台湾「オードリー・タン大臣」のデジタル行政はなぜ世界中で注目されるのか
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台湾「オードリー・タン大臣」のデジタル行政はなぜ世界中で注目されるのか

2020.01.09 Thu

台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タンは、デジタル行政に携わる人間であれば、今や知らない人はいないほど注目の人物です。天才プログラマーであると同時にアナキスト、トランスジェンダーという異色の経歴を持つ彼女は、一体どのようなデジタル施策をリードしているのでしょうか。「功績に全く興味はない」と発言するオードリーがAI、VRなどの最新テクノロジーを政治に取り入れる理由や最新動向に迫ります。

台湾のオードリー・タン大臣とは一体どんな人物か

オードリー・タンは、台湾のデジタル担当大臣として知られています。2016年10月、当時35歳という史上最年少の若さで行政院(日本の内閣に相当)に入閣。無任所大臣(日本の閣僚に相当)として各省の代表32人のチームを率い、行政デジタル化のイノベーションに取り組んでいるのです。

世界の頭脳に選ばれるほどの優秀さ

オードリー・タンがデジタル担当大臣として世界で注目される1点目の理由は、その優秀さにあります。独学でプログラムを習得し、19歳にはシリコンバレーでソフトウェア会社を起業、IQ180を持つと言われ、2019年には「世界の頭脳100」に選ばれるなど、数々の優秀な経歴を持ちます。

アナキスト、トランスジェンダーなどのパーソナリティ

注目される2点目の理由は、アナキスト、トランスジェンダーという彼女のパーソナリティです。支配者や君主のいない状態を理想とする思想を持つ無政府主義者でありながら、政府の重要なポジションを担い、改革に取り組むという独特の考えを持っています。また、性転換を行い性別を女性に変更し、名前を変更したことでも知られています。

しかし、優秀でパーソナリティに特徴がある以上に、タンがこれほどまでに注目されるのは、権力にとらわれないという考え方にあります。タンは政治における権力や組織を一切重視せず、技術を利用して政府を変革することに力を注いでいるのです。

「もしキャリア公務員がイノベーションを考えだすのであれば手柄は全て自分達のものするするでしょうけど、私は功績には興味はない。」

ーオードリー・タンー

引用元:Taiwan’s ‘anarchist’ minister wants an AI-powered government

訳:Toshihiro Hatano(Govtech Trends編集部)

今、タンが取り組む「AI×政府」

政治にテクノロジーを取り入れることを目指すタンは今、災害対策や市民との議論の場にAI技術を活用しています。

災害対策にAIを活用

タンがAIを活用して取り組むのが、台湾が直面するサイクロン、地震などの災害によって発生する水道の水漏れへの対策です。政府が機械学習を利用して各地の水圧を追跡し、水漏れを検出するのです。検知された水漏れは、自動的に修理担当者に通知され、どの給水ルートを止めて修理を行うかの提案まで行われます。

さらに、将来的にはドローンとの連携も見据えられています。災害時に水漏れが判明した箇所に修理担当者が出向くのではなく、まずはドローンで現地を視察することでスピーディで的確な処置が行えるようになるのです。

「水漏れが発生しているパイプがドローンを呼び出します。ドローンが水漏れを修復すことはできないが、水漏れ箇所を絞り込むことは可能であり、その技術運用の日はかなり近づいている。」

ーオードリー・タンー

引用元:Taiwan’s ‘anarchist’ minister wants an AI-powered government

訳:Toshihiro Hatano(Govtech Trends編集部)

AI技術を活用した自動運転の実用化推進

タンのチームは、台湾でAI技術を活用した自動運転車の実用化を推進するために、規制緩和やテストエリアの整備を行なっています。また、開発者がアイデアをテストできる専用地区として、「台湾智慧測試実験室(Taiwan Car Lab)」を設置。飛行、水上運転、路上テストなどが合法的に行えるようになっています。さらに、今後は自動運転関連分野へ応用可能なグリーンエネルギーなどの実験行っていくことも予定しています。

AIで市民の生の声を収集

タンは、市民の声を収集し、政治に生かすオンライン討論プラットフォーム「vTaiwan」の構築にも成功しています。オンライン上での議論を分析することで、市民の感情が見られ、どのトピックが最も議論されているかが分かる仕組みです。また、人々がどの意見に関心が高いのか、合意できる点はどこにあるのかをインターネットで話し合い、ここから政治を変えることができます。

画像:vTaiwan公式ページ

AIプラットフォームである「vTaiwan」には、議論を活発に行わせるための様々な工夫がなされています。例えば、参加者は意見への賛成、反対は表明できますが、他人のコメントに直接返信できないようになっています。個人への攻撃が起きて議論がストップしたり、場が荒れたりするのを防いでいるのです。

議論の際にこれが優れた手法である理由は、人々の感情を共有化させることに主眼が置かれており、誰かに喧嘩をふっかけたりして議論の場が荒らさせない手法が用いられている点である。

ーオードリー・タンー

引用元:Taiwan’s ‘anarchist’ minister wants an AI-powered government

訳:Toshihiro Hatano(Govtech Trends編集部)

現在、「v Taiwan」で議論される内容は、外交政策にまで広がっています。内容は、貿易・技術・防衛・移民に関するアメリカと台湾の関係にまで至り、市民の意見が政策の意思決定に反映される仕組みの1つとなっています。

タンが取り組む「VR×政府」

タンは、政府によるVRの活用も進めています。例えば、海洋保護公園に関する議論の中でVR技術を利用することで、政府関係者を含む参加者が、海洋生物がどのような危険にさらされているかを実際に見て理解する取り組みが行われています。

水中であろうと離島であろうと、VRは見る人に共有の視点を作り出す。人々の心の中に同じ空間を創り出し、同じ空間に居ながらにして目と目を合わせて話をしている一体感を創り出すことができる。このような空間をVRが開発される前に創り出すことは不可能であった。

ーオードリー・タンー

引用元:Taiwan’s ‘anarchist’ minister wants an AI-powered government

訳:Toshihiro Hatano(Govtech Trends編集部)

タンが取り組む「デジタルでの情報公開」

タンは、彼女が行ったすべてのインタビューや会議などの記録を全てオンラインで公開するという珍しい取り組みも行っています。彼女は「急進的な透明性」をポリシーとし、誰にでも公平に情報を公開するべきだと考えているのです。さらに、人々が彼女に質問するための定期的な機会も設けられています。

まとめ:デジタルテクノロジーが政府を変える

台湾が抱える様々な社会問題を、最新テクノロジーで解決するオードリー・タン。テクノロジーを単なる効率化に用いるだけではなく、政治の透明性や市民との議論に基づく合意に広く活用することにまで取り組んでいます。政府でAIやVRなどのテクノロジーを活用することは決して簡単ではありませんが、今後日本でも少しずつ活用が進んでいくのではないでしょうか。引き続き、オードリー・タンや台湾のデジタル化の最新情報に注目が集まります。

出典:Taiwan’s ‘anarchist’ minister wants an AI-powered government

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グラファー Govtech Trends編集部

Govtech Trends(ガブテック トレンド)は、日本における行政デジタル化の最新動向を取り上げる専門メディアです。国内外のデジタル化に関する情報について、事例を交えて分かりやすくお伝えします。

株式会社グラファー
Govtech Trendsを運営するグラファーは、テクノロジーの力で、従来の行政システムが抱えるさまざまな課題を解決するスタートアップ企業です。『Digital Government for the People』をミッションに掲げ、行政の電子化を支援しています。