オンライン申請を導入し手続きの利便性を向上
——「原付バイク等のオンライン申請」はどのような仕組みでしょうか。
瓜生田:「原付バイク等のオンライン申請」は、原動機付自転車等の新規登録・廃車申告・名義変更がインターネットで行える仕組みです。市民や事業者は、スマートフォンやパソコンから、24時間いつでも手続きを行うことができます。
申請ページで入力をする前に、「はい・いいえ」で回答できる簡単な質問を用意することによって、「原付バイク等のオンライン申請」の対象でない方からの申請を防ぐ工夫も行っています。例えば125ccを超えるバイクなど、オンライン申請の対象外の方については、手続きの窓口を案内するようになっています。
市民や事業者は、オンラインで原付バイク等の手続きができる。申請を開始する前に簡単な質問に回答すると、自分に必要な手続きが分かるような工夫も取り入れられている。新規登録の際のナンバープレートはレターパックで送付している。
——オンライン申請を導入する前は、どのように申請を受け付けていたのでしょうか。
瓜生田:オンライン申請を導入する前は、7つの区役所それぞれの窓口で申請を受け付けていました。しかし、オンライン化を機に、組織体制を見直し、財政局資産課税課のみで受け付ける運用に変更しました。
オンライン化を機に、申請の受け付けを7つの区役所から財政局資産課税課に集約。組織再編を行った。
——オンライン申請の導入を検討したきっかけは何だったのでしょうか。
瓜生田:市民や事業者の利便性を向上したいと考えたのがきっかけです。財政局では、DX化を推進し業務の効率化を図ることを重要施策として掲げています。あわせて、以前から「郵送での手続きはできないのか」といった要望があり、窓口以外の選択肢を提供したいと考えていました。
財政局 資産課税課 軽自動車税係長 瓜生田 昇氏
——事務の観点では、オンライン化する前はどのような課題を感じていましたか。
菊池:事務の観点では、窓口や電話での案内業務に課題を感じていました。長いケースでは案内に20〜30分ほどかかることもありました。また、業務が途中で中断されるため非効率になってました。
財政局 資産課税課 軽自動車税係 菊池 祐香里氏
——電話や窓口での案内は、1日あたり何件ほど発生していたのでしょうか。
瓜生田:7区役所分をあわせて、1日あたり、窓口での申請は100件、電話での問い合わせは100〜200件ほどです。繁忙期は、その倍以上の件数があり業務に集中することができませんでした。
オンライン化によって、1件あたりの処理時間が約3分の2に減少
——オンライン化によって、事務の面ではどのような効果がありましたか。
瓜生田:オンライン化によって、1件あたりの事務処理時間が減少しました。
例えば、新規登録の場合の処理時間は約15分から約10分に減少しています。窓口の場合には、受け付け時の案内に5分ほどかかっていましたが、オンライン申請はゼロです。
新規登録の場合、受け付けからナンバープレート交付までにかかる事務の時間が約3分の2に減少した。
——1件あたりの事務処理時間が減少しているということは、オンライン申請の利用率が上がっていけば、業務全体のボリュームがさらに減少していくということですね。
瓜生田:現在は、オンライン・郵送・窓口で申請を受け付けており、オンライン申請の利用率としては、開始直後の2022年12月は約2%、財政局資産課税課に集約した2023年1月は約15%、その後約25%に増加しています。今後利用率が上がっていけば、さらに事務の効率化を図ることができると考えています。
オンライン申請の利用率は段階的に向上している。今後はさらなる利用率向上によって、事務の効率化を目指す。
——実際に事務を行ってみて、率直にどのように感じていますか。
菊池:オンライン申請の導入によって、業務効率が上がったと感じています。窓口の場合には、いつ申請があるか分からないので、業務が中断されることがよくあります。一方、オンライン申請の場合、まとめて処理ができるので、時間を効率的に使うことができます。
オンライン化の後、組織再編や市統一ナンバープレートの導入を実施
——福岡市では、オンライン化とあわせて組織再編や市統一ナンバープレートの導入も行ったと伺っています。それぞれの取り組みについて教えてください。
瓜生田:市統一ナンバープレートの導入は、これまで区ごとだったナンバープレートを、「福岡市表記」のナンバープレートに統一する取り組みです。統一によって、市民の手続きは簡略化されます。
これまで区ごとにナンバープレートを用意していたが、市で統一した。
——組織再編についても詳しく教えてください。
