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2020.12.07 Mon

オンライン申請の活用で申請不備を防止。9割以上の利用者がオンラインで申請した神戸市デジタル化プロジェクトの詳細

利用者の9割がオンラインで申請。複雑な計算を含む申請にも関わらず、簡単に申請できて計算ミスが発生しない——。この、利用者目線と職員目線を両立させる導入プロジェクトをリードしたのが、神戸市家庭支援課の山口係長と、業務改革課の田中係長のお二人です。お二人は、オンライン申請の導入をどのように進めたのでしょうか。オンライン申請による効果とあわせて、庁内で行った調整や、利用者からの反応についても詳しくお聞きしました。写真背景:神戸ミューラルアートプロジェクト、聞き手:本山 紗奈、東 真希(Govtech Trends編集部)

オンライン申請の活用で申請不備を防止。9割以上の利用者がオンラインで申請した神戸市デジタル化プロジェクトの詳細

オンライン申請の活用で計算ミスなどの申請不備を防ぐ。

——今回オンライン申請を導入したのは、どのような制度なのでしょうか。

山口:オンライン申請を導入したのは、2020年10月から開始した神戸市の新制度である「ひとり親家庭高校生等通学定期券補助事業」です。

神戸市 こども家庭局 家庭支援課 ひとり親家庭支援担当係長 山口 友子氏

ひとり親家庭高校生等通学定期券補助事業」とは
ひとり親家庭の高校生等が購入した通学定期券の購入費用を全額補助する、神戸市独自の制度です。対象者は通学定期券を購入した後にサイト上から申請することで、補助を受けることができます。子どもたちが高校の通学費用を心配しなくても学校に通える環境を整え、自分の将来に夢や希望をもてるようにすることで、子どもたちの将来の自立をサポートすることを目的に、2020年10月1日から開始されました。

田中:新しく制定した制度ということで、検討初期は、紙で運用することを前提に制度を検討していました。しかし具体的に検討を進めていくと、デジタルに馴染みのある30代から50代の保護者が補助対象者の中心であったことや、新制度のため紙からデジタルへの運用変更の必要がなかったことから、オンライン申請が利用できるのではないかと考えました。

図1:利用者の年代
利用者の年代としては概ね、40代が6割、50代が2割、30代が1割程度。比較的デジタルに馴染みがある世代であることからも、オンライン化が検討しやすかった。

田中:そこで業務改革課から家庭支援課に「オンラインで受け付けられるのでは」と投げかけたことを機に、導入に向けたプロジェクトがスタートしました。

神戸市 行財政局 業務改革課 担当係長 田中 純子氏

——「ひとり親家庭高校生等通学定期券補助事業」は、どのような特徴がある申請なのでしょうか。

田中:「ひとり親家庭高校生等通学定期券補助事業」の申請には、ある程度複雑な金額の計算が必要となります。対象者は、購入済みの定期券の金額や期間をもとに、補助の対象となる金額を計算して申請を行う必要があります。この申請をすべて紙で受け付けた場合、多くの計算ミスが発生することが想定されます。利用者への負担を鑑みると、オンライン申請によって負荷を軽減することが適切であると考えました。

——実際に申請開始後は、どのくらいの利用者がオンライン経由で申請しましたか。

山口:9割以上の利用者がオンライン経由で申請を行いました。開始1週間で1000件を超える申請があったことから、狙い通り多くの方にオンライン申請を活用いただくことができたと言えます。残りの1割は、いくつかの理由によりオンライン申請が行えなかったため、郵送による手続きを行いました。メリットを感じていただいたことで、結果として、多くの方に利用いただくことができたと考えています。

図2:オンライン申請の割合

——実際にオンラインで申請を受け付けてみて、申請不備の防止にはつながりましたか。

山口:オンライン申請を活用することで、申請時に発生する計算ミスなどの不備を防ぐことができました。オンライン申請の自動計算機能を活用することで、利用者は、複雑な計算を自ら行うことなく申請できるためです。申請の際に利用者は、購入した定期券の金額や、対象となる期間といった情報を入力するだけで、補助金額が自動で算出されます。自動計算によって申請上の不備が発生しないようにすることで、後続業務においても、業務工数を大きく削減することができます。


