元コンサル、元官僚。それでもグラファーを選んだ2人が、国のDX最前線に挑んだ理由

こんにちは。HRの畑中です。

デジタル庁が公募した、業務支援AIエージェントの設計開発・PoCに関する調達案件を受注したグラファー。その中心にいたのは、大手コンサル出身の春田と、財務省・デジタル庁で15年のキャリアを歩んできた鈴木でした。なぜ二人はグラファーを選び、入社して間もないタイミングで国の案件に踏み込んだのか。実際のリアルな裏話を聞きました。

春田 海人
Govtech本部 Government Consulting Manager

大学院卒業後、小売企業及びITサービス企業で事業開発に従事。その後、日系コンサルティングファームの戦略部門で、中央省庁の調査・企画案件のプロジェクトマネジメントや、事業戦略案件やBPR案件に従事し、2025年8月にグラファー入社。現在は中央省庁への提案活動、および行政機関向けのコンサルティングチームの立ち上げを推進。

鈴木 宏和
Govtech本部 Product Marketing

大学卒業後、財務省に入省。財務省、内閣官房等約15年、政策立案や政府横断の会計DX・データ利活用等のプロジェクトをリード。2025年11月にグラファー入社。現在はAIを活用したプロダクトの企画・開発に従事するほか、総務省技術総括アドバイザーとして各省の生成AI活用・BPR推進にも従事。

「当事者」として、国の課題に挑みたかった

——まずは春田さんの経歴について詳しく教えてください。

春田:事業会社の出身で、その後、大手コンサルティングファームに約7年間勤務していました。コンサルタントとして、提案からデリバリー、変革の伴走支援まで幅広く経験してきましたが、30代半ばを迎え、友人たちがトラックレコード(実績)を語る姿を見たとき、改めて自分自身の名前で語れる事業を作りたいという思いが強くなり、転職を考えました。グラファーには、中央省庁向けの事業拡大という大きなミッションを担う部門の最初の一人として参画し、現在は事業戦略から幅広く担当しています。

社内では、”愛されイジられキャラ”の一面も持つ春田さん

——鈴木さんは国家公務員という立場から、なぜあえてスタートアップであるグラファーへの入社を決めたのでしょうか?

鈴木:新卒で財務省に入省し、約15年間、国家公務員として制度設計や予算査定などに携わってきました。直近では内閣官房デジタル行財政改革会議事務局・デジタル庁に出向し、行政データ利活用推進の企画立案ほか、実際に法令調査支援アプリなどのプロダクト開発も経験しました。

国の内部にいると、どうしても「現場」が遠いという悩みがあります。例えば、法律や制度を変えようとするとき、あらゆるステークホルダーの意見を聞きながらプロセスを踏んでいくものの、自分が企画したものが実際に現場でどう使われ、役に立っているのかという手触り感は持ちにくい環境でした。

企画するだけで終わらず、現場での活用や改善まで責任を持ち、開発から運用までを一気通貫でやり切りたい。現場のフィードバックを高速で回し、着実に社会を良くしていく実感を持ちたい。そう考えた時、役割が細分化されすぎていないスタートアップであるグラファーなら実現できると考えました。

いつも穏やかな口調で、周りに安心感と安らぎを与えてくれる鈴木さん

2人が挑戦したデジタル庁案件。スタートアップが貢献できるポイントはどこだったのか

——今回入社半年ほどというタイミングでお二人が中心となって、デジタル庁の案件に挑戦し、無事採択されました。どのような案件か教えてください。

春田:今回の案件は、デジタル庁の職員が行う膨大なシステム開発文書のレビュー業務に対して、RAGや生成AIを活用したAIエージェントを設計開発し、2か月という短期間でどこまで効率化できるかを検証するという調達案件でした。

——非常に大きな挑戦だったと思いますが、スタートアップであるグラファーがこの重要なプロジェクトに貢献できる強みは何だったのでしょうか。

春田:一つは、「省庁業務」に対する知見です。幸運なことに、鈴木さんは前職において行政におけるAIを活用したプロダクト開発に深く携わっており、行政実務特有の制約や求められる品質水準を、実感を伴って理解していました。加えて、決して文書レビュー業務に関する知見があったわけではありませんが、元官僚として業務・組織の背景含めて全体像を解像度高く理解しています。

