島根県の電子申請システム共同利用。システム選定から庁内研修まで、県内全自治体が一体となって目指す県民の利便性向上
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島根県の電子申請システム共同利用。システム選定から庁内研修まで、県内全自治体が一体となって目指す県民の利便性向上

2025.07.23 Wed

県と19市町村により電子申請システムの共同利用を進める島根県。使いやすさを重視したシステム選定により、県民の利便性向上と行政の効率化を実現しています。県および市町村を対象とした研修には、オンラインを含めて約300名が参加し、全県一体となった取り組みを進めています。

県と全市町村で共同調達プロジェクトを進める

——島根県における電子申請システムの共同利用について詳しく教えてください。

武智:島根県では、県内の全市町村が共同利用に参加しており、県および19市町村で、電子申請システムの共同利用を行っています。

島根県では、電子申請システムを県および19市町村が共同利用している。

——2023年には電子申請システムの切り替えに取り組まれていますが、どのような体制で検討を進めましたか。

武智:島根県および19市町村で構成する島根県電子自治体共同利用システム運営協議会(以下、運営協議会)から選出されたメンバーによる調達部会を通じて検討を進めました。県内を4つのブロックに分け、それぞれのブロックから選出された担当者が調達部会で議論を行い、検討案を運営協議会総会で決定しました。

——どのようなスケジュールでプロジェクトを進めたのでしょうか。

武智:2021年度から準備を開始し、約2年の検討期間を経て、2023年10月に新システムの運用を開始しました。各段階で丁寧に準備と調整を重ねたことで、スムーズな移行を実現することができました。

2021年度から2023年度にかけてのプロジェクトで、新システムへの切り替えを実現した。

新システムは「とっつきにくさ」を解消することを重視して選定

——新システムの選定の際は、どのような点を重視しましたか。

武智:新システムでは、「実際にシステムを使う職員や県民にとっての使いやすさ」を重視しました。過去の経験から、電子申請システムは機能が豊富でも、「とっつきにくい」と感じられると利用が進まない傾向が見られると考えています。そのため、直感的な操作性や、初めてでも迷わず利用できるシンプルさが選定のポイントとなりました。

——最終的にグラファーを選定する決め手となったのは、どのような点だったのでしょうか。

土江:操作の分かりやすさや使いやすさに加え、職員向けの研修の回数や内容の豊富さも判断材料となり、最終的には価格面を含めての総合評価で決まりました。

情報システム推進課 システム運用係 係長 土江 篤史氏

新システムの共同利用によって、県民の利便性向上へ

——電子申請システムの共同利用によって、どのようなメリットを感じていますか。

武智:操作性が向上したことによって、より多くの職員が利用するようになったと感じています。結果として、申請フォームの数や実際の申請件数が増加し、県民の利便性向上につなげることができました。

実際に共同利用に参加した自治体からも「申請が円滑に行えるようになった」「申請者の負担が減った」という評価をいただいています。

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情報システム推進課 システム運用係 主任 武智 妙子氏

——共同利用に参加した市町村には、どのようなメリットがありましたか。

土江:各市町村がそれぞれ単独でシステムを調達・契約する場合と比べて、共同で導入することでコストを大きく抑えることができた点は大きなメリットです。単独契約よりも安価な費用で、高機能なシステムを利用できるようになりました。

特に小規模な市町村の場合、情報主管課の職員数が限られており、システムの導入や運用にかかる事務作業が大きな負担となることが少なくありません。今回、県が主体となって調達や契約、各種事務処理をまとめて行うことで、各市町村の負担を大幅に軽減することができました。

各自治体からは「独自に導入・利用するよりかなりコストを抑えられる」「時短になって良かった」という声が届いています。

各自治体にとって、共同利用には多くのメリットがある。

丁寧なやりとりを通じてスムーズな合意形成を実現

——プロジェクトをスムーズに進めるにあたって、心がけたポイントはありますか。

武智:各市町村とのコミュニケーションでは、細かな点まで丁寧に連絡し、合意内容を明確にしながら進めることを心がけました。全員で意見を出し合いながらシステムを選定する貴重な機会のため、参加型のプロセスを大切にし、納得しながらプロジェクトを進められるように努めました。

