「妊婦や子育て家庭の負担を軽減したい」と考えたことがきっかけに
——「伴走型相談支援のオンライン予約」はどのような仕組みでしょうか。
柴田:「伴走型相談支援のオンライン予約」は、妊娠期から出産・子育て期までの相談予約が、スマートフォンやタブレット、パソコンから行える仕組みです。
妊娠の届出時面談や出産前面談、育児相談の予約を、オンラインでいつでも行うことができる。
——予約システムを導入したきっかけは何だったのでしょうか。
河原林:市民の待ち時間を削減できないかと考えたことが一つのきっかけとなりました。以前は妊娠の届出時面談や出産前面談の予約を受け付けていなかったため、時間帯が重なると面談前に待ち時間が発生したり、相談場所が埋まってしまい廊下で対応したりすることがありました。
堀田:育児相談についても電話口の待ち時間を短縮できないかと模索していました。以前は紙の予約簿を使用して予約を受け付けていたため、電話や窓口で予約の問い合わせが重なると、職員が予約簿を受け渡す間、市民に何分もお待ちいただく場合がありました。
——妊婦や子育て家庭の「待ち時間」を解消したいと考えたのですね。
柴田:妊婦や子育て家庭が負担を感じることなく支援を受けられるようにするには、相談のハードルはできるだけ低くする必要があります。そのためには、待つことなく、いつでもどこでも簡単に予約できるような仕組みが必要だと考え、オンライン予約を導入することにしました。
オンライン予約で、市民の待ち時間・職員の業務工数の両方を削減
——オンラインで予約を受け付けることによって、どのような効果がありましたか。
柴田:オンライン予約によって、市民の待ち時間を削減することができました。以前のように相談や予約のために待ち時間が発生するケースはほとんどありません。24時間いつでも好きなときに予約ができて、待ち時間なく相談することができるため、市民サービスの向上につながっているのではないかと考えています。
——職員の業務工数に変化はありましたか。
柴田:以前は予約を受け付けるために1予約あたり約5分かかっていましたが、現在ではゼロになりました。オンライン予約は市民にも職員にも大きなメリットがあるため、伴走型相談支援に取り組むうえで、なくてはならない存在です。
1件あたり5分かかっていた予約受け付けの工数がゼロになった。
——オンライン化によって、台帳管理の観点では変化がありましたか。
堀田:以前は紙の予約簿で予約を管理していたため、予約の重複や誤りが発生しやすいという課題がありました。しかしオンライン予約の導入を機に紙の予約簿を廃止したことによって、台帳管理に手間がかからなくなりました。
また、以前は予約簿がない場所で予約電話を受けた場合、電話の子機を持って予約簿まで走って行くこともありましたが、そのようなケースもほとんどなくなりました。
——妊娠の届出時面談や出産前面談については、どのような変化がありましたか。
河原林:オンライン予約の導入によって、妊娠の届出時面談や出産前面談で、より丁寧な対応ができるようになりました。これまでは家族の情報や状況については当日聞き取りを行っていました。しかし現在では予約情報を見て事前にアンケートも含めた下調べができるようになったため、より個々の状況に応じた支援が行えるようになっています。
市民からは「時間帯や場所を気にせず予約できて利用しやすかった」の反応
——実際にどのくらいの方がオンライン予約を利用しましたか。
柴田:育児相談の約86%、出産前面談の50%、妊娠の届出時面談の約38%がオンライン予約を利用しました。
——市民からはオンライン予約について、どのような反応がありましたか。
柴田:市民からは「時間帯や場所を気にせず予約できて利用しやすかった」「見やすくスムーズに予約が取れた」などの反応がありました。
市民からの評価が高く、ポジティブな反応が多く届いた。
——市民サービスの向上につながっていますね。
柴田:予約ページを公開する前までは、どのくらい利用されるのかといった不安もありましたが、予約ページを公開した途端、多くの保護者がすぐに使いこなしている様子が見て取れて安心しました。想像以上に良い感想が届いて驚いています。
導入時は職員のフィードバックを反映しながら改善
——「Graffer 窓口予約」の導入はどのようなスケジュールで行ったのでしょうか。
柴田:2023年3月から本格的に準備を開始して、2023年4月に予約ページを公開しました。私自身、システムの専門家ではないため構築できるのかと不安でしたが、想像よりも簡単に構築できました。
——導入時にはどのような点を工夫しましたか。
柴田:予約ページを見る市民が迷うことのないように工夫しました。実際の利用者と年齢層の近い職員にも予約ページを見てもらって、フィードバックを受けながら3、4回修正を繰り返しました。
また、システムから自動配信される予約完了メールには、情報を詳細に記載することで、利用者が持ち物や場所をメールから確認できるようにしました。
予約完了メールに案内を分かりやすく記載した。
——導入を機に、運用面ではどのような見直しを行いましたか。
堀田:身体計測結果の入力に「Graffer 窓口予約」のメモ欄を活用することによって、用紙を削減しました。もともとは紙に身体計測結果を書いていたのですが、導入を機に、より無駄のない運用に変更しました。
広報観点でさまざまな工夫を凝らす
——多くの市民にオンライン予約を活用いただいていますね。市民への広報はどのように行っていますか。
柴田:市民に対しては、次のように複数の手段を通じて案内を行っています。
まずは妊娠届出書の裏面です。案内文面の中に二次元コードを配置することで、スマートフォンからすぐに予約ページを発見できるようにしています。
その後の、出産前面談の案内はがき、育児相談の案内チラシについても、目立つ箇所に二次元コードを配置しています。
さらに乳幼児健診の会場には、壁に貼るための小さなポップを用意して、育児相談を必要とする保護者が健診の場ですぐに予約を取れるようにしました。
堀田:育児相談のオンライン予約開始当時は市の公式LINEでも案内を行い、より多くの利用者に周知することができました。
二次元コードをうまく活用しながら、市民への広報を適切に行った。
今後も市全体でデジタル化に取り組んでいく
——今後はどのような取り組みを行う予定ですか。
柴田:引き続き、妊婦や子育て家庭に寄り添った伴走型相談支援を実現していきたいと考えています。「Graffer 窓口予約」で市民サービスを向上できそうな場面はまだまだあるため、市全体の動きと呼応しながら積極的に活用を検討していきます。
天池:亀岡市では2021年に情報化推進計画を策定し、10月には市長がデジタルファースト宣言を行うなど、デジタル化に対して前向きに取り組んでいます。今回の取り組みでは「Graffer 窓口予約」を通じて「待たない窓口」を大きく前進することができました。手続きのオンライン化を推進することを前提に進めながら、オンライン化が難しい手続きについては「待たない窓口」や「書かない窓口」の観点を取り入れていきます。マイナンバーカードの活用についても積極的に取り組むことで、市民サービスの向上に取り組んでいきたいと考えています。
亀岡市:
子育て支援課 母子健康係 柴田氏、堀田氏、河原林氏
情報政策課 デジタル推進係 天池氏
取材:
柏野 幸大、森 友嗣 / 文:東 真希/ 撮影:松山 通 / 図:堤 翔(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)
亀岡市が取り組む、伴走型相談支援の相談予約オンライン化は「Graffer 窓口予約」によって実現できます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしで分かりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。
グラファー Govtech Trends編集部
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