 図3:自動計算イメージ

——他にはどのような効果がありましたか。

田中:審査完了後に利用者に送付する決定通知書の発送コストを、約8割削減することができました。オンライン申請の画面上で、決定通知書を郵送するか、データ版で受け取るかを利用者自身が選択できるようにしたところ、約8割がデータ版を希望しました。結果として、決定通知書を紙で送付する際の用紙や封筒、郵送費が削減されました。

図4:データ版決定通知書の希望割合

利用者は、24時間いつでも申請できる点を評価

——利用者からは、どのような反応がありましたか。

山口:「24時間いつでもスマートフォンから申請できるので助かる」という意見が多く届きました。8割以上の方が平日日中に働いている方のため、閉庁している時間にも申請できるメリットを感じていただけたようです。実際の申請時間を見ると、76%が平日17時から翌9時や土日祝日に申請していることからも活用いただいていることが分かります。


図5:オンライン申請の利用時間

——ほかにはどのような意見がありましたか。

山口:利用者からは「忙しいので、役所に行かなくても申請できるのがよい」「簡単に入力できた」「添付書類を写真で提出できるので、コピーのためにコンビニに行かなくてよいので便利」などの声が届きました。スマートフォンで申請する際に、わざわざ申請中の画面を閉じて写真を撮り直すのではなく、そのままスマートフォンのブラウザ上でカメラを起動して申請できる点も利用者から好評です。

利用者向け申請画面の設計で重要なポイントは、「利用者目線と職員目線とのバランス」。

——申請画面を作る際には、どのような点に配慮しましたか。

山口:「利用者目線」と「職員目線」という、2つの異なる観点を同時に持つことを意識しました。申請画面を作る際、申請者本人に入力してもらうべき項目は多数あります。しかしすべてを入力してもらうと利用者の負担が増加してしまう。一方で、項目を省くと後続業務の負荷が高まり、結果として審査の時間がかかるなど、利用者にデメリットが発生します。目線がどちらに偏っても、オンライン申請のメリットを最大化することはできないのです。今回の場合、たとえば「児童扶養手当番号」を必須入力項目とすることで、郵便番号や住所の項目を削減するという判断を行いました。利用者は「児童扶養手当番号」を入力すれば、いくつかの項目の入力を省くことができます。同時に後続業務では審査を効率的に行えるようになります。このように、両方の観点を併せ持ちながら、繰り返し項目を見直すことで、申請画面の入力項目が最適な内容になるように設計していきました。

図6:入力項目数の変化

——制度上、補助の対象ではない利用者からの申請を避けるために工夫した点はありますか。

山口:申請をはじめる前に簡単な質問を配置することで、対象でない利用者の申請が行えないようにしました。たとえば今回の場合、補助対象はひとり親家庭の高校生ですが、ひとり親家庭であったとしても生活保護を受給している場合には対象から外れます。このような対象要件は制度要項にも記載していますが、市民にとっては判別しにくいものです。そこで「生活保護を受給していますか」などの質問に回答してもらい、要件に当てはまらない方はその後の申請画面に進めないようにすることで、対象外の申請を防ぎました。

図7:申請開始前の質問イメージ

——申請をはじめる前の質問は、ほかにどのようなことに活用していますか。

山口:質問の回答によって、申請画面にあらわれる申請項目が自動的に変わるようにしています。たとえば「児童扶養手当の支給を受けていますか」という質問にYesと回答した利用者は、振込先口座の入力項目がスキップされます。児童扶養手当番号の確認により、振込先口座情報も把握できるためです。このような工夫によって、利用者が迷うことなく最小限の入力内容で申請できるようにしています。

——他に利用者の利便性を高めるために工夫したことはありますか。

山口:子どもの学校名を入力してもらう項目では、フリー入力ではなく選択式入力を適用しました。これは審査を効率的に行うための工夫です。審査の際には、選択肢から選ばれたものであれば間違いなく補助の対象であるとすることで、チェックをスキップできるようにしました。

