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2021.12.14 Tue

福岡市の行政DX、なぜ成功したか——「市民のため」からはじめるデジタル化

国に先駆けたハンコレスの実現や、コンビニ交付のいち早い導入など、さまざまな形で行政DXを推進する福岡県福岡市。2020年11月には「DX戦略課」を新設し、住民サービス向上のために、さまざまな手続きのオンライン化を実現。市民からは「助かった」「使いやすかった」という声が届いています。2020年度の人口増加数・増加率は政令指定都市で第1位となり、魅力ある都市づくりに向けてさらなる取り組みを進める福岡市の行政DXは、なぜこれほどまで飛躍的に進んでいるのでしょうか。

福岡県福岡市:1,612,392人(令和2年国勢調査)

福岡市の行政DX、なぜ成功したか——「市民のため」からはじめるデジタル化

お話を伺った福岡市DX戦略課の皆様

橋本 康範氏(総務企画局 調整部 DX戦略課長)
交通局建設推進課、総務企画局国際協力課などを歴任。DX戦略課長として福岡市のDX推進の旗振り役を務める。
稲田 修弘氏(総務企画局 調整部 DX戦略係長)
水道の基幹システムの構築運用を経験し、公共施設の整備業務などを経た後、DX戦略係で各課のオンライン申請導入のサポートを担う。

市民サービス向上のためのデジタル化

——福岡市では、これまでどのような流れでデジタル化を進めてきたのでしょうか。

橋本:福岡市では2019年から、国に先駆けて「脱ハンコ」を進めてきました。市が見直せる約3,800種類の書類に関して、「脱ハンコ」を完了したのが2020年9月です。住民票の写し等のコンビニ交付に関しても、全国の政令指定都市に先駆けて実現。2020年11月には「DX戦略課」を設置し、全庁的なデジタル化に取り組んでいます。2021年4月には住民票、高齢者乗車券、税務証明書といった手続きのオンライン化をスタート。2022年度末までに件数ベースで90%以上をオンライン申請に対応することを目標に、さまざまな施策に取り組んでいます。

福岡市におけるデジタル化の流れ

——「DX戦略課」の設置後、これまで以上にスピーディなデジタル変革を進めています。その裏には、どんな課題意識があったのでしょうか。

橋本:新型コロナウイルス感染拡大による影響の中、役所に出向くことが市民の負担になっている状況に対して課題意識を持っていました。スマートフォンから簡単に行政手続きができれば、市民は来庁することなく、自宅や職場から手続きを完結できます。

総務企画局調整部 DX戦略課長 橋本 康範氏

——市民のためのデジタル化ということですね。

橋本:デジタル化のゴールはシステムを導入することではなく、システムの先にいる市民に使ってもらうことです。DX戦略課では、市長のリーダーシップのもと、市民の声を取り入れながら、「市民にとって使い勝手のよいオンライン申請」を目指して取り組みを進めています。実際の反応として、オンライン申請を使った市民からは「80代ですが、チャレンジしたらできました」という喜ばしい声も届いています。

電子申請システムは、「市民目線で使いやすいこと」を重視して選定

——ここからは実際のプロジェクトについて詳しくお聞きします。オンライン化の基盤とも言える電子申請システムは、どのような判断軸で選定しましたか。

橋本:電子申請システムを選定する際には一貫して、「市民目線に立った、使い勝手の良いオンライン申請」が作成できることを重視しました。

——従前の電子申請システムと比較して、新しい電子申請システムはどのような点が異なりますか。

稲田:従前の電子申請システムは、PCから利用することを前提に「PCファースト」の思想で作られていました。しかし、現代では約92%(※)がスマートフォンを所有しており、スマートフォンで申請する市民が大多数です。そこで新しい電子申請システムにおいては、「モバイルファースト」であることを優先しました。「モバイルファースト」とは、スマートフォンで表示できるだけではなく、スマートフォンに最適化したUI/UXで申請が行えるようにするという考え方です。申請ページまでの導線もあわせて見直すことによって、市民がスマートフォンでスムーズに申請できることを目指しました。

(※)参照:総務省『令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書


総務企画局調整部 DX戦略係長 稲田 修弘氏

新しい電子申請システムを使った「オンライン手続きの選定方法」とは

——電子申請システムの導入後、庁内でデジタル化を進める際にハードルとなるのが、「どの手続きからデジタル化を始めるのか」という点です。福岡市における、手続きの選定基準を教えてください。

