いかにして実効性のある生成AI導入提案ができるか?ヒントは「一次情報」「課題設定」

こんにちは。HRの畑中です。

今回は、輪番社長 兼 Chief Business Officer(CBO)を務める小寺に話を聞きます。

生成AI事業に活かされているグラファーの強み・独自性、提案時に意識していることなどを通して、“グラファーの生成AI事業が大手企業から選ばれる理由”を深掘ります。

輪番社長 兼 Chief Business Officer(CBO)
小寺 広晃 

東北大学工学部卒業。2014年株式会社リクルートライフスタイル([現]株式会社リクルート)に入社。 業務支援領域の複数サービスの立ち上げを経験し、QR決済事業の開発や営業統括業務に従事。営業担当時にはリクルートグループ全体の全社イノベーション賞を受賞。 2019年に株式会社グラファーに参画し、複数の自治体のデジタル化に携わる。2021年11月より事業推進責任者を務める。 2023年3月より現任。

国内有数の大手企業の生成AI導入を通した変革支援

–業務内容を教えてください。

輪番社長としては、代表の石井から権限移譲を受け、全社の業務執行の責任を担っています。同時に、大手企業を対象とした生成AI事業の事業責任者をしています。

同事業では従業員数300〜1000人以上の大手企業に向けて、生成AIを業務で活用するためのプラットフォーム提供、活用の伴走支援、生成AI研修・人材育成などを行っています。

–法人向け生成AI活用プラットフォームについて詳しく教えてください。

大手企業を中心として数万人の利用実績がある法人向け生成AI活用プラットフォーム「Graffer AI Studio」を提供しています。プロンプトを入力することなく生成AIを利活用できる機能から日常的な業務を支えるチャット、データ分析などの高度な活用まで、あらゆるフェーズの生成AI活用を推進できるプロダクトです。

具体的な利用例も説明します。まずは、「Graffer AI タスクライブラリ」について。プロンプト不要で汎用的な業務タスクにおいて生成AIを活用できるものです。生成AIを活用したい業務が決まっていれば、タスクライブラリの画面から該当するメニューを選ぶだけ。「どの業務に生成AIが活用できるか分からない」という場合でも、タスクライブラリに表示される豊富なメニュー一覧を見ていただくことで当てはまる業務が見つかります。汎用的なタスクのほかにも、人事、営業、マーケティングなど各部署ごとの業務に特化したタスクに対応できるメニューも用意しています。

プレビュー版でのご提供を進めている「ナレッジベース」は、人事・経理・情報システムなどのよくある問い合わせやカスタマーサポート対応時のナレッジ検索をかんたんにできるものです。RAGを活用しており、検索ボックスに入力した文章の意味と登録されている情報の意味を比べ、近しい情報を探し自動的に文章を生成する仕組みになっています。

プロンプトを1度作成するだけで、大量のデータを数秒で一括処理できる機能もあります。これは原稿の作成や文章要約、翻訳作業などに親和性が高いものです。

より詳しい内容は、こちらのサービスサイトをご覧ください。

https://graffer.jp/ai-solution/products

–事業に関わるメンバーや体制について教えてください。

2024年9月より、マーケティング、ソリューションセールス、カスタマーサクセス&コンサルティング、事業開発の4つのチームを作り、事業を運営しています。一見すると役割が分断されているように見えますが、まだまだエンジニアを含めて15人程度の組織であるため、全員が顧客開発、提案、受注、導入後の対応を行い、一連の流れから得た発見や気付きをもとに新しい機能やプロダクトの開発に取り組んでいます。

メンバーのバックグラウンドはさまざまですが、生成AIの可能性を信じ、好奇心を持って働いていることは共通しています。ニュースやSNSで新しい言語モデル、活用方法を見かけるとすぐに試し、メンバー間で所感を話し合ったりしています。自ら触れてみて気づいたことが次の日の商談にすぐ活かされることも多いです。

