職員採用試験の申し込みをオンライン化
——職員採用試験のオンライン申請は、どのような仕組みなのでしょうか。
森岡:職員採用試験のオンライン申請は、採用試験の申し込みをインターネットで行える仕組みです。湖南市では、2020年度から職員採用にオンライン申請を活用しています。受験者は、受付期間であれば、いつでもパソコンやスマートフォンから申し込みができます。
受験者は、インターネット上で簡単に申し込みができる。
——従来は、どのような方法で申し込みを受け付けていたのでしょうか。
森岡:これまでは、紙の申込書で申し込みを受け付けていました。そのため、受験者が申込書を入手する際には来庁の必要がありました。提出の際にも、来庁して窓口で提出するか、郵送で送る必要がありました。しかしオンライン申請に対応した一部の募集に関しては来庁が不要となり、申し込みはオンラインで完結できるようになりました。
受験者が職員採用試験を受験するための来庁回数は、2回から0回に減少。わざわざ来庁する必要がなくなった。
——オンライン申請の導入後、紙での受け付けは継続したのでしょうか。
森岡:オンライン申請を導入した募集に関しては、紙での受け付けを廃止し、すべてオンラインに統一しました。受け付け方法を統一することによって、運用負荷を軽減したり、オンラインが定着するきっかけにしたりできると考えたためです。
総務部 行財政改革推進課 ICT推進室 室長補佐 森岡 和也氏
オンライン申請に対応したことによって、応募者数は2.6倍に増加
——インターネットで申し込めるようになったことによって、応募者数にはどのような変化がありましたか。
森岡:オンライン申請を導入した4次募集枠の応募者数は、57名から149名と、2.6倍に増加しました。手軽に申し込めるようになったことによって応募者数が増加し、受験者の居住エリアも広がりました。申し込み方法の変更が、潜在層の応募に結びついたのではないかと考えています。
2019年度と2020年度を比較すると、応募者数が2.6倍に増加。
——それは大きな反響ですね。オンライン申請を導入したことによって、他にどのようなメリットがありましたか。
森岡:オンライン申請を導入したことによって、内部事務の削減につながりました。郵送や窓口での受け付けと比較すると、受付時の窓口対応や、封筒の開封、書類の整理、データ入力といった事務が不要となりました。今後は、画像データの制御や受付後の通知などのバックオフィス機能の充実にも期待しています。
——反対に、課題を感じている部分はありますか。
森岡:紙で受け付けた年と比較すると、当日受験する人の歩留まり率が減少したという課題があります。例えば、4次募集に関して、2019年度は応募者数57名に対して実際の受験者が34名と、6割が試験を受けた計算となります。一方、2021年度は応募者数149名に対して受験者が72名と、5割が試験を受けた計算となります。
——手軽に申し込めるようになった反面、申し込みをしたものの受験しないケースが1割増加したということですね。
森岡:紙で受け付けた際にも未受験者は一定数存在していたため、オンラインになったことによって急増したということではありませんが、割合自体は増加しています。一方、受験者数自体も増加しているため、課題よりもメリットの方が大きいとも言えます。ただ試験用紙や会場の準備にも関わってくるため、そういった点では今後の課題だととらえています。
受験者からは「先進的だと感じた」の声
——実際の受験者からはどのような反応がありましたか。
原田:実は、私自身が2020年度の受験者なのですが、「先進的な取り組みに力を入れている自治体だ」と感じました。当時は県外で会社勤務をしていたため、試験を申し込むためのハードルは高いものでした。紙での申し込みや送付は、煩雑で時間がかかるためです。申し込みの段階まで到達する受験者が減ることは想像に難くありません。そういった観点で、電子申請は革新的で、受験生側にとってはメリットばかりだと感じました。
総務部 行財政改革推進課 ICT推進室 主事 原田 裕太氏
——原田様は実際にオンライン申請を利用して職員採用試験を受験した後、庁内のDX推進に携わられているというのは喜ばしいことですね。他に、受験者の方からは、どのような反応がありましたか。
原田:「とても分かりやすく申請しやすかった」「次のページへ進むごとに申請内容が保存できるので、快適なシステムだと思った」「簡略化されていてとても使いやすかった」という声が届いています。
