国内事例
電話の自動発信で業務時間を6分の1に削減した鹿屋市立図書館の取り組み
2023.10.16 Mon
図書館で課題となっている「未返却本」。一軒一軒訪問したり、はがきで督促を行ったりといった対策を取る図書館もあるといいます。鹿児島県鹿屋市立図書館では、「Graffer Call」を利用することによって未返却本に対する電話連絡を自動化。図書の延滞連絡にかかる業務時間を約6分の1に削減すると同時に、督促したもののうち約7割の資料返却を実現しました。
図書の延滞連絡にかかる業務時間を約6分の1に
——「自動音声による電話案内」をどのような業務に利用していますか。
貸し出した本が返ってこない「未返却本」に対する督促連絡に、自動音声による電話案内を利用しました。鹿屋市立図書館では、次の予約が入っている図書や、移動図書館で延滞している図書、長期延滞の図書に対して自動音声で発信を行っています。
鹿屋市立図書館では、主に3種類の対象者に対して自動音声による電話案内を実施した。
——「Graffer Call」を導入したことによって、業務にはどのような変化がありましたか。
「Graffer Call」を導入したことで、一度にかけられる対象者が増加しました。以前は職員が電話をかけていたため、対応できる時間や件数が限られており、対象者が多いときには電話がかけ終わらないこともありました。電話がつながらないことも多く、つながる可能性のある時間に何度もかけたり、折り返し電話に対応したりと、業務も煩雑になっていました。しかし「Graffer Call」を導入したことによって、1回で約100件の電話をかけられるようになりました。
鹿屋市立図書館 館長 指定管理者株式会社図書館流通センター 樫田 博史氏
——自動電話によってどのくらいの図書が返却されましたか。
次の予約が入っている図書や移動図書館の図書については、自動電話を行ってから1週間で平均で5割、多いときには9割の返却につながりました。「Graffer Call」を導入したことによって、これまで電話をかけられていなかった対象者にも電話できるようになったため、全体として返却数の増加につながっているのではないかと考えています。
——長期延滞の図書についても返却につながりましたか。
長期延滞の図書については、自動電話から1週間で約4割が返却されました。期間別に分類すると、1年以内延滞の図書については約3割から5割、3年以内延滞の図書については約1割の返却につながりました。
自動電話によって、多くの本の返却につながった。
これまでは長期延滞の図書については十分な督促が行えていませんでしたが、自動電話によって対象者に連絡することができるようになりました。将来的には、郵送による督促の手間や費用の減少にもつながるのではないかと考えています。架電数や返却率などを数字で確認できるようになったのも大きな変化です。
——自動電話によって、職員の業務にはどのような変化が見られましたか。
督促電話のための業務時間が、以前の6分の1に減少しました。以前は電話のために毎日1時間を確保していましたが、現在では週に1時間で済むようになっています。電話対応の効率化で空いた時間は、イベント準備など通常業務以外の業務に充てられるようになりました。
自動電話は、職員の業務効率化にもつながっている。
——職員が「Graffer Call」を使って自動電話をかけるときの実際のフローを教えてください。
職員は、まず延滞している対象者の電話番号をシステムから抽出して、重複している電話番号を省くなど、リストの編集を行います。その後、リストを「Graffer Call」に取り込んで発信日時を設定すれば操作は完了です。
1回約30分の操作で、100件以上の自動電話を行うことができる。
——電話がつながらなかった場合にはどうするのでしょうか。
電話がつながらなかった場合には「Graffer Call」でSMSを送信します。当初は電話とSMSを同時に発信したり、SMSを中心に送信したりと試行錯誤しましたが、最終的には自動電話がつながらなかった場合にSMSを送信する形になりました。
当初は「機械音声に抵抗があるのではないか」という不安もあった
——業務の大幅な効率化につながっているのですね。市民からはどのような反応がありましたか。
導入前は「高齢者を中心に、機械の音声よりも人間による電話を希望するのではないか」という先入観もありましたが、実際には自動電話に対する苦情はなく、「返却していない本の題名を忘れてしまったので教えてほしい」といった照会がありました。
——職員はどのような反応でしたか。
職員からは、「人が電話をしなくても返却につながる様子が数値で見えて、最終的に効果を実感した」「業務が軽減された」といった反応がありました。効率化を主な目的として導入したため、効果が実感できたのは一つの成果でした。
利用者にとって分かりやすいようにメッセージの内容を工夫
——電話でアナウンスする文章はどのように作成しましたか。
他自治体の事例を参考に、音声で聞いたときに分かりやすいような文章になるように工夫しました。書籍の題名については本人以外にはお伝えしていないため、アナウンスする文章には含めずに、本人が図書館のウェブサイトからログインすると確認できるようにしています。
——「Graffer Call」の中で、特に便利だと感じる機能はありますか。
一度の操作で数百件と、大量に電話をかけられるのが便利だと感じています。また、折り返し電話の場合に、発信した用件が自動音声で再生されたり、電話に出られなくてもSMSが送られて確認できたりするのも、利用者にとって利便性が高く助かっています。
発信先のリストを取り込んだ後、発信時間を任意の時間に設定できる点も便利な機能です。リストの編集や取り込みについては空いている時間に対応して、実際に架電するのは夕方などのつながりやすい時間に設定する運用ができるためです。これまでは督促電話をかけるタイミングが夕方の繁忙タイミングと重複していたため、余裕のない中での業務となっていましたが、現在ではゆとりを持って対応することができるようになりました。今後も「Graffer Call」のさらなる進化に期待しています。
取材・写真:佐竹 佳穂 / 取材・文:東 真希(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)
鹿屋市立図書館が取り組む、自動音声による電話案内は「Graffer Call」によって実現できます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしで分かりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。
グラファー Govtech Trends編集部
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