「すごい勢いで申請が届いて非常に驚いた」年間約17,000件のうち約8,300件がオンラインで申請。福岡市「就学援助申請」
国内事例

「すごい勢いで申請が届いて非常に驚いた」年間約17,000件のうち約8,300件がオンラインで申請。福岡市「就学援助申請」

2022.08.30 Tue

これまで窓口で受け付けていた就学援助申請をオンライン化した福岡県福岡市。導入初年度から保護者の約半数が利用したオンライン申請とは、どのような仕組みなのでしょうか。

福岡県福岡市:1,612,392人(令和2年国勢調査)

就学援助申請とは
経済的な理由により、学校での学習等に必要な費用の支払いにお困りの世帯に対して学用品費・給食費・入学準備金などを援助する制度です。

きっかけは「平日の日中に窓口に行くのが負担」という保護者の声

——就学援助申請をオンライン化しようと考えたきっかけは何だったのでしょうか。

石田:保護者からの、「平日の日中に、学校や教育委員会の窓口まで提出に行くのが負担」という声がオンライン化のきっかけとなりました。

保護者はこれまで、申請のために平日の9時から17時の間に、小中学校の事務室や教育委員会の窓口に行く必要がありました。両親ともに仕事をしている家庭では、仕事を休んだり、代理の人にお願いしたりしており、負担がかかっていました。

福岡市 教育委員会 教育支援課 課長 石田祐介氏

——他には保護者からどのような声がありましたか。

寺田:就学援助という手続きの特性上、「手続きをしているところを他のご家庭に見られたくない」という声もありました。申請期間中、窓口でお待ちいただくこともあったため、何とか解決したいと考えていました。

福岡市 総務企画局DX戦略課(元教育委員会 教育支援課)係員 寺田 亮氏

——職員の事務の面では、どのような課題を感じていましたか。

石田:事務の面では、入力間違いやチェック漏れの発生に課題を感じていました。窓口で受け付けた申請書の情報を、管理システムに入力するときには、手で入力するため、どうしても一定量の入力間違いが発生してしまいます。ダブルチェックも行っていますが、文字が読みにくいなどの場合には、チェックが漏れてしまうこともありました。

入力件数が多いことも負担となっていました。1件にかかる入力時間は3、4分程度ですが、年間の申請件数が約17,000件と多いため、合計すると大きな負担となっていました。

このような課題を感じていた中、庁内のDXを推進するDX戦略課からの呼び掛けを受け、オンライン化に向けて動き出しました。

オンライン申請の開始初年度で、年間約17,000件のうち約8,300件がオンライン申請を選択

——2022年からオンライン申請を開始したところ、約半数が窓口ではなくオンラインを選択しました。申請開始当日の様子はいかがでしたか。

石田:オンライン申請の開始直後は、すごい勢いで申請が届いて非常に驚きました。事前に想定していたよりも多くの方に使ってもらえたことで、保護者のニーズに合った申請方法が提供できたと感じました。

初年度の対象者は継続申請の家庭だけに絞ったが、それでも全体の約半数がオンライン申請を利用した。

——申請の時間帯は何時頃が多いでしょうか。

寺田:時間帯を集計したところ、約70%が、早朝や夜間、休日、昼休みの時間帯に申請されていました。24時間いつでもスマートフォンから申請できるため、保護者は仕事を休むことなく、空いた時間に申請していることが分かります。

閉庁している時間帯に多く利用されている。

——保護者からはどのような反応がありましたか。

寺田:保護者からは、「学校に伺うのが恥ずかしいと思う部分もあったため、オンラインでできてよかった」「毎年学校へ申請に行くのが大変だったので、オンライン申請を利用してみて、非常に簡単に終わり助かった」などの反応がありました。もともと保護者の負担を軽減したいと考えて開始した取り組みだったので、想像以上の反響があり、うれしく感じました。

オンライン化によって、保護者の手間が削減された。

——申請のためにかかる保護者の時間は、どのくらい削減されましたか。

寺田:これまで窓口で申請する場合、移動時間や待ち時間を含めて、平均的に1家庭あたり1時間くらいかかっていたのではないかと思います。しかし、オンライン申請の導入によって、その時間が数分に減少しました。

申請のためにかかる保護者の時間が大幅に減少した。

——オンライン申請に関して、保護者からはどのような問い合わせがありましたか。

石田:オンライン申請のシステムに関わる問い合わせとしては、例えば、申請完了時のメールに気がつかずに「申請が届いていますか」といった問い合わせがありました。

他には、「入力途中で操作方法が分からなくなってしまった」という問い合わせもありました。あとは「世帯にはどこまでが含まれるか」など、これまで窓口で記入する際に受け付けていたような質問も、新たにありました。

——これまで窓口となっていた各小中学校には、どのような変化がありましたか。

寺田:小中学校の担当者からは「窓口に来る人が極端に減った」、「業務を中断して対応する負担が軽減された」という話を聞いています。今後はさらにオンラインでの対応が効率化されるよう、工夫したいと考えています。

導入時は、保護者が入力しやすいように工夫を凝らした

——申請フォームを作る際には、どのような点に配慮しましたか。

寺田:申請フォームを作成する際には、正確な情報を入力してもらうことに配慮しました。申請フォームから入力された情報は、最終的に住民情報と突合するので、入力した情報に間違いがあると事後処理が大変になるからです。

——具体的にはどんな工夫を行いましたか。

寺田:間違いやすい項目には、入力例や注意書きの文章を丁寧に書きました。ただ、長文だと読んでもらえないため、なるべく短文にするように心掛けました。

保護者が間違いなく入力できるよう、工夫された申請フォーム。

寺田:他には、フォームに入力している途中で離脱することが無いように、最初のページには「何分くらいで申請できます」という情報を加えました。

保護者への広報として、二次元コードを活用

——オンライン申請が始まったことは、何月頃に保護者に周知しましたか。

石田:2022年の2月に、学校からの配布物を通じて保護者に周知しました。その後、3月からオンライン申請を開始しました。

——配布物には、どのような工夫を行いましたか。

石田:配布物の中に、オンライン申請のページにアクセスするための二次元コードを入れました。配布物の中でオンライン申請について細かく説明はしていません。その代わりに、「オンライン申請できること」を伝えることに注力して、詳しくは二次元コードから見てもらうようにしました。

二次元コードが目立つように配置された、保護者への配布物。

今後は、さらに利用範囲を拡大。保護者の利便性向上と職員の負担軽減に取り組んでいく

——今後はどのようなことに取り組む予定ですか。

石田:現時点では、オンライン申請の利用対象を、一部の方に限定しているのですが、より多くの方に利用いただけるよう、今後も検討していきたいと考えています。

寺田:今回は初年度のため、保護者も職員も、慣れない部分があったかと思います。次回以降は、さらに効率化していけるよう、継続的に改善していきたいと思います。

取材:本山 紗奈 / 文:東 真希 / 写真:野手 咲芳(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名は取材当時のものです。)

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グラファー Govtech Trends編集部

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