国内事例
オンラインによる保育無償化ガイドの提供で、問い合わせ数が約50分の1に。「驚くほど問い合わせが減った」柏市の取り組み
2022.04.12 Tue
「保護者からの電話や窓口での問い合わせが多く、以前は業務がなかなか進まなかった」。このような課題に対して柏市では、「Graffer 手続きガイド」を利用して、スマートフォンやパソコンから簡単な質問に回答していくだけで、保育無償化の対象かどうかを判断できる「無償化判定ガイド」等を作成しました。ホームページ改修と併せた取り組みの結果、問い合わせ数は約50分の1に減少し、問い合わせ内容にも変化があったといいます。
千葉県柏市:426,468人(令和2年国勢調査)
問い合わせ数が約50分の1に減少
——柏市の「無償化判定ガイド」や「無償化の申請ガイド」とはどのようなものですか。
「無償化判定ガイド」は、幼児教育・保育の無償化について、保護者がスマートフォンやパソコンから簡単な質問に回答していくだけで、制度の対象となるかどうかが判定できるサービスです。「無償化の申請ガイド」は、無償化の申請時に必要となる書類を洗い出すことができるサービスです。
保護者は、数問の質問に回答すると、自分が制度の対象かどうかが判定できる。
——ガイドを構築する前は、どのような課題があったのでしょうか。
ガイドを構築する前は、問い合わせが多く、ピーク時には1日100件を超えることがありました。問い合わせにかかる時間は、1件あたり10〜30分程度です。そのため職員4人で窓口と電話対応を行うと業務に取りかかれないことも多く、課題を感じていました。保護者の方にも、不明点を解消するために窓口に足を運んでいただいたり、電話をいただいたりしており、市民サービスの面で、よりよい方法がないかと考えていました。
——事務や市民サービスの面で課題を感じていたのですね。ガイドを構築したことによって、どのような変化がありましたか。
ガイドの構築によって、問い合わせ数が約50分の1に減少しました。これまでピーク時にあった1日100件を超える問い合わせは、ガイドの構築後は、1日2〜3件に減少しています。
ガイドの構築後、問い合わせが大幅に減少した。
——問い合わせ内容に変化はありましたか。
ガイドの構築後、問い合わせ内容は、より具体的なものに変化しました。以前は、例えば「対象内か対象外か」「必要書類は何か」といった内容が多かったのですが、ガイド公開後には「就労証明書の内容を相談したい」「他市の施設を利用したい場合にはどうなるか」など、より具体的な内容に変化しています。多くの保護者がガイドを見て疑問点を解消した結果、このような変化があらわれたのではないかと考えています。
初期構築にかかった期間はトータルで1〜2週間
——ガイドの構築はどのように進めたのでしょうか。
まずはフローチャートを作成し、そのフローチャートをベースにガイドを構築しました。「Graffer 手続きガイド」は、エクセルシートを入稿するだけで構築できます。そのため、構築自体は1日もあれば終わりました。その後、庁内でのテストや修正、条件の並び替えなどに数日をかけ、トータル1〜2週間で公開準備が完了しました。
こども部 保育運営課 入園担当 施設等利用給付班 主任 平井 明日香氏
——柏市のガイドは、多くの保護者に閲覧されているうえに、高い評価を得ています。設問を考える際には、どのような点を意識したのでしょうか。
保護者の「回答しやすさ」は意識しています。中でも、「設問数が多くならないようにする」という点については、優先度を高くして対応しました。設問数が5問程度であれば、ストレスなく回答できると想定して、できるだけ最小限の設問数で正しい回答にたどりつけるように設計しました。
柏市のガイドは約95%が「とても分かりやすい」または「分かりやすい」と回答している。
——保護者が回答する設問数を最小にするというのは、工夫が必要そうです。
設問を考える際に役に立ったのが、フローチャートです。フローチャートは、「日頃の業務で問い合わせを受けた際、どういった順番で説明しているのか」といった観点を取り入れて作成しました。その流れを念頭に置きながら構築を進めることによって、設問の漏れを防ぎ、ガイドをシンプルにすることができたと考えています。
市のホームページをリニューアルし、ガイドを効果的に周知
——柏市のガイドは、毎月多くの保護者に閲覧されています。保護者にガイドを周知するために工夫したことはありますか。
市のホームページをリニューアルしたうえで、「無償化判定ガイド」や「無償化の申請ガイド」は、幼児教育・保育の無償化に関するページの一番上に掲載しました。実際に電話や窓口で問い合わせを受ける際、「自分は対象か、対象でないか」という問い合わせが多かったため、市のホームページ上でも、まずは保護者が知りたいことをはじめに記載しようと考えました。
ページの一番上に「無償化判定ガイド」や「無償化の申請ガイド」へのリンクを配置している。
——情報の掲載順は、自治体が言いたい順ではなく、あくまで保護者が知りたい順にしたということですね。
市のホームページが、保護者にとってより読みやすくなるよう意識しました。例えば、見出し部分では役所言葉を使わず、「無償化ってなに?」のように意図的に口語的な表現を用いました。また、文字だけではなく画像もあわせて掲載することによって、忙しい保護者がさっと見ただけでイメージをつかみやすいようにしています。
——保護者に「まずは読んでみよう」と思ってもらうことを大切にされたのですね。
「役所のページは難しい」「とっつきにくい」と感じると、正しい情報を掲載していてもなかなか読んでもらえません。読んでもらえないと、その分、問い合わせは増加してしまいます。そのため、まずは少しでも親しみを持って読み始めてもらうことを大切にしました。
——他に保護者への案内で工夫したことはありますか。
保護者に配布するリーフレットに関しても、保護者の目線で、迷わずに情報にたどり着けるようにすることを意識しました。例えば、2次元コードを目立つようにレイアウトして、より詳細な市のホームページに誘導するようにしています。2次元コードは、せっかく掲載しても印刷状況が悪いとアクセスできないこともあるため、その点にも配慮しています。
——今後はどのようなことに取り組む予定ですか。
保護者にとってより分かりやすくなるよう、ガイドや市のホームページの改善を継続的に行っていきます。あわせて、業務負荷の軽減につながる施策も積極的に行っていきたいと考えています。
取材:柏野 幸大、本山 紗奈 / 写真・文:東 真希 (Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名は取材当時のものです。)
柏市が取り組む、保育無償化ガイドは「Graffer 手続きガイド」によって実現することができます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしでわかりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。
グラファー Govtech Trends編集部
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