【ガブテックイベント】つくば市副市長登壇「官民はどう連携していくべきか」ユース・カンファレンス2019イベントレポート
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【ガブテックイベント】つくば市副市長登壇「官民はどう連携していくべきか」ユース・カンファレンス2019イベントレポート

2019.10.17 Thu

2019年9月21日に開催された「ユース・カンファレンス2019」の登壇レポートをご紹介します。このイベントは日本の今後について若者と専門家が一緒に考えるもので、「日本を代表するスタートアップを生み出すために官民はどう連携していくべきか」と題し、官民連携のこれからの姿について活発なパネルディスカッションが展開されました。ここでは、つくば市の副市長である毛塚幹人氏から語られたつくば市の先進的な取り組みを中心に、行政と民間とがどう連携していくべきかのヒントに迫ります。

取材・写真:田村 愛、文:東 真希(Govtech Trends 編集部)

行政・スタートアップそれぞれの立場からの議論が繰り広げられる

ディスカッションでは、近年増加しているスタートアップと行政の連携や、現状や課題についての議論が交わされました。行政で抱える様々な課題に対し、独自の技術力やテクノロジーを持つスタートアップを活用するためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。

右から、つくば市副市長 毛塚氏、グラファー石井、隅屋氏、伊藤氏(座席順)

毛塚 幹人

つくば市 副市長

史上最年少副市長。財務省を経て2017年より現職。日本最先端の研究都市であるつくば市の生活をより豊かにするためにアジャイル行政をはじめとした様々な行政改革に取り組んでいる。

石井 大地

株式会社グラファー 代表取締役 CEO

行政手続きをテクノロジーで解決するスタートアップ企業であるグラファーを設立。鎌倉市、神戸市など多くの自治体と連携しながら日本のガブテックを牽引する。

隅屋 輝佳

一般社団法人Pnika代表理事

様々な立場の人が法律を作るれるようにするための新しいプラットフォームを構築。民間の視点から法制度への提言を行う。

伊藤 大貴

Public dots & Company 代表取締役

元横浜市議会議員。地方議員や公務員を民間企業とマッチングする企業であるPublic dots & Company代表。民間企業と行政との橋渡しを行う。

(座席順・敬称略)

行政がスタートアップとの連携を促進するためのポイントとは

ーー 伊藤氏:最近増えている行政とスタートアップの連携ですが、実は、スタートアップ側としては、行政との連携に高いハードルを感じている現実もあるようです。そこで必要となってくるのが行政側の受け入れ体制ですが、つくば市ではどのように官民連携を促進していますか。

毛塚副市長:つくば市がスタートアップなどの民間企業からの協力を得やすくするために独自に行なっているのが、「社会実装トライアル支援事業」です。事業への申し込みは年々増加しており、IoT(Internet of Things)、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータなどの革新的な技術やアイディアを持つ民間企業が全国から集まっています。

この取り組みの1つのポイントは、あらかじめ予算を確保しているという点です。1プロジェクトあたり100万円を合計5社に支援することが事前に決定されています。そのため、予算確保の時間を大幅に短縮することができ、結果的に他の自治体よりも1年程スピーディに取り組みを進めることができるのです。

この事業に採択されるスタートアップのメリットは、行政が、国や大学・研究機関との間に入ってくれるため様々な調整ごとが行いやすくなるという点です。様々なサポートを受けながら導入実績を作ることができ、その後の戦略が立てやすくなるのです。

参考:つくば市『社会実装トライアル支援事業

ーー伊藤氏:スタートアップ側としては、このような取り組みを実際どのように感じていますか。

屋氏 (Pnika代表理事):つくば市のように、行政が国や各機関との間に立って調整の役割を担ってくれることは、民間企業側の官民連携のハードルを下げるために非常に重要だと考えています

日本ではまだあまり根付いていませんが、欧米では「リビングラボ」という取り組みが進んでいます。これは、それぞれの地域の課題を、市民も参加しながらアジャイルで開発していくというものです。市民、行政、大学、民間が連携しながら進めていく中で、行政に求められる役割が、調整とルールメイキングです。そういった意味でもつくば市の取り組みは、行政が民間に寄り添い、調整の役割を担っていく素晴らしいものだと感じています。

「担当者レベルで検討がストップしてしまう」という課題はどう解決すべきか。

ーー伊藤氏:民間側の視点で考えると、官民連携では検討がなかなかトップに上がっていかないという課題意識もあります。この点について、つくば市ではどのように取り組んでいますか。

毛塚副市長:つくば市で行なっている取り組みが、実証実験をワンストップで受け付ける「つくば市未来共創プロジェクト」です。これは、年間を通して民間からの様々な提案を受け付け、打診があったら担当部署と協議するという仕組みです。情報を担当者だけで分断せず、トップまで途切れないような形をとっているのです。

参考:つくば市『つくば市未来共創プロジェクト

これからの官民連携のキーワードは「標準化」

ーー伊藤氏:今後、日本全体で行政のデジタル化を進めるうえで、どの部分を標準化し、どの部分を地域個別の仕様にしていくかという点に課題意識を持っています。この点についてどのように考えていますか。

毛塚副市長:自治体が抱える課題を解決していくうえでは、自治体側に選択の余地を残しながら、ある程度、国で標準を決めていくことが重要ではないかと考えています

例えば、つくば市では2018年に、全国で初めて業務自動化のためのRPAの本格導入に踏み切りました。業務時間などの大幅削減を目指したRPA導入は、つくば市単体で見ると非常に大きな成果を挙げましたが、現状日本では自治体ごとに書式の様式や運用方法が異なるため、せっかく自動化しても他の自治体では同じプログラムを展開できず作り直す必要があるという課題があるのです。この部分に関して、国側である程度標準の形を決め、そこから選択する形を取ることで、さらにデジタルトランスフォーメーションが進むのではないかと考えています。

小さく導入することが、結果的に大きな成果につながる

ーー伊藤氏:民間と連携して新しい取り組みを進めるつくば市ですが、新しい一歩を踏み出す際に大切にしている考え方はありますか。

毛塚副市長:小さくても実例を作ることは、民間企業側にとっても行政側にとっても非常に大きなインパクトがあると考えています。例えば、先ほどご紹介したつくば市のRPA導入は、国が行うRPAの補助金制度のきっかけとなりました。つくば市には約150の自治体からの問い合わせがあり、そういった意味でも1つの実例をつくることの意味は大きいのではないでしょうか。一度やってみることでトライアンドエラーがあるので、小さく実績を作ることは非常に大切だと考えています。

さいごに

今回のユース・カンファレンス2019では、官民連携の今後について、行政側・スタートアップ側の両軸から様々な議論が交わされました。ディスカッション後の質問では、「官民連携はスタートアップ側にとってもメリットがあるのか」「はじめての一歩を踏み出すハードルはすごく高いと感じているがどう考えるべきか」という質問が挙がり、活発な意見交換が行われました。

民間企業の持つ技術力やアイデアを積極的に採用することで、行政課題の解決につなげようという試みが広がり続ける中、今後の官民連携のヒントとなる考え方をご紹介しました。行政課題の解決に向けた参考になれば幸いです。

(※文中の敬称略。所属や氏名は取材当時のものです。)

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グラファー Govtech Trends編集部

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