福岡県福岡市では、2022年3月に屋外広告物に関する手続きを、政令市で初めて、決済まで含めてオンライン化。手数料の支払いを含めて、申請者の手間を削減しました。
福岡県福岡市:1,612,392人(令和2年国勢調査)
屋外広告物に関する手続きとは
屋外広告物に関する手続きは、事業者や個人が広告物などを屋外に掲示する際に必要となる手続きです。新規申請の際には、申請書のほかに、仕様書や図面などの添付書類が必要となります。
屋外広告物に関するオンライン申請の流れ
——屋外広告物に関するオンライン申請は、どのような流れで行うのでしょうか。
髙木:まずは事業者などの申請者がオンラインで申請を行います。次に、職員が審査を行い手数料をシステム上で通知。最後に、申請者がオンラインで支払いを行う流れです。
福岡市では、オンラインで申請を受け付けた後、手数料を通知すると、申請者がオンラインで決済できる仕組みを用意している。申請者は、決済までをオンラインで完結できる。「Graffer スマート申請」では、このように、申請を受け付けた後に手数料が決まるような手続きにも対応している。
——支払い方法には、どのような手段がありますか。
髙木:支払い方法としては、オンラインでのクレジットカード決済と、従来の収入証紙による支払いが選択できるようにしています。収入証紙による支払い方法も残しているのは、クレジットカード決済が難しい申請者もいるためです。
支払い方法は、オンライン決済と収入証紙による支払い、どちらにも対応できるようにしている。
髙木:中には、申請は窓口で行うが、決済についてはオンラインで行いたいという要望もあるため、決済だけ行える申請フォームも別枠で用意しています。なお、2022年3月からは、窓口でのキャッシュレス決済にも対応しています。
市の条例改正が背中を押した
——オンライン申請を導入する前は、どのように屋外広告物に関する手続きを受け付けていたのでしょうか。
冨田:オンライン化を行う前は、窓口と郵送で申請を受け付けていました。
窓口で新規受け付けを行う場合には、申請者に、最大2回来庁いただく必要がありました。1回目は、仮審査のために申請書や添付書類を提出するとき。2回目は、本申請として、仮審査で決定した手数料を支払うときです。そのため、特に遠方にお住まいの申請者に負荷がかかっていました。
——申請者の負荷を課題だと感じていた中、どのようなきっかけでオンライン化に向けた取り組みをはじめたのでしょうか。
横谷:大きなきっかけとなったのが、DX戦略課からの呼び掛けです。福岡市は全庁的なデジタル化を進めており、効果が見込まれる手続きについては、積極的にデジタル化を進めています。屋外広告物に関する手続きは、申請数が比較的多く、優先度が高い手続きに位置づけられていました。
住宅都市局 地域まちづくり推進部 都市景観室 室長 横谷 英範氏
——検討が前に進んだのは、どのようなタイミングでしたか。
横谷:検討の大きな後押しとなったのは、福岡市が2021年6月に行った新たな条例の施行です。
「福岡市情報通信技術を活用した行政の推進に関する条例」は、紙媒体で申請を行うことになっている手続きについて、個別の条例を変えなくてもデジタル化が可能になるという内容の条例です。この条例施行を機に、デジタル化に向けた検討が大きく進みました。
公開後、約3カ月間で60件以上がオンラインで申請
——公開後の反応はいかがでしたか。
髙木:屋外広告物の新規申請・更新申請について、約1,300件のうち約60件がオンラインで申請されました。
過去にあった他都市の事例で、屋外広告物に関するオンライン申請の年間申請数が数件だったという話を聞いていたので、3カ月間で60件というのは、想定よりも多い件数でした。
住宅都市局 地域まちづくり推進部 都市景観室 係長 髙木 陽介氏
——実際にオンライン申請を行った申請者からは、どのような声がありましたか。
冨田:事業者からは「オンラインで申請できたので、非常に便利でした。拘束される時間や、郵送手続きなどが省けて、大変助かります」「年に一度の申請を会社で行えるため、効率が上がりました」などの声がありました。
来庁しなくてもよいことに申請者がメリットを感じたことが、ポジティブな声につながっているのだと思います。これまで申請のためにかかっていた、合計1〜2時間の移動時間や駐車場の待ち時間がゼロになったことは大きな変化でした。
事業者の来庁回数が最大2回から0回になった。
冨田:これまで郵送で手続きを行っていた申請者については、郵送費用がかからなくなるというメリットもあります。到着までに要する期間も考慮しなくてもよいので、効率化や迅速化につながったのではないかと思います。
住宅都市局 地域まちづくり推進部 都市景観室 係員 冨田 優氏
業界紙や、更新時の案内を通じて、事業者に幅広く周知
——申請者に対して、オンライン化がはじまったことを、どのように周知しましたか。
横谷:いくつかの方法で幅広く周知を行いました。例えば、建設通信新聞という業界紙への掲載です。
髙木:都市景観室の窓口にもチラシを設置しました。チラシを置くことで、今回窓口で申請を行った事業者についても、次回はオンラインで申請するきっかけになるのではないかと考えています。チラシを持ち帰る事業者はかなり多くいます。
——他には、どのような方法で広報を行いましたか。
冨田:年に一度、許可期限が切れる前に送付している更新案内に、チラシを封入しました。この更新時の事前案内は効果があったのではないかと感じています。他には、業界組合への広報依頼なども行いました。
——今後は、どのようなことに取り組む予定ですか。
冨田:今後は、事業者に向けた周知を通じて、オンライン申請のさらなる浸透を図っていきます。事業者の更新手続きは年に一度のため、段階的に利用を拡大していきたいと考えています。
取材:本山 紗奈 / 文:東 真希 / 写真:野手 咲芳(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名は取材当時のものです。)
福岡市が取り組む、屋外広告物に関するオンライン手続きは「Graffer スマート申請」によって実現できます。導入時は、優良事例を取り込んだテンプレートを活用可能です。費用や導入期間については、 無料お問い合わせからお気軽にご相談ください。
グラファー Govtech Trends編集部
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