行政DXはどう変化している?人材不足が課題に「行政デジタル化実態調査レポート2023」
「デジタル田園都市国家構想総合戦略」においてデジタル実装に取り組む自治体を2027年度までに1,500自治体にする目標が示されるなど、行政デジタル化に向けた動きはますます活発になっています。
本年で4年目となる「行政デジタル化実態調査」では、新たに「自治体における生成AIの活用」についての設問を加え、行政デジタル化の現在地を明らかにしています。ぜひ現状の把握や行政デジタル化の推進にお役立てください。
行政デジタル化は年々進んでいる
自治体におけるデジタル化の取り組みは年々進んでいます。国が手順書を示した2021年度はDX推進計画を策定している自治体は7%でしたが、今回の調査では約半数である49%となり、大きく進んだことが分かります。また、これまでは小規模自治体におけるDX計画策定が比較的遅れていましたが、今年の調査では小規模自治体においても計画策定が大きく進んだことが明らかになりました。オンライン申請を全く導入していないという自治体も1年間で12%減少しています。
人材や予算は不足傾向にある
デジタル化を進めるうえでの障壁は、3年連続「人材不足」となりました。自治体からは「恒常的に人材が不足している」、「庁内のデジタル化に対する機運の醸成、職員の意識改革が課題」、「一時的な負荷増加に対応する工数の捻出が難しい」といったコメントもあり、簡単に解消できる問題とは言い難い状況です。一方で庁内勉強会や外部人材の登用などの工夫により人材不足を解決できるという回答もありました。
生成AIの活用に前向きだが懸念も残る
本年新たに生成AI(※)の活用状況について調査したところ、68%の自治体が前向きに検討していることが分かりました。先行自治体では、既に試験的な導入やガイドラインの策定を進めている現状も明らかとなっています。生成AIに期待することとしては「文書作成」が最も多い一方で、正確性に課題を感じている自治体も多いことが分かりました。
※生成AIとは
「Generative AI(ジェネレーティブAI)」とも呼ばれ、さまざまな文書や情報を生成できるAIのことです。
調査方法
対象:47都道府県および1,741市区町村
調査期間:2023年6月22日(木)〜7月18日(火)
調査実施方法:オンライン回答、回答用紙のメール添付
回答数:477件
人口20万人以上:回答数 38件
人口5万人以上:回答数 126件
人口5万人未満:回答数 313件※本レポートの図においては、凡例の内容を省略表記しています。
※構成比は小数点以下を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100になりません。
※本年度から調査対象として都道府県を追加しました(20万人以上の人口規模で集計)。
1. DX推進計画の策定状況
小規模自治体でも35%がDX計画を策定
「策定した」と回答した人口5万人未満の小規模自治体はこの1年で20%増加し、35%となった。さらに人口規模の大きい人口5万人以上の自治体では73%が、人口20万人以上の自治体では92%が「策定した」と回答した。過去2年の調査では、大規模自治体を中心に行政デジタル化が進んできた様子がうかがえたが、本年の調査では、小規模自治体を含めて行政デジタル化が前進している様子が確認できた。
2. 行政デジタル化の障壁
デジタル化のカギは人材不足・予算化
デジタル化を進めるうえでの障壁となるのが「庁内に最適な人材がいない(31%)」と「予算化が難しい(30%)」だ。特にこの1年間で「予算化が難しい」と回答した自治体は6%増加した。また、人口規模が小さくなるにつれて人材不足と予算化を懸念として挙げる自治体が増える傾向にあった。
3. オンライン申請の導入部署の割合
オンライン申請を導入していない自治体が4%まで減少
オンライン申請を全く導入していない自治体は1年間で12%減少し、4%となった。一方、オンライン申請を導入した部署の割合は、「3割(39%)」、「5割(17%)」、「7割(10%)」となり、それぞれ1年間で6%〜13%増加し、オンライン申請の導入経験のある部署が徐々に増加している様子がうかがえる。
4. 生成AIの行政利用(複数回答)
68%が生成AIの利用を前向きに検討
生成AIの利用を「前向きに検討している」と回答した自治体は68%。中でも「現場レベルで検討している」、「首長が利用に前向きな姿勢を示している」と回答した自治体が多かった。一方、「公務に利用することを禁止している」は1%のみで、多くの自治体が生成AIの利用に対して前向きであることが分かる。
5. 生成AIの行政利用について期待されること(複数回答)
生成AIに期待するのは文書作成の効率化
生成AIに期待する内容として最も多かったのが「内部文書作成の効率化(78%)」だった。続いて多かったのが「対外的な文書作成の効率化(63%)」で、全体的に文書作成に対する期待が高いことが分かる。一方で「調査時間の短縮(46%)」や「政策立案の支援(45%)」、「行財政改革(32%)」は比較的少ない結果となった。
6. 生成AIの行政利用についての懸念(複数回答)
行政利用への懸念は「正確性の担保」と「法令への抵触」
生成AIの利用に対する懸念点としては、「正確性が担保されていない(83%)」と、「意図せず法令に抵触する恐れがある(84%)」が上位に挙げられた。一方で「職員の仕事が奪われる」という懸念を持つ自治体は2%にとどまった。「懸念はない」と回答した自治体は1%のみで、ほとんどの自治体が、実用に関しては何らかの不安を感じている状況が明らかになった。
本レポートの詳細報告書を希望される方
グラファーGovtech推進支援室では、今後も行政デジタル化の推進に向けた取り組みを進めてまいります。本レポートの詳細報告書を希望される方は、グラファー Govtech推進支援室(govtech@graffer.jp)までご連絡ください。
グラファー Govtech Trends編集部
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