「電話ではすべての問い合わせに対応しきれないのではないか」と思ったことがきっかけに
——助成金の要件判定をオンライン化した「若年・子育て世帯住み替え支援判定ガイド」は、どのような仕組みなのでしょうか。
庄子:「若年・子育て世帯住み替え支援判定ガイド」は、2022年度から仙台市が実施する「若年・子育て世帯住み替え支援事業」の対象になるか・対象にならないかをオンラインで確認できるサービスです。市民は、スマートフォンやパソコン、タブレットなどのデバイスから、簡単な質問に回答していくだけで、助成金の対象かどうかを判定できます。
仙台市では、オンラインで質問に回答していくだけで、助成金の対象かどうかを判定できるサービスを用意した。市民は難しい説明を読まなくても、「はい」、「いいえ」と回答していくだけで、自分が対象かどうかを判定することができる。
——デジタル化に向けた取り組みをはじめたきっかけは何だったのでしょうか。
大友:市民や職員の負担を軽減したいと考えたことがきっかけとなりました。助成金を新たに始める場合、自身が支給要件に当てはまるかどうかが分かりにくいことで、申請者の負担が大きくなってしまうケースがよく見られます。一定の問い合わせがあることが見込まれるため、特に制度開始時には、職員にも大きな負担がかかります。当時は、電話ではすべての問い合わせに対応しきれないのではないかと懸念していました。このような状況の中、市全体でデジタル化に向けて取り組みを進める流れが後押しとなり、フルデジタルを最終目標に、デジタル化の検討をはじめました。
——仙台市では、どのような方針でデジタル化に取り組んでいますか。
大関:仙台市では2021年6月にDX推進計画を定め、「:D-Sendai」というキャッチフレーズのもとで、「デジタル技術でワクワクするまち」を目指した取り組みを進めています。「不慣れな方も含め、誰も取り残さない、常にひとを第一に考えたデジタル化」を念頭に、市全体で電子申請の拡充や、ワンストップ窓口など、市民の負担軽減に取り組んでいます。
——市全体の後押しを受け、住宅政策課と行政デジタル推進課との間で、どのような話し合いを行いましたか。
古瀬:市民や職員の負担軽減に向けて、まずはできるところからデジタル化を進めようという方向性で話し合いを進めました。今回の手続きは「問い合わせ」に関する負担が大きいため、庁内で既に導入することが決まっていた「Graffer 手続きガイド」が活用できるのではないかと考えました。
33時間分の問い合わせ工数削減を実現
——市民や職員の負担を軽減したいと考えていたのですね。「若年・子育て世帯住み替え支援判定ガイド」を導入したことによって、どのような効果がありましたか。
庄子:「若年・子育て世帯住み替え支援判定ガイド」を公開したことによって、問い合わせ業務の削減につながりました。実際、公開から約2カ月間で、400回以上の利用がありました。同じ内容を電話で回答する場合には、1件あたり5分程度かかるため、計算上、約33時間分の業務削減につながったといえます。
スマートフォンから助成金の要件判定ができる「若年・子育て世帯住み替え支援判定ガイド」によって、計算上、約33時間分の業務削減につながった。
——使い方に関して、市民からお問い合わせなどはありましたか。
庄子:「若年・子育て世帯住み替え支援判定ガイド」の使い方が分からないというお問い合わせはありませんでした。手続きガイドのアンケートでは、「分かりやすい」、「事前に確認できて助かります」などの反応があり、市民の役に立ったと感じています。
——助成金に対する問い合わせは減少しましたか。
大友:本年が初めての事業なので比較は難しいのですが、制度に関するお問い合わせは多く、「若年・子育て世帯住み替え支援判定ガイド」がなければ、さらに多くの問い合わせが発生したのではないかと思います。
都市整備局 公共建築住宅部 住宅政策課 企画係 主査 大友 充氏
庄子:電話で問い合わせをいただいた際の案内にも「若年・子育て世帯住み替え支援判定ガイド」を活用しました。要件に関する問い合わせの場合には、スマートフォンで簡単に確認できることを伝えることによって、電話対応の時間削減につながりました。対応する職員のスキルにかかわらず、市民に対してより正確な判定結果を伝えられるようにもなりました。
都市整備局 公共建築住宅部 住宅政策課 企画係 技師 庄子 大喜氏
構築期間は約2カ月。簡単な修正は数分で完了
——「若年・子育て世帯住み替え支援判定ガイド」を構築する際、住宅政策課と行政デジタル推進課でどのように役割分担を行ったのでしょうか。