——合意形成を円滑に進めるために、どのような点を工夫しましたか。

長野:導入候補となった4社分のテスト環境を用意し、すべての自治体が実際にシステムを試せるようにしました。そのうえで、使ってみた感想や意見をアンケートで集め、結果を全体で共有しました。こうした方法をとることによって、実体験に基づいた合意形成を進めることができたのではないかと考えています。

情報システム推進課 システム運用係 長野 純子氏

研修を通じて県と市町村の利用を促進

——実際に共同利用が始まってから、各市町村の利用を促進するためにどのような取り組みを行っていますか。

武智:年に一度、県が主催する独自の電子申請システム研修を行っています。県および市町村の職員が参加しやすいオンラインでの受講も可能とし、県から100名、市町村から200名のべ300名が参加しました。

研修の内容としては、実際にシステムを操作しながら手続きを作成するハンズオン形式のものを行いました。終了後のアンケートでは「初めて手続きをゼロから作成できた」「毎年やってほしい」という声が寄せられています。

年に1度の県主催の研修にはのべ300名が参加した。

——各市町村では、利用促進のためにどのような取り組みを行っていますか。

武智:各市町村では、電子申請システムの利用を促すために、市民に配布するチラシなどに、申請フォームの二次元コードを入れる取り組みや、市のホームページにオンライン申請が可能な手続きの一覧ページを配置する取り組みが行われています。情報主管課の主催で研修を実施したり、新機能が追加された際に各課に周知連絡を行ったりしている自治体もあります。

——県庁内部ではいかがでしょうか。

武智:県庁内部では、利用促進のための伴走支援を行ったり、相談窓口を設けたりしています。これまで紙で行っていた手続きを電子申請システムに移行する際は、それぞれ課題や状況が異なるため、担当者がヒアリングを行い、それぞれの課題にあわせたサポートを行っています。

長野:職員が手軽に試せるテスト環境も準備しています。このテスト環境では、電子申請システムの利用者側の立場で、電子決済を含む手続きを体験することができます。職員自身が、実際にどのような流れで手続きが進むのかを体験できるようにすることで、初心者でも理解を深めることができます。

電子申請システムに慣れてもらうため、職員が手軽に試せる環境を用意している。

——システム操作面でのサポートについては、どのような体制をとっていますか。

長野:システムの操作で分からないことがあった場合は、グラファーのヘルプデスクを活用しています。いつも丁寧で的確な回答が返ってくるため、とても助かっています。ヘルプデスクの利用方法は職員にも定期的に案内しています。その効果か、体感としては、以前に比べて情報システム推進課への問い合わせが減少しているように感じます。

今後はさらに、デジタル技術を活用した行政サービスの変革を目指していく

——今後はどのような点に取り組んでいく予定ですか。

武智:今後は、各所管課がよりスムーズに申請フォームを作成できるよう、さらにサポートを充実させていきたいと考えています。さまざまな支援を通じて、より多くの職員がシステムを身近に感じ、積極的に活用できるような環境づくりを進めていきたいと思います。

長野:操作手順などのマニュアルの充実も進めています。初心者に向けた支援をより拡充していくことによって、今後も職員が安心してシステムを活用できるようにサポートしていきたいと考えています。

——県全体としての今後の方針について教えてください。

土江:県のICT総合戦略に基づき、県民の利便性向上をより一層図るとともに、多様なサービスを提供していくことが重要だと考えています。そのためにも、電子申請システムのさらなる利用促進を含め、業務ごとに最適な形でデジタル化を進めていく方針です。今後も、県民や事業者の皆さまにとって使いやすく、分かりやすいサービスを提供できるよう努めていきます。

取材・写真:柏野 幸大 / 取材・文:東 真希 

(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)

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グラファー Govtech Trends編集部

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