神戸市が「税証明書のインターネット申請」で目指す、来庁不要な行政サービスとは
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神戸市が「税証明書のインターネット申請」で目指す、来庁不要な行政サービスとは

2021.03.29 Mon

スマート自治体の実現に向け、行政手続きのデジタル化を重点項目の一つに位置付けている神戸市。その神戸市が新たに取り組んだのが「税証明書のインターネット申請」です。来庁しなくてもスマートフォンやPCから、所得課税証明書や納税証明書を取り寄せられるサービスを2021年1月に公開。利用者から「非常に便利」との反響を呼んでいます。税証明書のインターネット申請は一体どのようなサービスなのか。所得課税証明書を担当した市民税課、納税証明書を担当した収納管理課の方々に詳しく伺います。(2021年5月18日更新)

聞き手:本山 紗奈、東 真希(Govtech Trends編集部)

税証明書のインターネット申請の仕組みとは

——神戸市がはじめた税証明書のインターネット申請は、どのようなサービスなのでしょうか。

桐井:税証明書のインターネット申請は、所得課税証明書や納税証明書をスマートフォンやPCから申請できるサービスです。利用者は、各種行政サービスを受けるための申請や、金融機関で融資を受ける際に必要となる税証明書を、インターネット上で簡単に取り寄せられるようになりました。

左から、所得課税証明書を担当する行財政局 税務部 市民税課 税務サービス係 係長 桐井 靖則氏、中嶋 真一郎氏

桐井:利用方法としては、利用者がインターネット上で必要な情報を入力して、手数料をクレジットカードで決済すると、自宅に税証明書が郵送で送られてくるといった流れです。来庁する必要は一切なく、利用者は自宅や外出先から24時間、税証明書を申請できます。

図1:税証明書インターネット申請の流れ
申請は数分で完了。インターネットで買い物をする時のような感覚で、24時間いつでも所得課税証明書や納税証明書が取り寄せられる。申請後は、申請内容に不備がなければ、概ね数日で税証明書が利用者の手元に届く。

——郵送申請やコンビニ交付サービスと比較すると、どのような違いがありますか。

桐井:郵送で申請する場合には、郵便局で定額小為替を手数料として購入して、申請書とあわせて送付するといった手間がかかります。コンビニ交付サービスの場合には、所得証明書しか取得できない、直近2年分しか取得できないなどの制約があります。一方、インターネット申請は、郵便局まで行く必要はありません。申請書に記入する手間も、返信用封筒や切手を用意する手間も、利用上の制約もないため、大きな導入メリットを感じています。

利用者や職員からは「非常に便利」の声

——利用者からは、どのような反応がありましたか。

桐井:利用者からは「非常に便利だった」という声があがっています。他にも「遠方からでも取り寄せられたのがよかった」「小さい子どもがいるので助かった」「初めてインターネット申請を行ってみて、便利だった」といった声が届きました。インターネット申請を利用した方の約4割は神戸市内、残り6割が市外からの利用者です。これまでは、市外にお住まいの方が郵送申請を利用するケースが多かったのですが、インターネット申請は、市内に住む方にも利用されていることから、利便性が高いことが分かります。

——利用方法に関するお問い合わせはありましたか。

中嶋:システムなどの利用方法に関するお問い合わせは、現時点ではほとんどありません。サービスの公開前には、操作方法が分からないといった質問が来ると想定していましたが、実際にはなかったので安心しました。

——職員の反応はいかがですか。

中嶋:事務オペレーションを担う職員からは、「郵送申請と比較すると、申請書の記載不備が少なくなり、それに付随する業務量が減った」という声があがっています。郵送の場合には、申請書への記入漏れや不備等が発生しますが、インターネット申請の場合には、入力時点でシステムによる自動チェックが入ることで記載の不備が減るためです。手書きの文字が読みにくいといったこともありません。郵送申請では不備があった場合に、利用者に電話等で連絡して確認を行う必要が出てきますが、インターネット申請ではこの電話確認が減ったというメリットがあります。