瓜生田:原付バイクや軽自動車に関わる業務は、これまで7つの区役所で行ってましたが、今回のオンライン申請の導入を機に、財政局資産課税課に業務を集約しました。
——オンライン申請については、市民からどのような反応がありましたか。
瓜生田:市民からは、「簡単だった」、「遠方にいても楽に手続きができて素晴らしい」という反応が届いています。オンライン申請の導入にあたっては、市民にメリットを感じてもらえるかどうかが一番不安だったので、良い反応を得られて安心しました。
市民からは、オンライン申請に対してポジティブな反応が届いた。一方、事業者の場合は、複数件まとめて申請することが多いため入力の手間を削減してほしいといった反応もあった。
導入時は、利用者アンケートや区役所向けの研修会などを実施
——今回のプロジェクトは、オンライン申請の導入に加えて、組織再編、市統一ナンバーの導入など、幅広い取り組みを行っています。どのようなスケジュールで進めたのでしょうか。
瓜生田:2021年9月頃に事業者向けのアンケートを行い、2022年4月頃に本格的に申請フォームを作り始めました。10月に区役所向けの研修会を実施した後、11月に各区役所でオンライン申請の受け付けを始めました。その後は、2023年1月から受け付けを財政局資産課税課に集約しました。
——丁寧に取り組みを進められている印象です。2021年9月に行った事業者向けのアンケートについて詳しく教えてください。
瓜生田:オンライン化にあたって、事前に事業者にアンケートを行い、要望を集めました。集まったアンケートは約100件でした。
アンケートでは、約8割から「オンライン申請をすぐに使いたい」といった回答がありました。また、ご意見としては「手続きしたら、すぐにナンバープレートが欲しい」というものが多くありました。
そこで、ナンバープレートの送付にレターパックの導入を検討することにしました。レターパックが翌日届くかどうか、実際にテストを行ったうえで、13時までに申請があったものは、その日中にレターパックを出すことによって、申請の翌日には到着するようにしました。
——市民や事業者からの意見を取り入れながら、運用を組み立てていったのですね。その後、10月に実施した区役所向けの研修会についても詳しく教えてください。
瓜生田:区役所向けの研修会では、各区役所から一人参加してもらい、市民にとってのメリットや、システムの使い方を紹介しました。区役所の職員には事前にテストページのURLを送付し、意見を集約していたため、協力的な意見が多かったように感じます。
財政局 資産課税課 軽自動車税係 境 尚志氏
——その後、11月に各区役所でオンライン申請の受け付けを開始されています。いきなり財政局資産課税課に集約するのではなく、まずは各区役所でオンライン申請の受け付けを始めたのはなぜでしょうか。
瓜生田:手続きの方法を急に大きく変えてしまうと、混乱を招く可能性があると考えたためです。そのためまずは移行期間として、窓口での申請もオンラインでの申請も、区役所で受け付けるようにしました。
その後、区役所でオンライン申請が徐々に使われ始めていることを確認して、オンライン申請に移行できそうだと判断したうえで、2023年1月に財政局資産課税課に集約しました。
——市民に向けては、どのように広報を行ったのでしょうか。
瓜生田:市政だよりや、市公式ホームページ、公式SNSへの掲載や窓口でのチラシ配布を通じて、市民に案内を行いました。業者に対しては、個別で案内の送付も行っています。
今後は、市民や事業者にとってさらに利便性の高い仕組みを目指す
——利用者中心のデジタル化を進めるために、今後はどのようなことに取り組んでいくのでしょうか。
瓜生田:今後は、オンライン申請の利用率をさらに向上させたいと考えています。さらなる周知によって、より多くの方にオンライン申請を活用いただきたいと考えています。
あわせて、市民や事業者からの声をもとに、システムの改善にも取り組んでいきます。より使いやすく、市民や事業者だけでなく、職員にとってもメリットがあるように取り組んでいきたいと考えています。
取材・写真:佐竹 佳穂 / 取材・文:東 真希(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)
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グラファー Govtech Trends編集部
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