南九州市のデジタル化成功の要因
1. デジ田交付金の戦略的な活用
デジタル化への一歩を踏み出す際に「デジ田交付金」を活用した。交付金の後押しを受けながら「Graffer スマート申請」を導入することで、全庁的なデジタル化を効果的かつ迅速に進めた。
2. 初回作成のハードルを下げるサポート
担当課にとって、初めてのオンライン申請フォームの作成は簡単ではない。研修やテンプレートの導入、そして伴走支援によって、担当課を積極的に支援。ハードルを下げて各課の積極的な参加を促進した。
3. アンケート機能の戦略的な活用
「デジタルでやるのが当たり前」という雰囲気を醸成するために「Graffer スマート申請」の「アンケート機能」を積極的に活用。市民向けのアンケートや庁内の調査への活用が進んでいる。
南九州市におけるデジタル化の流れ
——南九州市ではどのような流れで全庁的なデジタル化を進めていますか。
志々目:南九州市では、2021年にDXに向けた取り組みをスタート。2023年度にDX推進計画を策定し、同年夏に「Graffer スマート申請」を導入しました。手続きの洗い出しや庁内研修、伴走支援などを通じて、全庁的なデジタル化を推進しています。
南九州市では2021年から段階的にデジタル化を進めている。
——「Graffer スマート申請」を導入する前は、どのような課題を感じていましたか。
志々目:以前は県の共同利用システムを利用していたのですが、電子署名使用時の手間や、決済機能がなかったことで、庁内での利用が拡大しにくいという課題がありました。当時オンライン化に対応していた手続きは約20件で、現在の8分の1ほどしかありませんでした。
——本格的な取り組み開始から約1年半が経過し、市民からの反応はいかがですか。
志々目:市民からは、「オンラインだと時間を気にせずに手続きできるのが便利」「操作がしやすい」といった声が届いています。当初は、市民に使ってもらえるのかといった不安もありましたが、現在では、多くの方がオンラインという選択肢を活用しています。
市民からはポジティブな反応が届いている。
デジ田交付金がデジタル化の後押しに
——県の共同利用システムに課題を感じていた中、どのような経緯でシステムの刷新が実現したのでしょうか。
志々目:システム刷新の後押しとなったのが、デジ田交付金(デジタル田園都市国家構想交付金)でした。すでに当初予算の時期を過ぎていたのですが、デジ田交付金を活用すれば実現できるのではないかという声が庁内で挙がり、急きょ対応を進めました。
※デジタル田園都市国家構想交付金の詳細は以下の記事でご確認いただけます
「いまさら聞けない デジ田交付金「デジタル実装タイプ TYPE1」準備のきほん 特別編」
——当時は、デジ田交付金の開始初年度ということで、準備も大変だったのではないでしょうか。
志々目:開始初年度で事例もなく、さらに短期スケジュールだったこともあり、準備は簡単ではありませんでした。しかしグラファーのサポートも受けて課題をクリアしながら、間に合わせることができました。
デジ田交付金では、申請時に行う計画策定の中でKPIを設定する必要があります。計画時からこのようなKPIを意識できたことによって、単にデジタルを導入するだけではなく、市民からの評価などを指標にしながら進めたことがデジタル化を加速するきっかけになったと感じています。
企画課 DX推進係 係長 志々目 武 氏
全庁を巻き込むための工夫と成果
①「紙も残しながらオンラインという手段を増やす方針」で進める
——全庁を巻き込むために、どのような工夫を行っていますか。
志々目:「紙も残しながらオンラインという手段を増やす」という目標を掲げることで、デジタルになじみのない市民や職員にとってもなじみやすい状況を作りました。いきなり「すべてをデジタルに」と打ち出すのではなく、オンラインを手段の一つに据えて徐々に浸透させていくことで、庁内外の理解を深めました。
——オンライン化する対象の手続きはどのように選定しましたか。
志々目:全庁に向けた事前調査を通じて、1,100件の手続きの中からオンライン化を初期的に進める対象手続きを選定しました。事前調査では、「手続きの名称」「オンライン化が可能かどうか」「可能な場合の実現予定時期」といった項目を各課に回答してもらいました。
②研修・テンプレート・伴走支援の3点で「初回作成」のハードルを越える
——取り組みの開始直後は、情報政策係としてどのような支援を行いましたか。
南谷:初回作成のハードルを越えるために、まずは庁内向けの研修を行いました。各課から1名ずつ参加してもらったうえで「Graffer スマート申請」の操作方法や、テンプレートの活用方法などを紹介。グラファーの研修動画を活用しながら、基本的なイメージをつかめるようにすることを目指しました。
テンプレートを活用して簡単に初回のフォーム作成が行えるようにしている。
——研修後は、どのような支援を行ったのでしょうか。
南谷:研修後は、オンライン化を進める各課のニーズに合わせて伴走支援を行っています。「Graffer スマート申請」の操作は非常に簡単なため、手取り足取り支援を行うというよりは、疑問点があった際に支援するイメージです。
企画課 DX推進係 主査 南谷 礼美 氏
——伴走支援を通じて感じたことはありますか。
