【DX推進 デジタル化のヒント】2024年度末までに「100%電子化」を目指す大分県の進め方
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【DX推進 デジタル化のヒント】2024年度末までに「100%電子化」を目指す大分県の進め方

2022.11.14 Mon

行政手続きの100%電子化を目指して、2020年度から取り組みを進める大分県。デジタル化を急速に進める中、職員の意識改革や人員の確保をどのように行っているのでしょうか。

大分県 1,123,852人(令和2年国勢調査)

2024年度末までに「100%電子化」を目標に推進

——大分県では、デジタル化に向けた取り組みをどのように進めていますか。

小石:大分県では、「県民の利便性・負担軽減を重視し、行政の都合を排除すること」を明確に示しながら、「県民目線の行政サービス」と「行政事務の効率化」の実現を目指しています。

総務部 電子自治体推進室 参事監 兼 室長 小石 昭人 氏

小石:具体的な取り組みとしては、2024年度末までに手続きを100%オンライン申請に対応することを目標としています。2020年度末には押印を廃止。2021年度には総務部電子自治体推進室を設置しました。

大分県では2024年度末までに行政手続きを100%電子化することを目指して、2020年度から取り組みを進めている。

年間申請件数が100件以上か、100件未満かで推進方法を分ける

——全手続きのオンライン化は、決して簡単なことではないのではないかと思います。どのようなスケジュールで実現に向けて進めていますか。

木口:まずは、2020年度に手続きの棚卸しを行いました。その結果をもとに、年間の手続き数が多いものから段階的にオンライン化を進めています。

先行して、年間申請件数100件以上の手続きについて、2023年度末までにオンライン化する計画です。年間申請件数100件未満の手続きについては、2024年度末までに対応する計画です。

年間申請件数が100件以上、100件未満で優先度を分けている。

——最終的にはどのくらいの数の手続きをオンライン化する計画ですか。

木口:最終的には、申請数がゼロの手続きを除く、約3,500手続きをオンライン化する計画です。2021年度には対象の手続きについて、所管する所属長にオンライン化の予定時期を決めてもらったうえで、スケジュールを一覧に取りまとめました。

担当課ごとに、すべての手続きをオンライン化するための具体的なスケジュールを立てたうえで取り組みを進めている。

外部人材を活用しながらオンライン化を支援

——自治体におけるデジタル化の障壁として「デジタル人材不足」が挙げられています。大分県では、デジタル人材の確保に関してどのような取り組みを行っていますか。

木口:大分県では、電子自治体推進室においてBPRアドバイザーと担当者を、会計年度任用職員として計4名配置しています。

——BPRアドバイザーは、どのような業務を担当しているのでしょうか。

木口:BPRアドバイザーは、担当課との調整やデジタル化の支援、進捗管理などを担当しています。もともと行政関連のシステムベンダーで勤務経験のある方を採用し、この方を中心に担当課との調整をスムーズに進めています。

——その他の担当者は、どのような業務を担当しているのでしょうか。

木口:その他の担当者は、年間申請件数が100件以上の手続きの申請フォームについての作成支援を行っています。また、年間申請件数100件未満の手続きについても、担当部門へのアドバイスや業務フローの見直し支援などを担っています。

——担当課の職員に向けた研修などは行っていますか。

木口:電子申請システムの使い方については、グラファーが開催している合同研修への参加を促しています。あわせて、県独自に職員向けの手順書や解説動画を用意したり、優良事例の共有などを行ったりすることによって、年間申請件数が100件未満の手続きについても、担当課の職員自らが、申請フォームを作成できる環境を整えています。

——申請フォームの作成支援や研修といった支援を行うことによって、オンライン化は進んでいますか。

木口:各担当課においては、着実にオンライン化が進んでいます。その追い風となったのが、ノーコードで申請フォームが作成できる「Graffer スマート申請」の存在です。従前のシステムもノーコードではありましたが使いにくく、なかなか職員に浸透しませんでした。「Graffer スマート申請」の導入時も不安を感じる職員がいましたが、テスト環境で実際にフォームを作ってもらったり、部局ごとに説明会を行ったりすることで、職員でも簡単で気軽に使いこなせるシステムだと理解してもらいました。現在では、各担当課で作成が進んでいます。

