乳幼児健診のオンライン予約で保護者や子どもの負荷を軽減し、職員の案内業務も4分の1に。宜野湾市の取り組み
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乳幼児健診のオンライン予約で保護者や子どもの負荷を軽減し、職員の案内業務も4分の1に。宜野湾市の取り組み

2023.05.01 Mon

「Graffer 窓口予約」を利用した、乳幼児健康診査のオンライン予約に取り組む沖縄県宜野湾市。オンライン予約の導入を機に、案内に関する業務が4分の1に減少。健診会場の混雑もなくなり、保護者や子どもの負担が減少しました。

「会場の混雑を緩和して、保護者と子どもの負担を軽減したい」と考えたことがきっかけに

——「乳幼児健康診査のオンライン予約」はどのような仕組みでしょうか。

浦崎:「乳幼児健康診査のオンライン予約」は、1歳6カ月児や3歳児の健康診査の予約が、スマートフォンやタブレット、パソコンから取れる仕組みです。

乳幼児健康診査の予約を、オンラインでいつでも行うことができる。

——予約システムを導入しようと考えたきっかけは何だったのでしょうか。

浦崎:健診会場の混雑を解消したいと考えたのがきっかけでした。もともと乳幼児健康診査は、予約制ではありませんでした。保護者に対して「できるだけ案内した時間帯に来所してください」といったように、推奨の時間帯は案内していましたが、案内した時間以外に来所する方も多くいらっしゃいました。

同じ時間帯に健診希望者が集中して会場が混雑すると、通常は2時間以内で終わる健診に、3時間程度かかってしまう場合もありました。そうすると、保護者や子どもに負担がかかってしまいます。そこで、このような問題をどうにか改善したいと考えていました。

健康推進部 健康増進課 すこやか親子係長 浦崎 朋子 氏

——混雑緩和によって、保護者や子どもの負担を軽減したいという考えが、きっかけとなったのですね。混雑時は、現場で業務を行う職員にも負担がかかっていたのではないでしょうか。

浦崎:健診会場が混雑すると、応援のために職員が急きょ駆けつけることもありました。健診を委託している事業者との契約で、1日に健診できる人数に制限が設けられることになり、キャパシティをオーバーする可能性があることも懸念していました。

保護者や子どもの負荷が大幅に軽減。職員の送付業務も4分の1に

——オンラインで予約を受け付けるようになったことによって、どのような変化がありましたか。

浦崎:すべての予約をオンラインで受け付けるようになったことによって、健診会場の混雑は一切なくなりました。以前は、最終の終了時間を超えても健診が終わらないこともありましたが、現在では健診の流れがスムーズなため、1時間ほど短縮して健診を終えることもあるほどです。会場内もゆったりしているため、保護者や子どもに、より快適な環境で受診いただけるようになりました。

——業務の面では、どのような変化がありましたか。

首里:対象者に対して受診票や案内を送付する業務が、約4分の1に減少しました。以前は保護者ごとに、異なる健診時間帯を記載していたため、リストの作成や送付のために月6時間程度かかっていました。

しかしオンライン予約の導入後は、対象者全員に一律で案内を送付する形に運用を変更したため、月1時間半で済むようになりました。送付回数についても、以前は月3回に分けて送付していましたが、現在はまとめて月1回送付すればよいようになったため、業務の効率化につながりました。

オンライン予約の導入を機に、受診票や案内を送付する業務が約4分の1に減少した。

——以前は混雑時に応援の職員が駆けつけることもあったということですが、現在はいかがでしょうか。

浦崎:オンライン予約の導入後は、職員が応援のために駆けつける必要もなくなりました。以前は受付が急に混雑することもありましたが、現在は一定のペースでスムーズに運用できるようになりました。

約6割の保護者が閉庁時間帯に予約

——オンライン予約を利用した保護者からは、どのような反応がありましたか。

浦崎:保護者からは「確認しやすい」「簡単に予約できるのでよかった」といった声が届いています。導入前は、「本当にオンラインで予約してくれるか」といった不安がありましたが、不安をよそに、多くの保護者がオンライン予約を活用しています。持ち物などについても、自動メールで送信されるため、スマートフォンでの操作に慣れている保護者にとって、利便性の向上につながっているのではないかと思います。

——忙しい保護者のメリットにつながっているということですね。

首里:約60%の予約が閉庁時間帯に行われている様子からも、空いた時間にスマートフォンでさっと予約できることが評価につながっているのではないかと考えています。


半数以上の予約が、夜間や休日など、閉庁時間帯に行われている。

——オンライン予約を導入したことによって、操作方法に関する問い合わせは増加しませんでしたか。

首里:操作方法に関する問い合わせはほとんどありません。実際にある問い合わせとしては、当日のキャンセルや変更方法などに関するものです。宜野湾市では、月末の数日をメンテナンス期間として、予約ページを非公開にしているため、その期間に予約ができないことに対する問い合わせもあります。

「Graffer 窓口予約」は、カレンダーの中から希望の日時を選択していく、シンプルで簡単な予約画面です。マニュアルなどを見なくても、直感的に操作することができます。宜野湾市では、操作方法に関する案内資料も用意しているため、万が一不明点があった際にも、スムーズに利用いただけているのではないかと思います。

対象者への案内には、操作方法に関する書類も同封している。分からない点があるときにも、保護者が自身で解決できるように取り組んでいる。

——乳幼児向けの健診の場合、体調不良などによって一定数の当日キャンセルが発生するのではないかと思います。キャンセルについては、保護者自身が操作を行うのでしょうか。