南谷:伴走支援を通じて、1度オンライン申請を作成すると、2度目以降のハードルは下がることを実感しました。実際に、オンライン化が難しいと思われていた手続きが、後に実現するケースも見受けられました。
③ 簡易申請を通じてオンライン申請を庁内に浸透させる
——南九州市では1年半で約8割の課がオンライン申請の作成を経験しています。このような土壌を作れたのはなぜでしょうか。
志々目:簡易的な申請には「Graffer スマート申請」のアンケート機能を利用することで、「オンラインでやるのが当たり前」という雰囲気を作れたことが大きかったと思います。
——例えばどのような簡易申請にアンケート機能を活用しているのでしょうか。
志々目:健康増進課の受診希望調査などの、市民向けの調査にアンケート機能を活用しています。当初、オンラインは市民にとってなじみの薄い状況でしたが、この受診希望調査では95%の回答者から「来年もオンラインで申請したい」という好意的なフィードバックが届いています。対象者には高齢者も多く含まれるため、想像以上の反応でした。
——「スマート申請」と「アンケート機能」はどのように使い分けているのでしょうか。
志々目:決済や認証が必要な申請には「スマート申請」を活用しています。一方で、決済も認証も不要な簡易的な申請については、より簡単に利用できる「アンケート機能」という形で使い分けています。
——他にはどのような場面でアンケート機能を活用していますか。
志々目:庁内のさまざまな調査にアンケート機能を活用しています。例えば総務課の行う庁内研修の申し込みや、各課の開催するイベントの出欠確認、購入希望の回収など、従来は紙を回覧していたようなものの多くをアンケート機能に移行することで効率化が進んでいます。
庁内のさまざまな調査などで、アンケート機能が活用されている。
——市民向けだけではなく、庁内のさまざまな調査や調整にアンケート機能を活用しているのですね。
志々目:このような取り組みによって、オンライン申請が職員に定着してきています。日常的に使うツールになることでハードルが下がり、「この申請もオンラインでできるのではないか」という自発的な雰囲気が広がっているように感じます。
④ 結果を出して雰囲気を変えていく
——庁内の雰囲気作りを着実に進めている印象です。高齢者の割合が高い地域では「オンライン化は無理ではないか」という雰囲気になることも多いと言います。雰囲気を変えるために意識していることはありますか。
志々目:申請数が一定数ある手続きからオンライン化を進めることを意識しています。申請数が一定数ある手続きがオンライン化されると、オンライン申請が使われる数が増えます。すると当初は「高齢者が多いから使われないだろう」と思っていた職員も、実際にオンラインでの申請数が増えてきて、だんだんと意識が変わってくるものです。
——「オンラインで申請が届く」という実感を持ってもらうことが大切だということですね。
志々目:「Graffer スマート申請」を通じて取得できる、利用者の評価や反応も庁内の雰囲気作りに役に立っています。良い声も悪い声もダイレクトに把握することができるので、モチベーションの向上やシステムの改善に役立っている印象です。
南九州市では利用者からの声を改善に役立てている。
——利用者の声をしっかりと受け止めているのですね。
志々目:例えば市民生活課では、市民からの声をもとに10回以上申請フォームの改善を行っています。「ここが使いにくかった」という情報をもとに具体的に改善を加えていくことで、当初よりも市民からの評価が向上している印象です。
今後はさらなるデジタル化に取り組んでいく
——今後のデジタル化の展望について教えてください。
志々目:庁内には「デジタルでやるのが当たり前」という雰囲気が定着しつつあります。一方で、オンライン化が思うように進まない手続きもあります。このような手続きに対しては、情報政策係が申請フォームの作成を代行することも検討しています。きっかけを作ることによって、最終的にはそれぞれの課が自走して作成できるようになることを目指していきます。
南谷:「Graffer スマート申請」の多彩な機能の活用も進めていきたいと考えています。例えば、GビズIDでログインできる機能の活用によって、今後は事業者向けの手続きも拡充させていけるのではないかと思います。
志々目:これまでの取り組みを通じて、多くの市民から「手続きが簡便になった」「郵送などの方法と比較して、より簡単に手続きができるようになった」という声をいただいています。引き続き、全ての手続きをデジタル化することを目指して、公印の押印省略なども進めていきながら、行政サービスの向上に取り組んでまいります。
取材・写真:柏野幸大・森友嗣 / 文:東 真希(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)
南九州市が取り組む、デジ田交付金を活用した手続きのオンライン化は「Graffer スマート申請」によって実現できます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしで分かりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。
グラファー Govtech Trends編集部
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