もともと新しいものへの興味や好奇心が強く、生成AIに惚れ込んでいたメンバーもいますが、全員がそうだったわけではありません。私も、もとからAIへの関心が高かったわけではありません。

Open AIが2022年11月30日にChat GPTを公開した当時、生成AIが持つポテンシャルに経営陣を始めとした多くのメンバーが夢中になり、翌月には生成AIを活用した事業を立ち上げることが決定しました。その中で私自身も食わず嫌いをせず、最初は無理矢理にでも生成AIを触り、自ら好きになれるように努力を重ねていくことで、次第に生成AIへの関心が高まり、生成AIを活用して仕事をすること、新しい情報をキャッチアップすることが日々の当たり前になっていきました。今では、これまでできなかったことが(生成AIによって)できる未来が見えた時にとてもワクワクします。

–事業に活かされているグラファーの独自性・強みを教えてください。

全国190以上の自治体が導入しており、政令指定都市での導入率は70%に到達している行政プラットフォーム事業で培った実績、ノウハウ、体制は、当社の大きな強みとなっています。これによって、当初はAI導入におけるセキュリティ面の懸念を抱いていた大手企業の方々からの信用・信頼を集めることができています。

次に、開発スピードが速いことも当社の強みです。一般的なプロダクト開発においては、要件定義/フロントエンド/バックエンド/インフラといった分野ごとに分業体制を敷くことが多い中、当社のプロダクト開発では、エンジニアがビジネス職のメンバーと協働しながら「Why:なぜ作るのか(解くべき課題)、What:何を作るのか(プロダクト、機能)、How:どう作るのか(ソースコード、技術)」を決め、実装し、顧客に届けるまでを一気通貫で完結することができる開発体制を敷いています。開発を分業する体制に比べ、調整やコミュニケーションにかかるコスト、情報をロストするリスクが減ることで、開発速度の向上とミス・ロスの軽減を実現することができていると考えています。

最後に、当社の独自性として、現場に出向いて得た一次情報を起点としてスピーディーに、実効性のあるプロダクトを作る姿勢が挙げられます。例えば、タスクライブラリはプロンプトを入力せずに使える点が特徴ですが、これは、AI導入研修を行っている際、研修参加者を見ていたメンバーが「プロンプト入力を行うこと自体の難易度が高いのかもしれない」と気づき、利用のハードルを下げる必要性を感じて作ったものです。一括処理機能も1件1件人の手で処理していくのが手間で困っている…という実際の現場を見て作ったものです。

実効性のある提案の起点は「一次情報」「課題設定」

–ご自身の社会人1年目から現在までを振り返ると、ビジネス環境におけるITツールの変遷や発展をどのように感じますか。

社会人になった2014年当初はガラケーを使っていて、連絡手段はメールと電話。飛び込み営業をしていた頃は常にバインダーを脇に抱えていて、提案書も紙で持っていくことが当たり前でした。

ある時期からiPadが支給され、「Slack」などのビジネスチャットツールや「Backlog」「Trello」などのタスク管理ツールの普及が進み、「Zapier」によって異なるサービスやアプリの連携を通してタスクの自動化ができるようになると、個人と組織の業務効率化が進みました。そして、新型コロナウイルス感染拡大によってリモートワークが爆発的に普及し、業務DXの必要性が飛躍的に強まった印象です。

最近は身近なビジネスツールにどんどんAI機能が搭載されていて…10年前には想像していなかったような進化が起きていますよね。

–現在はどのような業務で生成AIを活用していますか。

日常で利用している生成AIツールには数千行に及ぶ自作のプロンプトを入力しています。ざっくり言うと、(そのプロンプトには)「こういうデータベースから、こういう情報を引き出したいから、そのためのSQLを書いて」という指示が書かれていて、SQLを書く上で最も大事なコンテキストである「情報取得先のデータベース」の定義書も全て書き込んでいます。そうすることで、(生成AIツールが)適切なデータベースから、求めている情報を、スピーディーに出力してくれるようになります。今では仕事を進める上でのパートナーとして心強い存在となっていて、業務の生産性が大きく変わりました。