首里:キャンセルの場合も、保護者が自身でオンラインで操作を行うことができます。2カ月先まで予約できるようにしているため、キャンセル後は、自身で都合のよい日時に振り替えることができます。

健康推進部 健康増進課 すこやか親子係 首里 竜佑 氏

——オンライン予約の導入によって、職員からはどのような反応がありましたか。

浦崎:現場の職員からは「混雑がなくなり、スムーズに対応できるようになった」「ゆっくり余裕を持って業務に対応できるようになった」などの反応がありました。

予約制にすることによって、来所人数が事前に把握できるようになったのも大きな変化です。これまで受付の職員は、健診の受け付けが終了する15時まで待機している必要がありました。しかし現在は当日いらっしゃる方が予め把握できるため、終了時間を待たず受け付けを終了し、別の業務に移ることができるようになりました。また、予約により受診者数を分散できるため、受付時間も短縮することができました。

電話予約の場合よりも、月80時間以上の業務時間を節約

——オンライン予約の導入はどのようなスケジュールで行ったのでしょうか。

目取眞:2022年8月頃から導入の検討を開始。導入決定後は2022年9月からテストを行い、11月に予約ページを公開しました。このうち乳幼児健康診査の予約ページを作成していた期間は、2、3週間程度です。

検討開始から約3カ月で予約ページを公開した。

——導入の検討時はどのようなポイントに注目しましたか。

平敷:検討時は、電話予約とオンライン予約とを比較し、費用対効果を算出しました。予約は電話でも受け付けることができますが、継続的に業務負荷がかかります。そのためオンライン予約の方が電話予約よりも30%程度、トータルコストが低くなると試算しました。

企画部 デジタル推進課 デジタル推進係 係長 平敷 兼一郎 氏

——コストの面では、オンライン予約のほうが電話予約よりも低くなるということですね。現場では、電話予約やオンライン予約に対して、どのような印象がありましたか。

浦崎:電話で新規予約を受け付ける場合、1件あたり約10分かかるため、乳幼児が対象の健診だけでも月80時間以上の業務増加につながります。キャンセルや変更も電話で受け付けるとなると、さらに業務が増加し、現実的ではない印象がありました。開庁時間に電話をしないといけないため、保護者にとっても負担が大きくなります。

——オンライン予約の導入によって、現場では運用変更が発生したのではないかと思います。導入に不安はありませんでしたか。

浦崎:予約制ではなかった健診を、予約制にして、さらにオンライン化することに、当初は不安もありました。しかし、どの方法を取ったとしても最初が大変なのは仕方のないことです。保護者や子ども、職員にとって大きなメリットがあるのであれば、従来通りの方法へのこだわりはありませんでした。

企画部 デジタル推進課デジタル推進係 目取眞 泰哉 氏

——運用変更にあたり、現場ではどのような準備を行いましたか。

首里:オンライン予約を導入するにあたり、市民へのお知らせ文書の変更や、システム操作方法の案内作成、現場への伝達などを行いました。

案内文書については、「事前に予約する必要があること」を保護者に伝えることを重視しました。例えば、二次元コードを右上に大きく配置し、「予約のページ」という文言を添えることによって、瞬時に理解できるように工夫しています。

「Graffer 窓口予約」では前日に予約者に配信されるリマインドメールの内容を自由に設定できます。そのため案内文書を作成する際には、細かい内容をリマインドメールに記載して案内文書の内容を絞ることによって、予約用の二次元コードを読み込んでもらえるよう意識しました。

対象者に対して、事前予約が必要なことを分かりやすく伝えられるよう、工夫を重ねた。

今後はオンラインの範囲をさらに拡大

——今後はどのようなことに取り組む予定でしょうか。

首里:今後は、市民のさらなる利便性向上につながるよう、工夫を凝らしていきたいと思います。例えば、保護者から問い合わせが多い内容については市のホームページに随時追加することによって、オンラインだけで疑問を解決できるような仕組みを用意していきたいと考えています。

——健康増進課の他の健診についても、オンライン予約に対応していく予定でしょうか。

浦崎:1歳半健診、3歳健診のノウハウを活かして、妊娠の届け出や乳児健診についても、オンライン予約を導入する予定です。保護者や子どもたちにとっても、職員にとっても、全方位でメリットのある取り組みとなるよう進めていきます。

——全庁的な取り組みとしてはいかがでしょうか。

比嘉:今回の取り組みで得た知見をもとに、健診以外の業務領域にもオンライン予約を活用していきます。例えば確定申告や年次イベントに展開することによって、業務を大きく改善できるのではないかと考えています。

企画部 デジタル推進課 デジタル推進係 比嘉 涼乃 氏

平敷:予約に加えて、申請についてもオンライン化に取り組んでいきたいと考えています。多くの手続きがオンライン申請でできるようになれば、市民は自宅や職場にいながら、行政手続きを行うことができます。混雑した窓口で何時間も待つようなこともなくなります。より多くの方にいつでもどこでも手続きができるような市役所が当たり前になるよう、取り組みを進めてまいります。


デジタル推進課、健康増進課の皆様


取材・写真:佐竹 佳穂 / 取材・文:東 真希(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)

宜野湾市役所が取り組む、「乳幼児健診予約」のオンライン化は「Graffer 窓口予約」によって実現できます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしで分かりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。

グラファー Govtech Trends編集部

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宜野湾市

人口:
10.01万人(令和2年国勢調査)

導入サービス:
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Graffer 窓口予約