末永:住宅政策課で用意した制度内容をもとに行政デジタル推進課でテスト環境を作成し、そちらをもとに住宅政策課で修正を加えていくという流れで進めました。
「Graffer 手続きガイド」は、専用のExcelを編集してアップロードするだけの操作で簡単に内容を更新していけるシステムです。一般的なシステムの場合、更新の都度外部の事業者への依頼が必要となるため時間を要してしまいますが、「Graffer 手続きガイド」は簡単な修正であれば数分で更新できました。分からない点はグラファーの担当者がすぐに回答してくれたので、スムーズに構築が進められたと感じています。
左から、まちづくり政策局 デジタル戦略推進部 行政デジタル推進課 課長 大関 守氏、係長 古瀬 直人氏、主事 末永 真一氏
——行政デジタル推進課で作成したテスト環境をもとに、住宅政策課ではどのように修正を加えていきましたか。
庄子:テスト環境をベースに課内の数名で検証を行いながら、少しずつ文章の表現を修正していきました。テスト環境でいろいろと試すことができたので、はじめてでも簡単にチャレンジできました。他の業務も並行しながら、約2カ月くらいかけて完成しました。
——文章の表現については、どのような点に配慮しましたか。
庄子:課内の検証では、市民にとってより分かりやすい文章となるように配慮しました。文章で説明しにくいものに関しては、画像を使用して、視覚的にも分かりやすく説明するといった工夫も行いました。
設問に画像を入れることによって、ぱっと見たときに対象エリアが分かりやすいように工夫されている。地図上の赤枠に加えて、ランドマークも記載されている。
——「若年・子育て世帯住み替え支援判定ガイド」の広報はどのように行いましたか。
大友:ポスター、チラシなどの紙媒体や、市の公式HPなどで広報を行いました。ポスターやチラシに二次元コードを大きく配置することによって、スマートフォンでアクセスしやすいように工夫しました。
スマートフォンからアクセスできるように、分かりやすい位置に二次元コードを配置したポスター。
今後はさらに「便利になった」と実感できる取り組みの実現へ
——今後はどのようなことに取り組んでいく予定でしょうか。
庄子:「若年・子育て世帯住み替え支援判定ガイド」について、今後はさらに内容や広報手段をブラッシュアップしていきたいと考えています。今回、制度の対象でないにもかかわらず申請が行われるケースも一部あったため、次回はこういったケースを少なくできるように検討したいと考えています。
大友:本年実施した取り組みに対してはしっかりと検証を行い、来年以降さらに市民の負担軽減につながるような施策につながるよう、検討していきたいと考えています。
——行政デジタル推進課では、今後どのようなことに取り組んでいきますか。
末永:「Graffer 手続きガイド」を活用することによって、市民がより簡単に、必要な情報にたどり着けるような仕組みを用意していきたいと考えています。例えば、災害時の情報提供などにも役立てられるのではないかと思います。また、構築したガイドは、手続きを管轄する課のページに分かりやすく掲載することによって、今後さらに市民に分かりやすい形で広報を行っていきたいと思います。
大関:今後、市役所全体でデジタル化を進めていくという上では、DX推進への意識の醸成が重要と考えており、そのために、実際にデジタル技術を体験したり共有したりできるような研修の機会を作り、職員の意識改革に取り組んでいます。本市が定めるDX推進計画のもと、市役所内の体制も整えながら、市民サービスの向上や業務効率化を進め、市民にも市役所職員にも「デジタルで便利になった」と実感してもらえるよう取り組んでいきたいと考えています。
取材・写真:佐竹 佳穂 / 文:東 真希(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名は取材当時のものです。)
仙台市が取り組む、助成金の要件判定サービスは「Graffer 手続きガイド」で実現することができます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしで分かりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。
グラファー Govtech Trends編集部
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