–これまで日本の企業における生成AI導入が進みづらかった理由は何だと思いますか。

生成AIの機能性や可能性をご存じの方は増えていると思いますが、企業導入に際して話を伺ってみると、経営者や導入担当者の方々がさまざまな葛藤を抱えていることがわかりました。

「技術の進歩がとても速く、AIの安全性や実用性がまだ掴めない」

「経営陣としては何かの形でAIを導入したいと思っているが、具体的な導入方法がわからない」

「情報システム部門、DX部門が起点となって導入に取り組もうとするが、定着・活用には至ってない」

この葛藤の背景には、生成AIサービスの「UI」が関係していると考えています。というのも、現在使われている生成AIサービスの多くは「チャットUI」であり、利用する際の自由度が高いです。使い手のリテラシーや経験値が高ければ高い性能や期待するアウトプットを引き出せるものの、それらを十分に持っていない場合は最低限の機能を使うにとどまってしまいます。例えば、Excelも足し算の関数しか使わない人もいれば、VBAを使ってワークフローの自動化まで行う人がいますよね。

個人間で活用レベルに差が生じることを認識した上で、企業導入の際には導入目的を明確にし、必要な導入手順を整え、導入後の活用・定着までのプロセスをリードできる人材が必要になります。しかしながら、2024年時点でこうした人材はとても希少で、どの企業にもいるわけではありません。

この現状を受けて、(当社では)各企業の状況や導入目的に合わせたAI導入支援・研修・人材育成に取り組んでいます。

–生成AIの企業導入を検討している方に向けて提案を差し上げるときに工夫していることはありますか。

生成AI研修に参加する現場の方が、実際にどのようにプロダクトを使っていらっしゃるのかを間近で見ることを通じ、可能な限り一次情報を収集することを大切にしています。その上で、お客様の要望、ニーズを聞きながら自分たちなりの課題設定を行い、対話をしながら実効性がある生成AIの活用方法、導入方法を提案するようにしています。

また、お客様がイメージしやすいシチュエーションを使ったご提案をすることも大切にしています。

お客様が飲食事業を営んでいるとしましょう。同業界は人手不足が深刻化し、採用もしくは業務効率化・自動化による解決策を探しています。そうしたケースでは、テーブルに飲みかけのビールのジョッキがおいてある画像をお見せします。そして、世の中にはこんなサービスがすでに存在しているという話をします。

「テーブルにカメラがあり、飲みかけのビールのジョッキを映しています。ジョッキの中に残っている分量をカメラを通じてAIが把握し、その量が少なくなっていたらテーブルに常備されているタッチパネルから追加注文を勧める音声が自動で流れるということができるとしたらどうですか」

こうした対話をすることによって、生成AIのポテンシャルや活用方法を理解していただきやすくなります。当社のシステムをその場で触り、話を聞きながら手元でプロトタイピングを進めてモックをお見せしたり、後日すぐに作成したデモ画面をお持ちすることもあります。

–提案を差し上げるときに注意していることはありますか。

以前の記事[※]で当社の西村も話していましたが、当社はこれまでにさまざまな試行錯誤を繰り返し、大手企業のAI導入における失敗やしくじりを経験してきました。AIにもできることとできないことがあります。それらをはっきりと伝え、フラットにご判断いただけるように提案を行っています。プロダクトやソリューションを導入して終わりではなく、 お客様とのつながりを強め、導入後も継続して価値を感じていただけてはじめて、当社事業も持続可能なものになると考えています。

[※]「毎日発見と驚きが絶えない生成AI事業。今後のミッションは「AX人材」の輩出」|Enterprise事業推進部 Customer Successチームマネージャー 西村

https://graffer.jp/recruit/inside-graffer/aisolution-nishimura

未踏の生成AI領域で活躍する人材の共通点とは?

