年末調整に関わる業務を230時間以上削減。深谷市人事課の取り組み
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年末調整に関わる業務を230時間以上削減。深谷市人事課の取り組み

2023.03.27 Mon

年末調整時期に発生する、残業や休日出勤を課題に感じていた埼玉県深谷市。そこで人事課では、全庁で導入している「Graffer スマート申請」を活用。年末調整事務を電子化し、230時間以上の業務削減を実現しました。

以前は、年末調整事務に大きな負荷がかかっていた

——年末調整事務を電子化する前は、どのような課題があったのでしょうか。

大屋:以前は申告書を紙で受け付けており、一定期間に負荷が集中することによって、職員の時間外労働や土日出勤が発生していました。このような課題を解決するためにオンライン申請を活用できないかと考え、ICT推進室に相談を持ちかけたのが始まりです。

人事課 給与係長 大屋 潤志氏

——職員の事務負荷に課題を感じていたのですね。その後、どのような流れで電子化に向けた取り組みを開始したのでしょうか。

大屋:検討している中で、全庁で導入している電子申請サービスである「Graffer スマート申請」が候補に挙がりました。試しに操作してみたところ、十分な機能が備わっており、使い勝手も良かったため、これなら人事課のメンバーで年末調整業務をオンライン化できそうだと考え、導入を決めました。

電子化によって230時間以上の業務削減を実現、約3,300枚分のペーパーレス化も

——電子化によって、どのような効果がありましたか。

大屋:電子化によって、約230時間以上の業務が削減できました。例えば、申告書等の準備・配布については、以前は約16時間かかっていましたが、現在は証明書の添付台紙を配布するのみのため、約4時間に減少しました。約3,300枚分のペーパーレス化にもつながりました。

申告書の回収や仕分けについては、以前は5人体制で約1.5日かかっていましたが、現在は3人体制で1日になりました。書類の束に紛れた申請書類を探す手間がなくなったのも、大きな改善点です。

電子化によって、職員の業務負荷が大幅に軽減された。

——申告書を回収した後のチェック業務はどのように変化しましたか。

大屋:申告書を回収した後のチェック業務も効率的になりました。例えば生命保険料控除のチェックについて、以前は休日出勤や残業も多く、4人体制で約7日かかっていたものが、現在では3人体制で約5日になりました。他の係への応援依頼も半分に減少しました。

——他の係に依頼していた応援が半減したというのは、大きな変化ですね。申請の不備に関しては、紙と電子では何か変化がありましたか。

大屋:30件ほどあった不備は数件に減少しました。以前は例えば、収入と所得を間違えて記載するような間違いがありましたが、電子化を機に収入のみを入力させるようにしたため、不備はほとんどなくなり、業務工数も減少しました。

——回収後のデータ入力作業についてはいかがでしょうか。

大屋:以前は申告書のデータ入力に約2日かかっていましたが、電子化によって入力の必要がなくなりました。

あわせて、入力内容のチェック方法も変化しています。これまでは申告書の内容と人事データが合っているか、一枚一枚確認していましたが、現在では、人事データと照合するだけのため、見逃しも少なく手間もかからなくなりました。

残業や休日出勤が約118時間減少

——導入前に発生していた残業については、電子化によって変化はありましたか。

大屋:電子化によって、残業時間が約75時間から約34時間に減少しました。電子化に取り組む前からさまざまな工夫によって業務効率化を図っていましたが、年末調整の時期は業務が立て込んでしまうため、どうしても一定の残業が発生してしまいます。約40時間分削減できたのは大きな改善点です。

——休日出勤については、いかがですか。

大屋:休日出勤についても約10日分削減され、休日出勤が一切発生しないようになりました。職員がより働きやすい環境につながったと考えています。

電子化によって、残業や休日出勤が減少。働き方の見直しにつながった。

職員からは「短時間で申請できるようになった」などの反応

——今年度から電子化を開始されたということですが、すべての職員がオンラインで年末調整を行ったのでしょうか。

大屋:すべての職員をオンライン化の対象としました。ただしパソコンやスマートフォンなどのデバイスを持っていないなど、物理的に不可能な15人に対しては、従来通り紙で申告書を受け付けました。

——年末調整のオンライン申請を利用した職員からは、どのような反応がありましたか。

大屋:職員からは、「短時間で申請できるようになった」、「計算をしなくて済むので助かった」などの反応がありました。

庁内で「ずいぶん楽になったよ」と声をかけられることもあります。事務の削減だけではなく、職員の負荷軽減にもつながっていることが分かり、喜ばしく感じています。

職員から多くのコメントが届いた。

——職員から、操作に関する問い合わせはありましたか。

長谷川:操作に関する職員からの問い合わせはほとんどありませんでした。電子化の初年度のため、問い合わせが多くて仕事にならないのではないかという不安もありましたが、拍子抜けするほど電話が鳴らず驚きました。実際に何件かあった問い合わせとしては、「アカウント登録やログイン方法が分からない」といった内容でした。

ICT推進室 ICT推進係 長谷川 美子氏

約1カ月間で申請フォームを構築

——どのようなスケジュールで年末調整の電子化を進めたのでしょうか。

大屋:2022年の5月頃、人事課からICT推進室に相談を持ちかけました。その後、グラファーの合同研修に参加してシステムの概要を理解し、7月に申請フォームを作成。8月には庁内でテストを行いました。