総務部 電子自治体推進室 参事(総括) 木口 智広 氏

申請者が「個人中心」か「法人中心」かで、申請フォームの設計思想を変えた

——申請フォームを作成するときには、どのようなことに配慮しましたか。

木口:利用者が便利になるような申請フォームにするように配慮しました。例えば、申請フォームを利用して手続きを行うのが「個人」なのか「法人」なのかによって、申請フォームの設計思想を変えています。

——申請者が「個人中心」か「法人中心」かで、申請フォームには、どのような違いがありますか。

木口:個人の場合には、スマートフォンからの申請を前提とした申請フォームとなるようにしています。そのため、「フォームへの入力」や、「写真・画像の添付」といった操作を前提とした申請フォームとなるよう全体を設計します。

一方で法人の場合には、パソコンからの申請を前提としています。法人では申請内容をExcelやWordなどの様式で作成し、社内稟議(りんぎ)を回した後に申請するようなケースが多いと考えられます。そのため、フォームへの入力は基礎情報のみにして、それ以外はそのまま添付ファイルで提出できるように設計します。

ただし、申請を受け付けた後の処理で、申請情報をデータ連携する場合には、データはフォームに入力してもらいたいこともあります。そのため、データ連携による省力化効果が大きい項目については、フォームへの入力を前提として設計しています。

利用者が「個人中心」なのか「法人中心」なのかに応じて、申請フォームの設計思想を分けて作成している。

——申請フォームを作成する際、ほかに工夫していることはありますか。

木口:各部署が似たような申請を受け付けている、財産貸し付け、目的外使用、後援・共催については、庁内でフォームをコピーするようにしています。フォームをゼロから作るのではなく、コピーしてから作ることによって、より効率的にオンライン化を進めることができます。

——確かに、同じような申請フォームは、コピーして使うことで時間を大きく短縮できますね。

木口:また、申請フォームに記載する内容については、フォーム単体で考えるのではなく、県の公式ホームページの案内とセットで考えるようにしています。利用者にとってはホームページで申請方法を確認することになるので、ホームページを充実させることが問い合わせを減らすことにもつながります。

本人確認にマイナンバーカードを活用

——オンライン化とあわせて、どのような取り組みを行っていますか。

木口:これまで本人確認に住民票の写しや印鑑証明書が必要だった手続きについて、代替手段としてマイナンバーカードによる本人確認が行えるようにする取り組みを行っています。

例えば住民票の写しにより、基本4情報の確認を行っている手続きについては、マイナンバーカード表面の写真で本人確認を行い、印鑑証明書による確認が必要な手続きについては、マイナンバーカードの公的個人認証機能を行っています。

マイナンバーカードの表面の画像や公的個人認証による本人確認を推進している。

今後は、継続的な改善を行いながら、100%を目指してオンライン化を進めていく

——今後はどのように取り組みを進めていく予定ですか。

木口:今後も「県民の利便性・負担軽減を重視し、行政の都合を排除すること」を念頭に、手続きのオンライン化や職員の意識改革、申請フォーム等の改善を行っていきたいと考えています。改善に当たっては、利用者からのアンケートをもとにしながら、より使いやすく、分かりやすいシステムを目指していきます。

また、電子決裁やデータ連携などを通じて、内部業務の効率化にも取り組んでいきたいと考えています。申請の受け付けのみをオンライン化しても、運用上、紙で印刷してシステムに入力するようでは、職員にとってデジタル化のインセンティブが少ない状態となってしまいます。データ連携を推進して、庁内全体のデジタル化や業務効率化に取り組んでいきます。


(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名は取材当時のものです。)

取材:本山 紗奈 / 文:東 真希 / 写真:佐竹 佳穂 (Govtech Trends編集部)

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グラファー Govtech Trends編集部

Govtech Trends(ガブテック トレンド)は、日本における行政デジタル化の最新動向を取り上げる専門メディアです。国内外のデジタル化に関する情報について、事例を交えて分かりやすくお伝えします。

株式会社グラファー
Govtech Trendsを運営するグラファーは、テクノロジーの力で、従来の行政システムが抱えるさまざまな課題を解決するスタートアップ企業です。『プロダクトの力で 行動を変え 社会を変える』をミッションに掲げ、行政の電子化を支援しています。

大分県

人口:
112.39万人(令和2年国勢調査)

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Graffer スマート申請