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2020.02.14 Fri

シンガポールのスマートネーションとは。水資源・廃棄物・食料問題に及ぶデータ活用の波

国家戦略として「スマートネーション構想」を打ち出すシンガポールは今、世界最先端のデータ利活用国家として注目を浴びています。行政手続きがデジタル化しているのは言うまでもなく、さらに、水資源・廃棄物・食料問題などにまでデータ活用の波が及んでいます。国を挙げたデジタルイノベーションに取り組むシンガポールの最新状況に迫ります。

シンガポールのスマートネーションとは。水資源・廃棄物・食料問題に及ぶデータ活用の波

社会課題を克服し続けるシンガポールの「スマートネーション構想」

シンガポールでは、国家的な課題である水資源問題・廃棄物問題・食料問題への解決策の要として、政府主導の先進的なデータ活用を進めています。デジタル技術とデータ活用によって、蓄積したデータをリアルタイムに視覚化し、状況を合理的に判断して次なる対策を講じます。その先進的なデータ活用の背景にあるのが、国家プロジェクトである「スマートネーション構想」です。

スマートネーション構想とは

「スマートネーション構想」とは、デジタル技術やデータ活用を積極的に導入することで、経済成長や生活水準の向上を目指す、国家主導のデジタルイノベーション戦略です

都市が抱えるさまざまな課題に対して、情報通信技術(ICT)を活用することで、解決しようという本格的な挑戦が進んでいます。たとえば、各所へのカメラ・センサーの配置による渋滞解消、デジタルIDの浸透による行政の電子化、キャッシュレス化などの変革がすでに行われています。「スマートネーション構想」は、すでに構想段階ではなく、データを有効活用し社会が抱える問題を克服する段階まで定着しています。

シンガポールが抱える社会課題「水不足」

シンガポールが抱える最重要課題の一つが「水資源不足」の問題です。その背景は、シンガポールの国土の狭さと土地の平坦さにあります。シンガポールは年間降水量が多いものの、土地が狭く平坦なために貯水容量が少なく、水の需要の半分をマレーシアからの輸入に依存せざるを得ない状況なのです。しかも、マレーシアとの水供給契約は、2061年までという期限付きです。そのため、シンガポール政府では、2060年までに国内の水生産量を約85%にすることを目標に、最重要課題として水資源対策に取り組んでいるのです。

データ活用で「水不足」を乗り越える

水資源問題の解決を目指すシンガポールが、その糸口として力を入れるのがデータ活用です。データを有効活用することで、水量などの最新状況を総合的に判断して改善に結びつけられるためです。たとえば、供給量の最適化による運用効率の向上や、市民向けの水使用量の見える化にデータが活かされています。

供給量の最適化に活かされるデータ

貯水池の水位データは、供給量の最適化や運用効率の向上に活用されています。シンガポールでは、十分な水量を確保するために、4つの方法で水を確保しています。1つ目が、地域の集水域からの水。2つ目が、高度浄水技術でリサイクルされた「ニューウォーター」と言われる水。3つ目が、輸入された水。4つ目が、海水淡水化による水です。そのそれぞれに対して貯水池の水位を監視カメラが常時監視し、可視化されたデータを利用することで、4種類の水源からの水供給を最適化しているのです

出典:The datasets that define our Smart Nation


市民への節約の動機付けに活かされるデータ

水道の使用量データは、市民自身が水道使用量をリアルタイムに確認できるアプリに活用されています。スマート水道メーターによって、市民は水の使用量を把握したり、水漏れの警告を受け取ることができるようになります。

また、シャワー中の水の使用量を確認できるスマートシャワーデバイスを使うことで、市民はシャワー中の水量をリアルタイムに確認できます。水の使用量をアプリで簡単に確認できるようにすることで、水の無駄使いを防ぎ、市民の意識や行動を変容する習慣作りにつなげているのです。

参考:Transforming PUB into the Smart Utility of the Future

「廃棄物問題」や「食料問題」の分野にまで及ぶデータ活用の波

シンガポールでは、廃棄物問題や、食料問題の分野にも本格的なデータ活用が進んでいます。限られた国土の中で、不要になった廃棄物をどう削減するのか、食料自給率をどう上げていくのかは、水資源問題と並行して現代都市シンガポールが直面する重要課題となっています。

廃棄物の削減 × データ活用

廃棄物のデータは、リサイクルの流れを生み出すために活用されています。廃棄物データを可視化することによって、リサイクル品として再利用するのです。その背景にあるのは、年々深刻化する廃棄物の問題です。2017年には年間770万トンの廃棄物が発生しました。これは40年前の7倍もの規模です。国土が狭いシンガポールでは、廃棄物の削減とリサイクルは非常に重要な問題として扱われており、2019年には「廃棄物ゼロ」のスローガンが提唱されました。

政府は、データを活用して廃棄物と資源を把握し追跡することで、その大部分を再利用できる仕組みが構築できると考えています。廃棄物のデータは常時監視され、大部分がリサイクル市場に回されます。廃棄物ゼロというビジョンの達成に向けて、無駄を削減し廃棄物量を減らす取り組みにデータが活かされているのです。

食料自給率 × データ活用

データは、食料自給率を高めるプロジェクトでも活用されています。限られた国土の中で効率性の高い農業を行うためには、データの活用による生産性向上の観点が欠かせません。シンガポールが最終的に目指すのは、現状10%の食料自給率を2030年までに30%まで増加させることです。そのために政府では、2019年に新機関としてシンガポール食品庁を設立し、低コストで成長を遂げるための農業技術ソリューションへの投資や、農業のための土地確保を計画しているのです。

活用されるデータは、供給可能な食料量、国民の食事の傾向、食料の輸入出量など多岐に渡ります。さらに、そのデータを分析することで、今後収穫が見込める作物の種類、収穫高を予測します。また、農家経営の観点では、低コストで高い生産性と利益を産むための仕組みの構築にもデータが活用され、スマート農業先進国であるオーストラリアのようにIT化された農業の形が目指されます。

まとめ:シンガポールのデータ活用の波はあらゆる分野へ広がる

データ活用が進むシンガポールの「スマートネーション」は、水資源問題、食料問題、ゴミ問題と多様な領域へと拡大しています。データの分析・活用は今や、現在の課題を分析する手段としてのみではなく、今後の国家戦略を考案するうえで欠かせない手段となりつつあるのです。データ活用時代とも言われる現代、データをいかに収集し、それを材料にどう合理的に判断するか、という視点は高まるばかりです。政府主導でスマートネーションへの挑戦を続けるシンガポールは、大きく動き出しています。

出典:The datasets that define our Smart Nation

グラファー Govtech Trends編集部

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