もう一つは、スタートアップならではの開発スピードと生産性の高さです。大規模な組織では丁寧な合意形成が重視される傾向がありますが、我々のようなスタートアップは、まずプロトタイプを作り、高速で改善を回しながら検証を進めることができます。

この「深いドメイン知識」と「高速な開発サイクル」を掛け合わせることで、短期間で確実な成果を目指す今回のプロジェクトにおいて、デジタル庁の皆様の期待を上回り、他社が安易に追随できない提案ができると考えました。結果として、鈴木さんは提案機会までに庁内の制約を押さえながら、業務利用できるAIエージェントのプロトタイプを信じられない速度で設計開発しました。実機レベルで検証されている強い初期仮説を土台に、設計開発というステップを省略し、職員の皆様が本質的に期待されている「業務効率化に向けたプロトタイプ改善」に焦点を当てた提案ができました。

——そうすると、早い段階から順調に進められるイメージがあったのでしょうか?

春田:正直なところ、かなり大変でした。私自身、プロジェクトを推進する立場で携わっていたのですが、生成AIに関する深い知見がその時点で十分にあったわけではありませんでした。社内のプロフェッショナル達の会話についていくために専門書籍も読みあさりながら必死に勉強しましたし、類似業務に関する社外有識者との繋がりも乏しかったため、これまでのキャリアの中でもしんどい経験の一つでした。

ただ、「業務」の文脈でどうAIを活用するかという点においては、コンサルタントとしての知見が活かせると考えました。社内には鈴木さんをはじめ、技術に精通したプロがいます。一方で、クライアントである省庁の皆様はレビュー業務のプロであり、必ずしもAI技術の専門家ではありません。業務のプロが抱える「業務・組織上の課題」を社内のプロが解決できる粒度や期待されるユーザー体験へと落とし、一方で、社内のプロたちが持つ高度な技術や知見を、レビュー業務のプロの皆様にも伝わる「業務上の価値」へと翻訳して届けること。それこそが、コンサルタント出身である自分の役割だと腹を括りました。

——鈴木さんから見て今回のプロジェクトはどうでしたか?

鈴木:私も正直、一筋縄ではいかない難度の高い挑戦だと身が引き締まる思いでした。今回の案件は「文書レビューをAIで支援する」というものでしたが、レビュー基準の多くは現場の職員の方々の頭の中にある暗黙知に支えられていたからです。

さらに、仕様書には、あえて民間の技術提案による創意工夫を求める「柔軟な設計」がなされていることもあります。私はこれまで発注者側にいたので、その意図はよく理解していました。しかし、いざ提案者としてその柔軟さに向き合ってみると、正解のない中で最適解を導き出すことの難しさと責任の重さを改めて実感しています。

——その正解が見えない状況を、どうやって打開したのでしょうか?

鈴木:ここで活きたのが「現場感」です。私自身はシステム開発文書のレビュー業務を直接担当した経験はありませんでしたが、行政職員がどのようにレビューしていくのかを振り返り、実務を一つひとつ紐解いていきました。高度な技術そのものを誇示するのではなく、「実際の業務でどう機能するか」という解像度を高めることに集中し、泥臭くレビュー基準を定義し、プロトタイプに反映していきました。結果として、単なる技術競争ではなく、「現場で本当に動くものを作る」という私たちの姿勢を評価していただけたことが、今回プロジェクトを任せていただいた大きな要因だったのではないかと感じています。

それでも、現実は決して甘くない

——官民双方の視点を持つお二人だからこそ、理想のプロジェクトの姿が見えているように感じます。一方で、それを組織として実現していく上での今後の「壁」も感じているのでしょうか。

春田:正直に言うと、中央省庁の高い要求水準に応え続けるためには、まだまだ仲間が足りないというのが本音です。

これまでグラファーが得意としてきたのは、自治体職員の皆さまに寄り添った強いプロダクトを開発し、仕様書の背景にある課題を深く理解した状態で提案に臨めるかということでした。しかし、今回のような価格面で一切の加点要素がない企画提案型の案件では、仕様書から解くべき問題・課題を定義し、「何をどのように解決するか」という上流工程から、職員の皆様や当社社員がともに推進可能なレベルのアクションへと落とし込み、変革そのものを伴走・リードしていく力が求められます。競合となるのは百戦錬磨の大手コンサルティングファームや現場業務を熟知している大手SIer、最先端AI技術を要するスタートアップです。私たちは彼らと対等以上に、現場の解像度と企画の質で勝負しなければなりません。そのためには、緻密な段取りや高度なクライアントワークが不可欠で、組織としてそのレベルを標準化していくことは、今まさに直面している大きな挑戦です。

——鈴木さんはどうですか?官僚組織との違いに戸惑うことはありませんでしたか?