また、利用者は画面上の文章の全てを読んでくれるわけではないという考えのもとで、表現の分かりやすさに配慮しました。そのうえで、どうしても読んでもらいたい箇所には、黄色のアンダーラインを引いて強調するといった工夫を行いました。

デジタル化に向けた、庁内での調整はどのように行われたのか。

——最後に、導入時のお話についてお聞かせください。導入はどのようなスケジュールで進みましたか。

田中:導入期間は約4ヶ月です。2020年度当初から制度内容や申請方法に関する検討を開始。2020年6月上旬に具体的な制度要項を固め、7月に様式を検討、8月下旬から申請フォームの作成を行い、10月1日に公開しました。制度や様式を固める際には、グラファーが利用者の目線で提案を行ってくれたことで、よりよい内容に改善していくことができました。申請フォームの作成時も利用者にとっての使い勝手や、後続事務の効率化を見据えた専門的なアドバイスをいただけたので助かりました。

図8:導入スケジュール

——オンライン申請の導入をスムーズに進めるために、庁内でどのような調整を行ったのでしょうか。

田中:本人確認の方法や、会計審査の方法、申請者へ決定通知書を提供する方法を見直し、規定や運用を変更しました。本人確認の方法に関しては、従来は押印によって行っていましたが、情報化戦略部の協力を得て、国のガイドラインを確認しながら庁内で考え方を整理し、IDとパスワードをもって本人確認を行う方法で運用することにしました。会計審査の方法に関しては、これまで紙の申請書を前提とした運用が行われていましたが、会計部門と調整を行い、データの添付で審査を行う方法に変更しました。決定通知書の提供方法に関しては、紙ではなくオンラインで提供した場合に神戸市側の電子署名が必要か否かという観点等について、法務部門に確認しながら整理を行い、オンラインで提供できるようにしました。


一番左:行財政局 業務改革課 齋藤 貴寛氏
一番右:企画調整局情報化戦略部 ICT業務改革担当 係長 湯川 徹郎氏

——オンライン申請を進めるにあたり、庁内ではどのような声がありましたか。

田中:これまで補助金申請をオンラインで受け付けた実績がなかったため、「本当にできるのか」「問題ないのか」といった声もありました。しかしその後、新型コロナウイルス感染症による影響でオンライン申請の必要性が高まったことや、先行事例が出てきたことを受け、庁内でも「どうやったらできるか」という前向きな話し合いが進みました。デジタル化を進めるにあたっては、所管課をはじめ関係課が一体となることが欠かせないと感じました。

今後は、オンライン申請の利便性をさらに向上させていくことを予定。

——今後はどのようなことに取り組んでいきますか。

山口:オンライン申請をさらに改善していく予定です。利用者からのフィードバック内容などをもとに、より分かりやすく、使いやすいオンライン申請に改良していきます。同時に、オンライン申請に慣れていない利用者のケアも行っていきます。今回オンライン申請を原則とすることで、デジタルでの申請が難しい利用者も一定数存在することがあらためて確認できました。このような利用者へのサポートも引き続き行っていきたいと思います。

また、2回目以降に申請する利用者が、簡単に申請できるような工夫も行います。利用者は、ログインして利用することで、前回の申請内容を引き継いで申請することができます。引っ越し等で資格を喪失しない限り、同じ項目を何度も入力する必要がないため、利用者の申請負荷を軽減することができます。このように利用者目線での工夫を重ねながら、オンライン申請をさらにスムーズに活用してもらえるようにしたいと思います。

(敬称略)

プロジェクトを担当された、田中氏、山口氏(左から)

写真:本山 紗奈 / 文:東 真希 (Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名は取材当時のものです。)


神戸市のオンライン申請は「Graffer スマート申請」によって実現することができます。あらゆる行政手続きをスマートフォンやパソコンから完結できるため市民メリットが大きく、事務コストの削減にもつながります。費用や導入期間については、無料お問い合わせからお気軽にご相談ください。

グラファー Govtech Trends編集部

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