入学式当日の業務負荷軽減へ
——入学料をキャッシュレス化する前はどのように入学料を徴収していましたか。
新貝:キャッシュレス決済を導入する前は、保護者は入学式当日に入学料を現金で持参していました。保護者は、釣り銭のない状態で事前に入学料を準備したり、入学式当日に提出のためにブースで並んだりする必要があり、手間がかかっている状態でした。
教育改革・企画課 課長補佐(総括) 新貝 隆氏
門野:事務の面では、入学式当日に6箇所のブースを設けて入学料や提出物を回収していました。事務職員だけでは足りないため、多くの先生方の協力が必要でした。
回収後の現金については、当日中に銀行へ入金するため複数の職員に協力をあおいで、昼休み返上で3時間以上の確認作業を行っていました。金額に過不足があった場合は該当の保護者等に確認するために急いで教室に向かうなど作業は煩雑です。多額の現金を取り扱うため、事故のリスクとも隣り合わせでした。
大分県立別府鶴見丘高等学校 事務長 門野 秀一氏
——キャッシュレス決済の導入後はどのような変化がありましたか。
門野:「Graffer スマート申請」の決済機能を使用することによって、保護者はクレジットカードで支払えるようになりました。事前に支払いができるため、保護者の当日の負担は大きく軽減しました。
保護者は現金を用意することなく、事前にクレジットカードで支払いができるようになった。
——事務の面ではどのような変化がありましたか。
門野:別府鶴見丘高校の場合、キャッシュレス化によって入学式当日クラスごとに6箇所設けていた徴収用のブースが1箇所に削減できました。残った1箇所のブースでは、キャッシュレス決済を希望しない一部の保護者から現金を回収して領収書を渡す業務を中心に行います。そのため、これまで午後までかかっていた入学料に関する業務は午前中で完了するようになりました。
キャッシュレス化をきっかけに、入学式当日のほかの業務の見直しも行いました。例えば、提出物の回収については入学式会場にあるブースではなく教室で行うように変更しています。これらの変更によって入学式当日の受付業務はかなり効率的になりました。
保護者からは「とてもスムーズに決済できた」の声
——キャッシュレス決済を利用した保護者からはどのような反応がありましたか。
新貝:保護者からは「とてもスムーズに決済できました」「分かりやすくて、簡単に手続きができてよかったです」などの反応がありました。保護者にとって、入学式当日は慌ただしいものです。提出物が減少し、提出のためにブースで並ぶ手間がなくなったことによって、保護者の利便性が向上したのは大きなメリットだと感じました。
入力項目を可能な限り少なくしてシンプルで分かりやすい画面としたことで、保護者が操作に困ることは多くなかったのではないかと考えています。
保護者からは良い評価が届いた。
——何割くらいの保護者がキャッシュレス決済を利用したのでしょうか。
新貝:先行導入した高校では平均83%の保護者がキャッシュレス決済を利用しました。多い高校では約9割がキャッシュレス決済を選択しており、想像よりも多くの保護者に利用いただいた印象です。
多くの保護者がキャッシュレス決済を利用した。
——現場の先生方からはどのようなメリットがありましたか。
門野:入学式当日に現金を集めるのは負荷のかかる業務だったため、先生方にとっても受付業務がスムーズになったという実感につながったと考えています。
——事務職員が行うシステム操作の負担はありませんでしたか。
門野:事務職員が行うシステム操作としては、管理画面にログインしてステータス変更の処理を行うだけのため非常に簡単でした。私自身もITにそれほど明るいわけではないのですが、1件あたりの操作は数秒で完了しました。ステータスを変更した後は、最終的に支払い済みの方のデータをダウンロードして、入学者名簿と突き合わせて確認すれば完了です。業務改善によって捻出された時間を使って、より対応が必要な家庭の支援に力を入れることができるようになりました。
県立43校すべてに段階的にキャッシュレス決済を導入
——すべての県立高校でキャッシュレス決済を導入したのでしょうか。
新貝:キャッシュレス決済の導入は段階的に進めており、最終的には入学料の回収が必要な、分校・定時制を含むすべての県立高校で導入予定です。まずは2022年度に1校のみで試験導入を開始。その結果をもとに、現場の声を取り入れながら、2023年度には12校、そして2024年度には43校で導入予定です。
大分県では段階的にキャッシュレス決済を取り入れた。
——高校に対する説明は、どのように進めていったのでしょうか。
新貝:対象となる高校に対しては、説明会や専用のマニュアルを通じて丁寧な説明を行いました。説明会では一方的な説明ではなく、対話を通して現場の意見を取り入れながら進めることを心掛けました。
——事務職員向けのマニュアルにはどのような内容を記載しましたか。
新貝:マニュアルには、キャッシュレス化を進める理由や、詳細な操作方法、よくある質問などを掲載しました。実際の画面を交えて丁寧に記載することによって、現場の負担が少しでも軽くなるように工夫しました。
現場用に丁寧なマニュアルを用意した。
——現場では、キャッシュレス化による混乱はありませんでしたか。
門野:説明会やマニュアルを通じて理解を深めることができたので、特に混乱はありませんでした。マニュアルはかゆいところにも手が届くような非常に丁寧な内容だったので、「このマニュアルを確認すれば、操作に困ることはまずないだろう」と感じました。
今後は保護者への周知を工夫していく
——今後はどのような取り組みを行っていきますか。
門野:入学予定者への説明時に行う、入学料の支払いに関する説明をさらに工夫していきたいと考えています。キャッシュレス決済を利用しなかった保護者の一部には、入学料の支払いがあることがしっかりと伝わっていないケースも見受けられたためです。今後、周知を改善していくことによって、より多くの保護者にキャッシュレス決済を活用してもらえるように取り組んでいきます。
高田:教育改革・企画課では、2024年度の43校への拡大に向けた準備を丁寧に行っていきたいと考えています。私自身、着任してまだ間もないため、現場の意見を聞きながら、できることを一つ一つ進めていきたいと考えています。
教育改革・企画課 主事 髙田 隼希氏
新貝:今後も、利用者や現場との情報交換を積極的に行いながら、入学料以外のキャッシュレス化についても、検討・拡大を進めることによって、保護者のさらなる利便性向上や現場の負荷軽減に取り組んでまいります。
取材・写真:佐竹 佳穂 / 取材・文:東 真希(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)
大分県が取り組む、キャッシュレス決済は「Graffer スマート申請」によって実現できます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしで分かりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。
グラファー Govtech Trends編集部
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