AI電話の完結率だけではなく市民が安心できる「正確性」を。高松市がAI電話でたどり着いた、市民が迷わないための最適解
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AI電話の完結率だけではなく市民が安心できる「正確性」を。高松市がAI電話でたどり着いた、市民が迷わないための最適解

2026.05.12 Tue

市民課での電話応対の効率化と市民サービスの向上を目指して、AIによる電話自動応答の実証事業に取り組んだ高松市。「Graffer AIオペレーター」を活用することによって、繁忙期の職員の負荷軽減と、「電話がつながらない」という市民の課題解決に向けて取り組んでいます。

「必要に応じた取次」と「AIによる完結」をハイブリッドで仕組み化

——今回実証事業を行ったAIオペレーターはどのような仕組みですか。

岡本:市民が市民課に電話をかけると、まずはAIが用件をヒアリングします。その内容に基づき、AIが自動で回答するか、職員に取り次ぐかを判断する仕組みです。定型的な質問にはAIが自動音声で対応し、専門的な判断が必要な場合のみ職員に引き継ぐ、ハイブリッド型の対応が特徴です。


よくある質問はAIが回答。個別判断が必要な案件は職員へつなぐことで、双方の負担を軽減している。

——実証事業での、実際の受電状況について教えてください。

岡本:1か月間の実証事業期間中にAI電話の番号にかかってきた総受電数は595件でした。内訳としては、AIによる完結が65%、職員への確実な取次が35%と、人とAIが連携しながら対応しています。具体的な問い合わせ内容としては、証明書の発行や住所異動、戸籍に関するものが多く、通常時の問い合わせと同様の傾向でした。

AI電話にかかってきた問い合わせのうち、65%がAIとの対話で完結(途中切断を含む)。残り35%は職員へ取り次がれています。

——今回の実証事業では、AIから職員への電話の取り次ぎはどのような流れで行われたのでしょうか。

岡本:AIが取り次ぎが必要だと判断した電話については、まずは管理係が一括して受電して、その後、各担当へ振り分ける運用としました。取り次ぎの際には、市民から用件を要約した音声が流れるような仕組みになっているため、スムーズに内容を把握することができました。会話が長引いた際などには要約が簡潔になりすぎるケースもありましたが、把握するには十分な精度でした。

——市民の反応はいかがでしたか。

岡本:実証事業の前は、AIが電話応対することに対して、心理的な抵抗を感じる市民もいるのではないかという不安もありました。しかし、実際には大きなトラブルは発生せず、「AIではなく人間につないでほしい」というご要望が1件あったのみです。今回の実証事業は1か月という短期間だったため、AIが対応する「050」から始まる専用番号を市のホームページに掲載したのですが、AI電話の実証事業中であることを明示していたことも、安心感につながったのではないかと考えています。

——職員の反応はいかがでしたか。

岡本:実証事業後のアンケートでは、今後も「AIオペレーターの運用を継続したい」と回答した職員は7割、「どちらともいえない」は2割、「あまりそう思わない」は1割と、職員側の受け止め方はおおむねポジティブな結果となりました。

繁忙期の「電話がつながらない状況」の解決に向けて

——今回の実証事業の背景には、どのような課題があったのでしょうか。

岡本:市民課では通常時でも1日100件ほどの電話があり、4名の管理係が一次対応を行っています。さらに、3月後半から4月などの繁忙期には、受電数が通常の何倍にも急増します。5回線ある電話は鳴り止まず、窓口も混雑するため、職員が電話に出られなかったり、折り返しの電話が何重にも重なったりと、本来の業務が立ち行かない状況でした。何より「電話がつながらない」という状況が市民にとって大きな不便となっている状況を解決したいと考えていました。

——多くのサービスがある中、なぜ「Graffer AIオペレーター」を実証事業に採用されたのでしょうか

岡本:8社ほどのサービスを比較検討する中で、行政向けのIVR導入の実績が豊富で、回答精度の高さにも期待を持てたグラファーに魅力を感じたためです。まずは実証事業を行い、その効果をしっかりと確認したいと考えました。

「AIに任せること、人間がすべきこと」を明確に分ける設計思想

——AIを使いこなすには、導入する際の「AIとの向き合い方」も一つのポイントになるかと思います。今回の実証事業では、どのような考え方で運用を設計されたのでしょうか。

岡本:AIにすべてを任せようとするのではなく、「AIが得意なこと」と「人間がすべきこと」を明確に切り分けることを重視しました。具体的には、ホームページに記載のある内容はAIが回答し、それ以外の内容は職員に取り次ぐ設計としました。

——すべてを全自動化するのではなく、範囲を限定されたのですね。

岡本:実証事業の前に実施した調査では、電話問い合わせの中にはホームページに記載されている内容が一定数あることが明らかになっていました。AIがこうした定型的な問い合わせに対応するだけでも、市民の待ち時間削減や職員の負担軽減に効果が見込めます。回答範囲をホームページの内容に限定することによって、行政としての正確性を最優先し、不確かな情報を生成する、ハルシネーションのリスクを最小限に抑えるようにしています。

AIの特性を正しく捉え、市民サービスと業務効率化を両立させる運用へ

——実証事業を経て、今後に向けた気付きや改善したい点はありますか。

岡本:AIによる完結率は65%という結果でしたが、ログを確認した結果、現時点では、我々が求めるレベルに到達していない回答も含まれていました。そのため、AIが参照するナレッジ(AIが回答を生成するための情報源)の構築については、工夫の必要性を感じています。今回は、市のホームページにある内容を参照したのですが、例えば、ホームページには「可能なこと」は詳しく書かれている一方で「不可能なこと」は記載されていないケースが大半です。例えば、本人確認書類として「免許証は使えるが、学生証は使えない」といった細かなルールについては書かれていません。このような「何ができないか」までをあらかじめ考慮することで、今後より正確で揺らぎのない回答を引き出していけるのではないかと考えています。

——今後、他の部署へも展開していく予定はありますか。

岡本:今回の実証事業を通じて、電話応対の一次対応が職員の負担軽減につながる可能性があることが確認できました。福祉や子ども関連など、同様の課題を抱える部署は他にもあるため、他部署への横展開も検討しています。

総務局デジタル推進部デジタル戦略課DX推進係長 岡本 侑記氏

横展開にあたっては、庁内全体でAIへの理解を深めることも重要だと考えています。AI特有のリスクであるハルシネーションも含め、その特性を正しく捉えることが、AIの適切な活用につながります。勉強会などを通じて「どの範囲までをAIに任せ、どこからを人間が担うのか」といった運用設計を、職員自らが主体的に考えられるよう、人材育成にも力を入れていきたいと考えています。

——最後に、今後の展望をお聞かせください。

岡本:今回の実証事業は、繁忙期に電話がつながらないといった課題の解決に向けた検討の一歩となりました。今後はAIオペレーターの活用範囲を段階的に広げることも検討し、「AIに任せる領域」と「人が担う領域」を見極め、市民サービスの向上と業務の効率化を両軸で進めてまいります。

(※文中の敬称略。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)

高松市のAI電話の取り組みは「Graffer AIオペレーター」によって実現できます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。

グラファー Govtech Trends編集部

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