産業廃棄物処理業に関する手続きの電子化に取り組む滋賀県。必要な手続きの洗い出しから申請までワンストップで完結
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産業廃棄物処理業に関する手続きの電子化に取り組む滋賀県。必要な手続きの洗い出しから申請までワンストップで完結

2023.01.06 Fri

産業廃棄物処理業に関する手続きを電子化することによって、事業者・職員の負荷軽減に取り組む滋賀県。「Graffer 手続きガイド」と「Graffer スマート申請」を活用することによって、事業者は自分に必要な手続きの洗い出しから申請まで、ワンストップで完結できるようになりました。

滋賀県:1,413,610人(令和2年国勢調査)

「産業廃棄物処理業に関する申請」とは
産業廃棄物処理や運搬を行う事業者に必要な申請です。無許可で営業したり、排出事業者が無許可の事業者に処理を委託したりすることはできません。

「産業廃棄物処理実績報告」とは
産業廃棄物処理業の許可を有する事業者等が提出する、産業廃棄物処理の実績に関する報告です。

「産業廃棄物管理票交付等状況報告」とは
産業廃棄物の排出事業者が都道府県知事等に対して行う、交付状況や内容に関する報告です。

※いずれの報告も毎年6月30日までに、その年の3月31日以前の1年間分の報告が必要です。

「事業者に負担をかけている状況を解決したい」と考えたのが導入のきっかけに

——滋賀県では産業廃棄物処理業に関する手続きについて、どのような取り組みを行っていますか。

玉村:滋賀県では、2022年に「産業廃棄物処理業ガイド」を公開しました。
この「産業廃棄物処理業ガイド」は、産業廃棄物処理業を行う事業者が手続きを行う際の窓口や必要書類を洗い出せるサービスです。例えば、新規申請・変更・更新のときや、「産業廃棄物処理実績報告」や「産業廃棄物管理票(以下、マニフェスト)交付等状況報告」を提出しようとするとき、事業者は簡単な質問に回答するだけで、パソコンやタブレット、スマートフォンから24時間いつでも、窓口や必要書類を確認することができます。

さらに「産業廃棄物処理実績報告」や「マニフェスト交付等状況報告」については、ガイドで必要な手続きを確認したら、そのままワンストップでオンライン申請を行うことができます。事業者はいくつものページを行き来することなく、必要な手続きや添付書類を確認後、画面上にある「オンライン申請はこちら」ボタンから申請に進むことができます。

滋賀県では、事業者が自分に必要な手続きを簡単に洗い出して、そのままワンストップでオンライン申請できる仕組みを用意している。

——電子化する前は、どのような課題を感じていたのでしょうか。

卯田:電子化する前は事業者の方にとって、窓口や必要な書類が分かりにくい状況でした。「事業所の拠点」と「廃棄物の処分場所」に応じて窓口が異なり、新規や変更といった申請の区分によって必要な書類も異なるためです。このような分かりにくさのために、事業者に負担をかけている状況を解決したいと考えたことが、ガイドやオンライン申請を構築するきっかけとなりました。

琵琶湖環境部 循環社会推進課 室長補佐兼係長 卯田 実氏

——事業者の負担を軽減したい考えがあったのですね。職員負担の目線ではいかがでしょうか。

玉村:職員負担の目線では、事業者の方からの問い合わせを削減したい考えがありました。問い合わせについては、多いときで1日3件。1回あたり5分から10分かかっていました。新人や配属されたばかりの職員の場合、複雑な条件に対する理解が十分ではなく、正確でない内容をお伝えするリスクもありました。

琵琶湖環境部 循環社会推進課 主事 玉村 幸大氏

オンライン化によって、業務コスト削減を実現

——オンライン申請を導入した結果、どのような効果を感じていますか。

玉村:「産業廃棄物処理実績報告」および「マニフェスト交付等状況報告」について、郵送で届いた報告を処理する場合の開封・確認作業にかかっていた、約73時間分が削減されました。毎年計8,000件程度ある報告が、締め切りである6月30日に近い時期に集中します。オンライン化初年度である本年は、そのうち約2,200件がオンラインで提出され、その分の開封・確認作業が不要となりました。

これまで開封・確認作業にかかっていた約73時間分が削減された。

——初年度で約2,200件というと、約3割がオンラインで提出されたのですね。

玉村:「産業廃棄物処理実績報告」に関しては、約4,000件のうち約1,500件が、「マニフェスト交付等状況報告」に関しては、約4,000件のうち約700件がオンラインで提出されました。開始前は、オンラインがどのくらい利用されるのかと心配していましたが、予想を上回り、多くの事業者に利用いただきました。

——他にはどのような変化がありましたか。

玉村:処理状況をオンラインで確認できるようになりました。これまで郵送で提出された報告書の詳細を確認するには、簿冊で確認する必要がありました。簿冊は文書庫にあるのでわざわざ探しに行く必要があります。しかし、オンラインで提出された報告書については、検索すれば即座に処理状況が確認できます。提出済みの事業者から問い合わせがあった際にも、PC上で確認すれば済むため、業務の効率化につながっています。