–今後の生成AI市場の広がりをどのように見ておられますか。

2023年に一般社団法人電子情報技術産業協会が発表した「生成 AI 市場の世界需要額見通し[※]」には、“生成 AI 市場の世界需要額は年平均 53.3%で成長、2030 年には 2,110 億ドルに達し、2023 年の約 20 倍となる見込み”と書かれています。

当社では、現在の市場のシェアをどれくらい取れるかということよりも、市場自体の成長性に目を向けています。今はまだ多くの企業が生成AIについて学び、活用方法を検証しているフェーズです。この先、企業が生成AIを活用して業務改善を実現するフェーズに入ると、業界課題に特化した生成AIプロダクトが登場し、市場が「生成AI全体」から各業務領域のマーケットに移っていくはずです。

[※]報道資料 JEITA、生成 AI 市場の世界需要額見通しを発表|一般社団法人電子情報技術産業協会

https://www.jeita.or.jp/japanese/topics/2023/1221-2.pdf

–グラファーがこの事業に今取り組む意味や意義はどのようなところにあるのでしょうか。

社会の流れを見据え、最前線で挑戦を続けることで日本における生成AIの活用フェーズを前に進めていく役割を担っていきたいと考えています。

そのために、グラファーがいち早く生成AI領域に挑戦して得た結果や経験は、競合または後発の企業にとっての参考情報になり、日本全体の活性化に繋がればいいと思っています。そうなれば新しい価値が創出される速度が上がっていき、より多くの社会課題が解決されていきます。

今後はフェーズの推移に応じた新しいプロダクト/ソリューションを生み出していくことにトライしていきます。また、これから生成AIを活用していこうとしている人、まだ生成AIを活用した業務に馴染めていない人に向けた研修や伴走サポートも引き続き強化していきます。

–生成AIの普及が進む時代に市場価値が上がるビジネスパーソンの特徴は何だと思いますか。

やりたいことが明確にある人は活躍できる幅を広げていけると思います。というのも、これまでは人によってできることは限られていました。生成AIが登場し、その上限がなくなり、誰でもできることをすぐに増やすことができるようになりました。エンジニアではない当社の事業開発メンバーが即座にデモを作れてしまうのは、生成AIがあるからです。自身の意志を持ち、生成AIを活用して課題解決をしてきた人は、今後あらゆる場所で求められていくはずです。

一方で、意志を持たない仕事は機械に代替されていくと考えています。この意志には「もっと良くしたい」という気持ち、「もっとこんなふうにしたい」という想像力が必要です。それらは待っていれば自然と湧きあがってくるものではなく、まずは一次情報に触れることから始まります。最初に得られるきっかけや気づきは小さなものであることが多く、見過ごさずに捉えることが大切です。

–グラファーの同事業部に関心を持ってくださる方へ、メッセージをいただけますか。

生成AIの登場によってできることが増えている時代です。以前までは「それは自分の部署の仕事じゃないので…」と言えたことも、今後そうは言えなくなっていきます。

大手企業向けの生成AI事業を新しく立ち上げた今、状況としてはもう一度スタートアップに挑戦しているようなもの。今後も新しいサービス/組織の立ち上げに携わる機会は増えていくと考えています。

そうした内外の環境において、「お客様の課題解決のためなら、できることはなんでもやる」と言える人は当社の環境を通してたくさんの成長機会を得られると思います。現在の自分に固執せずに変化できる柔軟さ、過去の慣習を手放すアンラーニングが求められることもあり、自分を変えていくことは簡単なことではありませんが、未踏領域への挑戦と過程の成長を楽しみながら一緒に働ける方がいればぜひご応募いただけると嬉しいです。

取材・執筆=株式会社ユニーク

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