「税証明ならでは」の事務オペレーションに対応したシステム

——税証明を申請する業務では、申請後に手数料が変更となる場合があるかと思います。このようなケースに対して、システムではどのように対応するのでしょうか。

《申請後に手数料が変更となる場合とは:所得課税証明書や納税証明書の申請では、申請内容を審査した結果、追加で手数料が発生する場合があります。たとえば、年度の捉え方を誤っていたり、固定資産税の納税証明書で件数の数え方を誤っていたりするようなケースです。》

廣田:決済後に手数料が変更となる場合には、追加決済が行えるようになっています。たとえば、利用者が申請時には300円で決済し、審査後に実際には900円かかることが判明した場合には、残り600円部分だけをクレジットカードで追加決済することができます。

桐井:これまで郵送申請で追加料金がかかる場合には、利用者に再度郵便局に行って定額小為替を購入して郵送してもらう必要がありました。一方、インターネット申請ではこのような手間がかからないため、利用者の負担を大きく軽減することができるのです。

中嶋:窓口申請の場合には、利用者との会話の中で申請不備などに伴う金額変更のやりとりを行っていますが、インターネット申請ではそれができません。そのため、追加決済が簡単に行えるようにすることで、利用者の負担を少なくして簡単に手続きが行えるように工夫しました。

インターネット申請の利便性を高めるための工夫とは

——「利用者の負担を軽減する」という観点を重視されているのですね。利用者が入力する画面の中で、特に工夫した点を教えてください。

廣田:画面全体を通して、余分な情報をできるだけ省いて、利用者が本当に必要な情報に目を向けてもらえるように配慮しました。

左から、納税証明書を担当する、行財政局 税務部 収納管理課 収納指導担当 西口 友里氏、係長 廣田 美穂氏

廣田:例えば、今回納税証明書のインターネット申請で対応したのは個人の申請で、法人の申請には対応していません。そこで画面には、対象者が「個人の申請者である」ことを端的に記載しました。長い文章で記載するのではなく、ひと目で理解できるように短い文章で記載しています。インターネット上では、利用者は文章の全てを読んでくれるわけではないためです。窓口では口頭でフォローできていた部分も、インターネット上では複雑な内容を読み解いてくれるわけではありません。あれもこれもと漏れなく記載したくなるところですが、余分な情報が多すぎても読まれません。このような工夫によって、実際に法人からの申請は発生せず、意図通り、個人からの申請が届いています。

西口:余分な情報をできるだけ省くといった観点で、「大多数の利用者にとって理解しやすいようにする」といったポイントにも配慮しました。たとえば手数料の部分では、まずは大多数の方が必要としている情報である「証明書手数料(300円)と郵送料(84円)の合計額がかかること」を伝えて、補足的に「税目・年度・区が複数にわたる証明書を請求する場合」の料金を表示しました。さらに「詳しくみる」をクリックすると、より詳細な情報を確認することができます。このように段階を分けて情報を表示することによって、郵送申請では分かりにくい料金計算について、追加料金が発生しないような工夫を行いました。


今後はさらに範囲を拡大。より多くの利用者に使ってもらえるようにしていく

——次はどのようなことに取り組んでいく予定でしょうか。

桐井:今後は、より多くの利用者に、来庁しなくても自宅でできる行政サービスを提供できるように認知を広げていきます。作って終わりではなく、利用を拡大していくことが大切だと考えています。

廣田:車検用の納税証明書や、法人の納税証明書に対応することも検討していきます。代理人の申請を認めるのかなど、検討しなければならない問題があるため、一足飛びに解決する話ではありませんが、対応できるものから順に電子化を進めていきたいと考えています。

写真:本山 紗奈 / 文:東 真希 (Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名は取材当時のものです。)


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グラファー Govtech Trends編集部

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