——紙での管理が減るということは、保管スペースの削減にもつながっているのでしょうか。

玉村:オンラインで受け付けた報告書については、印刷せずに電子データのみで管理するようにしたため、保管スペースの削減にもつながりました。これまでは毎年段ボール4、5箱分くらいの保管スペースが必要となっていたのですが、オンライン申請の割合が増えれば、年々保管スペースは減っていくと考えています。

報告書の保存期間は5年および10年。オンライン申請の導入によって、文書庫のスペース削減につながった。

田中:文書庫を所管している課としても、保管スペースは重要な課題です。保管スペースが削減されるのは、オンライン化の一つの成果だととらえています。

総合企画部 DX推進課 主任主事 田中 智章氏

——コスト面では、オンライン化によってどのような変化がありましたか。

卯田:コスト面では、郵送・印刷費用の削減につながっています。「産業廃棄物処理実績報告」について、これまでは、毎年事業者に通知文と様式を送付していたのですが、オンライン化を機に、通知文のみの送付に変更しました。そのため、郵送費用が約55万円分、印刷費用が約25万円分削減されました。

郵送・印刷費用が年間約80万円分削減された。

玉村:入力作業のコスト削減にもつながっています。これまで紙の報告書のデータ入力を委託するために約50万円ほどかかっていましたが、今年は約35万円となり、約15万円のコスト削減につながる見込みです。

紙の報告書をデータ入力するためのコストが、例年よりも約15万円分削減された。

——入力作業が少なくなったことによって、入力完了までの期間にも変化はありましたか。

玉村:オンライン申請の導入によって、入力作業の早期化にもつながっています。オンライン申請で受け付けた分はデータで取り込めるので、その分の入力作業が必要なくなるためです。例年よりも1カ月程度早まる見込みです。

事業者からは「使いやすかったので来年以降も使います」という反応

——オンライン申請を利用した事業者からは、どのような反応がありましたか。

玉村:事業者からは、「使いやすかったので来年以降も使います」、「郵送よりも楽だった」などの反応がありました。オンライン申請の導入前は、自治体都合になっていないかといった心配もありましたが、事業者から良い反応をいただけたことで、「導入してよかった」と感じました。今後オンライン化を進めていく自信にもつながりました。

田中:事業者からポジティブな反応をいただいたのは、DX推進課としても非常に喜ばしいことでした。申請開始後、事業者から一気に反応があったので、思わず卯田や玉村にメールで連絡したほどです。

事業者から、多くのポジティブな反応が届いた。

導入時には、できるだけ専門用語を使わないように工夫

——「Graffer 手続きガイド」や「Graffer スマート申請」の導入時は、どのような点を工夫しましたか。

玉村:事業者にとって分かりやすい案内となるよう、画面上の文言を工夫しました。例えば、専門用語を使用しないようにしたり、問い合わせがありそうな部分については別途マニュアルを用意したりするなどです。

——実際に事業者の方からは、どのような問い合わせがありましたか。

玉村:オンライン申請の際、アカウントを作成したほうがよいか、メール認証でも問題ないかといった問い合わせがありました。

卯田:多かったのは、ログイン方法が分からないといった問い合わせです。オンライン申請を開始する前は、問い合わせが殺到して、逆に通常業務に支障がでないかといった心配もありましたが、実際には問い合わせはあったものの通常業務に支障がでるほどの量はありませんでした。ログイン方法などについては、県のホームページにもマニュアルを用意し、事業者の方ができるだけスムーズに対応できるようにしました。

——事業者への周知については、どのような方法で行いましたか。

玉村:毎年対象業者に送付する通知文に、電子化した旨を分かりやすく記載しました。あとは研修会でチラシを配ったり、県のホームページに掲載したりしました。

卯田:県のホームページについては、トップページに手続きガイドへの導線を掲載しました。本年は「電子申請はどこから行えばよいか」というお問い合わせが一定数あったので、トップページに導線を設けて、電話でも分かりやすく案内できるようにしました。

今後は全庁的なデジタル化をさらに推進していく

——今後は、どのようなことに取り組む予定ですか。

卯田:最終的にはすべて電子化することを目指して、国の動向を見つつ、対応できる領域から順次電子化の取り組みを進めていきたいと考えています。

玉村:事業者の方からいただいたフィードバックをもとに、導線や、申請フォームを改善することによって、さらに使いやすいものにしていく予定です。

田中:手続きの電子化とともに、電子申請率の向上を進めていきたいと考えています。今回の循環社会推進課のような事例を庁内で展開していくことで、全庁的な電子化を推進していきます。

取材:本山 紗奈 / 文:東 真希 / 写真:佐竹 佳穂(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名は取材当時のものです。)

滋賀県が取り組む、産業廃棄物処理業に関する手続きの電子化は「Graffer 手続きガイド」「Graffer スマート申請」によって実現できます。導入時は、優良事例を取り込んだテンプレートを活用可能です。費用や導入期間については、 無料お問い合わせからお気軽にご相談ください。

グラファー Govtech Trends編集部

Govtech Trends(ガブテック トレンド)は、日本における行政デジタル化の最新動向を取り上げる専門メディアです。国内外のデジタル化に関する情報について、事例を交えて分かりやすくお伝えします。

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滋賀県

人口:
141.36万人(令和2年国勢調査)

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