稲田:デジタル化に適した手続きを選定する際に一つの基準としたのが、申請数です。福岡市では、年間1,000件以上の申請数がある手続きを「デジタル化の重点手続き」と位置付けています。「デジタル化の重点手続き」には、市民にとって身近な手続きや、市民の皆さんが必ず一度は行う手続きが含まれます。こういった手続きのデジタル化を優先的に進めています。

——申請数は、どういった方法で把握されたのでしょうか。

稲田:各課に協力を仰いで全庁的な調査を行いました。例えば、「各課でどういった手続きがあるのか、その件数、現状の申請方法は紙なのかオンラインなのか」といった内容を調査しました。この調査結果に基づいて、優先順位づけをしたうえでデジタル化を進めています。

——手続きの選定において、申請数に加えて考慮した観点はありますか。

稲田:選定の際には、該当の業務を深く理解している職員がいるかどうかも重視しています。職員や外部事業者との間のハブとなるようなキーマンとともにデジタル化を進めることによって、デジタル化は着実に進みます。こういった観点から、DX戦略課には多様な経歴の職員が集まっており、各課とのコミュニケーションを密に取るようにしています。

外部人材を有効活用して、DXをさらに推進

——福岡市におけるDX推進の一つの特徴が、外部人材の活用です。「2チャンネル」開設者の西村博之さんをはじめとした民間専門人材を採用しています。外部人材とやりとりをする上で心がけていることはありますか。

稲田:外部人材とやりとりをする際には、われわれが目指す福岡市DXの姿を実現するための意見をいただくというスタンスで行っています。例えば、「どうしたらいいですか?」や「ご意見をお聞かせください」といったコミュニケーションはしません。

——あくまでも自治体側が主体性を持つということですね。

稲田:そうですね。福岡市が考える方向性を明示したうえで、「違う立場である外部人材の方々から見て、われわれの方向性を補強する内容や、見直しに対する反対の意見も含めていただきたい」といった伺い方をするようにしています。意見を伺うことがゴールではなく、最終的に職員自らの手でデジタル化を実現するという覚悟を持ちながら、外部人材とのコミュニケーションを行っています。

デジタル化は「業務の見直しとセットで行う」

——DX戦略課の設置、電子申請システムの導入、外部人材の活用を踏まえ、福岡市では、申請のオンライン化を着実に実現しています。実際に導入を進める際に、注力していることはありますか。

稲田:オンライン申請を導入する際には、必要に応じて、業務の見直しをセットで行うようにしています。オンライン化によって申請件数が増えたときに、「既存の運用フローのままで問題なく業務が回るのか」といった観点は重要です。

——業務改善の必要がある場合には、DX戦略課と各課が、どのように関わっていくのでしょうか。

稲田:これまでオンライン化に取り組んできた経験をもとに、DX戦略課が業務の棚卸しや体制の組み替えをフォローします。オンライン申請を導入すると、多くの場合、窓口・オンラインという二つの方法で申請を受け付けることとなります。オンライン申請を取り入れたことによって、平常業務に支障が出たり、窓口に来る市民が増加したりすることはあってはなりません。DX戦略課では、オンライン申請を導入しても業務が適切に回るよう、各課との連携を密にしながらサポートするようにしています。

詳細事例:福岡市水道局の詳細事例は『「水道の開始・中止」のオンライン手続き——「導入はあまりにもスムーズ」福岡市の取り組み』で紹介しています。

(左から)総務企画局企画調整部 DX戦略課 DX戦略係長 松本 篤史氏、総務企画局企画調整部 DX戦略課長 橋本 康範氏、DX戦略課 DX戦略係長 稲田 修弘氏、DX戦略課とともにオンライン化を実現した、水道局 総務部 営業管理課 お客さまセンター係長下川 猛氏。

今後はさらなる行政DXを目指す

——全国に先駆けてさまざまな手続きのオンライン化に取り組む福岡市では、今後どのようなことに取り組んでいきますか。

橋本:オンライン申請はデジタル化の第一歩だと考えています。市民の利便性向上に向けて、令和4年末までに件数ベースで90%以上をオンライン申請に対応することを目標に、各課の協力を得ながら拡大に取り組んでいきます。

稲田:スマートフォンの活用によって実現できることは、これからどんどん増えていくのではないかと考えています。オンライン申請に限らず、さまざまな視点でスマートフォンを活用することによって、いつでも・どこでも簡単に申請できるような状況を作っていきたいと思います。


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