手続き選定の背景「オンライン化しやすい手続きを絞り込んだ」
——職員採用試験の手続きをオンライン化するにあたって、手続きの選定はどのように行ったのでしょうか。
森岡:オンライン化する手続きを選定する際には、いくつかの観点に注目して、適切な手続きを選びました。例えば、「本人確認が不要であること」「提出のみで手続きが完了すること」「申請項目が簡単であること」「オンラインでの手続き後に来庁が不要であること」「自治体側でルールを決めやすいこと」といった観点です。
——これらの観点に当てはまったのが、職員採用試験の申し込みということですね。
森岡:職員採用試験の申し込みは、オンラインだけで完結できる手続きです。法令で縛りがあるものではなく、自治体側でルールを定めやすいため、オンライン化に取り掛かりやすい手続きだと考えました。
県の共同調達によるメリットは大きい
——滋賀県では、県が電子申請システムの共同調達を行い、そのシステムを利用して各市町がデジタル化を進めています。共同調達についてどのようなメリットを感じていますか。
森岡:共同調達によって感じているメリットの一つ目が、調達の際にかかる事務の手間が削減できることです。県があらかじめ選定した、要件を満たしているサービス事業者を利用できるため、仕様書の作成や評価といった調達に関わる業務を削減できます。
二つ目に感じているメリットは、コスト削減です。各市町が同じシステムを利用するため、各市町が個別に利用する場合よりも、費用削減につなげることができました。
三つ目に感じているメリットは、他の市町と連携することによって、サービス事業者に対して意見を言いやすくなることです。一つひとつの市町としては小さな規模ですが、他の市町と定期的に情報交換を行うことによって、まとまった意見として機能の改善要望などをあげることができます。
参考:滋賀県の共同調達に関する詳細事例『共同調達で県全域のデジタル化を推進。滋賀県が動く』
今後も、引き続き市民サービスの向上を目指していく
——湖南市では「スマート自治体への転換」を目指し、市全体でデジタル化を推進しています。職員採用試験の他には、どのような取り組みが進んでいますか。
森岡:職員採用試験に加えて、市民向けの「広報誌の購読申し込み」、事業者向けの「上下水道の開始休止届」といった手続きのオンライン化が進んでいます。デジタルを活用した市民サービスのさらなる向上に向けて、行政手続きの始めから終わりまでを一貫してデジタルで完結することを目指しています。
——最新の取り組みとして、「窓口予約システム」にも取り組まれていますね。
南:湖南市では児童扶養手当現況届の提出時に、受給者との面談を必須としているのですが、この面談の予約に「窓口予約システム」を活用しました。これまでは、受給者の来庁が集中する時間帯に待ち時間が発生してしまっており、課題感を感じていました。そこで新たに「窓口予約システム」を導入。待ち時間の削減や混雑回避、職員の業務効率向上につなげることができました。
健康福祉部 子ども家庭局子ども政策課 主任主事 南のどか氏
——今後は、どのような取り組みを行っていく予定ですか。
南:「窓口予約システム」に関しては、市民の利便性をさらに高めていきたいと思います。例えば、予約の内容をもとに職員側で準備ができるようにするといった工夫を検討していきたいと考えています。
森岡:職員採用試験に関しては、オンライン申請の活用の拡大を検討していきたいと考えています。さらに他の手続きに関しても順次、オンライン化を進めていきたいと考えています。他の市町が導入して効果が出た手続きなどを確認したり、申請数が多く費用対効果が高い手続きを洗い出したりしながら、窓口改革につながる取り組みを進めていきます。
取材:本山 紗奈 / 写真:本山 紗奈 / 文:東 真希 (Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名は取材当時のものです。)
湖南市が取り組む、「職員採用試験」のオンライン申請は「Graffer スマート申請」によって実現できます。導入時は、優良事例を取り込んだテンプレートを活用可能です。「窓口予約システム」は「Graffer 窓口予約」によって実現できます。費用や導入期間については、 無料お問い合わせからお気軽にご相談ください。
グラファー Govtech Trends編集部
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