仕組み作りとして)」
  • オンライン申請サービス「Graffer スマート申請
  • オンライン手続き案内サービス「Graffer 手続きガイド(市民の待ち時間減少・いつでも問い合わせできる仕組み作りとして)」
  • 福祉領域の支援案内サービス「お悩みハンドブック」(孤独孤立対策の一貫として)


グラファー Govtech Trends編集部

Govtech Trends(ガブテック トレンド)は、日本における行政デジタル化の最新動向を取り上げる専門メディアです。国内外のデジタル化に関する情報について、事例を交えて分かりやすくお伝えします。

株式会社グラファー
Govtech Trendsを運営するグラファーは、テクノロジーの力で、従来の行政システムが抱えるさまざまな課題を解決するスタートアップ企業です。『プロダクトの力で 行動を変え 社会を変える』をミッションに掲げ、行政の電子化を支援しています。