——申請フォームの作成については、どのくらいの期間で行ったのでしょうか。

大屋:申請フォームの作成にかかった期間は約1カ月間です。そのうち実際に作業していたのは10時間ほどだと思います。分からない点があった際には、グラファーが用意しているヘルプデスクである、デジタルサポートに相談しました。

「Graffer スマート申請」は年末調整業務に特化した電子申請サービスではありません。しかし、豊富な機能や柔軟な入力制御があり、操作しやすい画面設計のため、当初の想像通り、簡単に導入を進めることができました。

検討開始から約4カ月で庁内テストまでが完了。年末調整の開始にあわせてスムーズに導入することができた。

——申請フォームを作成した後のテストは、どのように行ったのでしょうか。

大屋:庁内のオンライン掲示板で、テストへの協力を呼びかけました。テストの後は、実際に最後まで申請を完了した約190人からのフィードバックを中心に、説明文章などに修正を加えていきました。

——申請フォームを作成したり改善したりする際に、どのような点を工夫しましたか。

大屋:職員の手間を削減できるような申請フォームになるように、申請項目を丁寧に見直しました。

具体的には、保険料控除申告書にある控除額の計算を不要としたり、扶養控除申告書の収入と所得の記載を収入のみの入力にしたりしました。紙の申告書の内容をそのまま電子化するのではなく、オンラインにあわせて項目を見直すことによって、職員がより短時間で、間違えることなく入力できるフォームを目指しました。

申請項目数が必要最低限になるように、見直しを重ねた申請フォーム。

職員のサポートにも力を入れた

——年末調整を紙から電子に変更するにあたって、職員にはどのように告知を行ったのでしょうか。

大屋:職員に向けては、案内資料を庁内の掲示板に掲示したり、オンライン掲示板に掲載したりしました。電子化の初年度をスムーズに進めるために、マニュアルや操作動画も用意して進めました。

——どのようなマニュアルを用意したのでしょうか。

大屋:図を用いて操作方法を分かりやすく紹介したマニュアルを用意しました。庁内テストのときに問い合わせが多かった、アカウント登録やログイン方法については、別途、さらに詳しいマニュアルも用意しました。

職員に向けた分かりやすいマニュアルを用意した。

——職員向けに用意した操作動画についても詳しく教えてください。

大屋:実際に申請画面で入力している様子を録画した動画を用意して、キャプションを付けて、庁内で閲覧できるようにしました。

7分程度の短い動画を用意。オンラインでの申請がはじめての職員でも操作に迷わないように配慮した。

——動画の作成にはどのくらい時間がかかりましたか。

大屋:動画の作成にかかった時間は3時間ほどです。私自身、動画を作った経験はありませんでしたが、職員がよりスムーズに申請できることを目指して作成しました。

——非常に丁寧に進められたのですね。

大屋:紙が電子に変わることによって、オンラインに対してネガティブな印象を抱く職員が生じないように、自分にできることはすべてやろうという気持ちで取り組みました。

国の後押しもあり、多くの自治体でデジタルの活用が進んでいます。深谷市においてもICT推進室を中心に全庁的なデジタル化に取り組んでいますが、この年末調整がはじめてのオンライン申請になる職員もいるはずです。そういった意味で、「こんなに簡単ならできそう」、「自分たちの課の手続きでもオンライン化に取り組んでみよう」と感じてもらえるようにすることで、最終的には市民サービスの向上につながるのではないかと考えました。

——実際に年末調整のオンライン申請を機に、オンライン申請に取り組む課はありましたか。

長谷川:今回の年末調整を経て、実際に十数課からオンライン申請の相談が寄せられました。今までオンライン申請に全く取り組んでいなかった課からも問い合わせがあったため、やはり実際に職員自身が市民の立場になって操作をしてみるというのは重要な経験だと感じました。

今後は、さらに使いやすいオンライン申請を目指して改善に取り組む

——今後はどのようなことに取り組む予定でしょうか。

大屋:次年度の年末調整に向けた振り返りを実施し、来年度は職員にとってさらに分かりやすい申請フォームに改善していきたいと考えています。

例えば、生命保険料控除については、上限額があるにもかかわらず上限額以上の控除証明書が貼付されるケースもありました。そのため、貼付用の台紙に注意点を記載するなどの工夫によって、上限以上の証明書が貼付されないように改善したいと考えています。

深谷市では年末調整の後に振り返りを実施。具体的な改善点を洗い出すことによって、来年度以降の改善を目指している。

——人事課として、年末調整以外の業務についても電子化に取り組む予定はありますか。

大屋:職員が行う住所変更の届け出についても、オンライン化を検討したいと考えています。現状は、住所変更に付随して記入する提出書類が5、6種類あるため、職員は似たような内容を何度も記入する必要があります。本庁舎以外の職員については、提出のためにわざわざ持参する必要があるため、オンライン化によって、このような手間を削減できればと考えています。引き続き、職員の業務負荷軽減や、働き方改善につながるような取り組みにチャレンジしていきたいと思います。



取材・写真:佐竹 佳穂 / 取材・文:東 真希(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)

深谷市が取り組む、年末調整事務のオンライン化は「Graffer スマート申請」によって実現できます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしで分かりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。

グラファー Govtech Trends編集部

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深谷市

人口:
14.13万人(令和2年国勢調査)

導入サービス:
Graffer スマート申請