鈴木:私はカルチャーギャップに、今まさに格闘している最中です。役所や大組織では、丁寧な合意形成の後に物事が動くのが一般的ですが、グラファーはまず「こうあるべき」を掲げ、走りながら精度を高めていくスタイルです。

確立されたスキームの中で動くことに慣れていた身としては、あらゆるプロセスで「なぜやるのか」「どう動くか」をゼロから決断し続ける日々に、戸惑うことも多々あります。例えばツールの選定一つとっても、「規定にあるから使う」のではなく、「課題解決に必要だから上長に提案する」という発想への転換が必要でした。この「自由に伴う責任の重さ」に適応していくプロセスは、刺激的であると同時に、決して楽な道ではないと感じています。

これから何を変えていきたいか

——最後に、グラファーで成し遂げたいこと、またはご自身の展望について教えてください。

春田:私は、中央省庁向けの事業をグラファーの「第3の柱」として育てていきたいと考えています。これまでは、守秘義務などの関係で「自分が何をやったか」を具体的に語れませんでした。しかし今は、国の根幹に関わるプロジェクトの当事者として、目に見える形で社会に価値提供していくこと、AIという社会変革をもたらすツールで日夜ハードワークをされている政府・省庁の皆様の業務に貢献していけることに大きなやりがいを感じています。

目指しているのは、単なる課題解決ではありません。AIが一層生活に溶け込む5年後、10年後の社会を見据え、行政の「業務そのもの」を再設計することです。大手コンサルファームのような豊富なリソースはありませんが、業務の本質を深く理解し、AIという武器を使って、あるべき姿を最短距離で実現する。そんな、技術と実務を直結させた新しいコンサルティングの形を、グラファーで確立していきたいと考えています。

——鈴木さんはどのようなことを目指していきますか。

鈴木:私はグラファーのミッションである「We Remove Steps.」——つまり、行政の複雑なプロセスを解きほぐし、最適化していきたいです。公務員は本来、住民のために働く非常に志の高い仕事です。私も決して公務員という仕事を否定してこの道を選んだわけではありません。しかし現状は、膨大な決裁フローやアナログな作業に追われ、本来注力すべき創造的な業務に時間を割けていない場面も少なくありません。

グラファーの強みは、しがらみにとらわれず、現場にとっての「あるべき姿」を真っ向から追求できることです。AIをはじめとする技術も積極的に活用しながらも、最新技術を導入して終わりにするのではなく、行政のカルチャーや実務を深く理解した上で、本当に現場が楽になる仕組みを作る。そして、公務員の方々がその専門性や情熱を、より本質的な価値の発揮へと注げる環境を整えていく。それが結果として住民への価値還元につながると信じていますし、行政の外側に立つパートナーとして、現場の皆さんと共にこの国の行政を一つひとつアップデートしていくことが、今の私が担うべき役割だと思っています。

グラファーが提供すべき価値について、話し合う二人

さいごに 〜行政の現場に寄り添い、次世代の「当たり前」を形にする〜

グラファーがいま向き合っているのは、正解のない広大な領域です。今回のような企画提案型の案件では、コンサルティングの緻密さと、スタートアップのスピード感、その両方を高い次元で融合させることが求められます。

「国を支える仕事に携わりたい」

「技術を使って、誰かの役に立っている実感を持ちたい」

「これまでのキャリアで培った専門性を、社会のOSを書き換えるために使いたい」

こうした志を持つ方にとって、今のグラファーには力を発揮できる余白がまだたくさんあります。決して楽な道ではありませんし、私たちもまだ正解にたどり着けているわけではありません。元官僚や元コンサルタント、そして技術のスペシャリストたちと議論を尽くし、行政のあり方を一歩ずつ形にしていく。そんな手探りのプロセス自体を楽しみながら、これからの組織を一緒に作っていける方をお待ちしています。

現場の難しさに正面から向き合い、新しい行政の形を形にする。そんな挑戦に共感いただける方と、ぜひお会いしたいです。

取材:畑中 五月 / 文:東 真希 / 写真:畑中 五月

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