オンライン申請の受付から業務システムへの連携までを一気通貫でデジタル化する「オンライン申請のkintone連携」に取り組む北九州市の先行事例
国内事例

オンライン申請の受付から業務システムへの連携までを一気通貫でデジタル化する「オンライン申請のkintone連携」に取り組む北九州市の先行事例

2025.12.09 Tue

オンライン申請の導入が進む一方で、「申請を受け取った後の内部事務の大半は職員が手作業で行っている」という課題をお持ちの自治体は多いのではないでしょうか。北九州市では「Graffer スマート申請」の外部API連携機能で、サイボウズ社が提供するノーコードで業務システム開発できるツール「kintone(キントーン)」とオンライン申請を自動連携。オンライン申請で受け付けたデータが自動で業務システムに反映される仕組みを構築し、職員の業務効率化と生産性向上を実現しています。

これまで申請受付後にExcelや手作業で管理していた業務を完全デジタル化へ

——まずは、オンライン申請のkintone連携について、仕組みを教えてください。

金田:オンライン申請のkintone連携は、「Graffer スマート申請」でオンライン申請が行われると、申請データが自動的に「kintone」に連携される仕組みです。従来は、オンライン申請で受け付けたデータを業務システムに連携するために手作業が必要となっていましたが、この仕組みを使うことで自動連携できるようになりました。さらに、Excelやマクロを使うことなく、データ連携後の後続事務も自動化することができます。

※「kintone」はサイボウズ社が提供する、プログラミング不要で業務システムを開発できるツールです。

オンライン申請から後続事務まで、データや処理が流れるように進む。

——自動連携の仕組みをどのような業務で活用していますか。

金田:「無床診療所等立入検査自主検査結果の提出」や「宅地造成及び特定盛土等規制法に基づく適合証明書交付申請」、「産後ケア事業実施結果報告書」などに自動連携の仕組みを利用しています。

北九州市では、すでにさまざまな業務に対してGraffer スマート申請とkintoneの連携の仕組みを活用している。

——それぞれの業務について詳しく教えてください。自動連携によってどのような変化がありましたか。

金田:例えば「無床診療所等立入検査自主検査結果の提出」について、従来は、医療機関が10ページ以上にわたる様式に記入して紙で提出していました。結果を受け取った職員は内容を確認し、記入漏れや不備があれば電話等でやりとりのうえ再提出などを行ってもらっていました。その後、提出された自主検査の内容で基準を満たしていない場合には、個別に指導を行うという流れでした。

※無床診療所等立入検査自主検査結果の提出は、医療機関が自主点検の結果を自治体へ報告する手続きです。

現在では、オンライン提出の段階で、入力漏れが自動でチェックされるようになりました。提出データは自動的にkintoneへ連携され、kintone側で自動計算が行われます。その結果、審査基準を満たしていない項目が自動抽出され、職員は指導が必要な項目を確認するところから業務をはじめられるようになりました。現在は、紙とオンラインを併用していますが、年間約300件の手続きが効率化され、43時間以上の業務削減が見込まれています。

申請から審査までを自動化。職員は判断が難しい事務に集中することができる。


次に、「宅地造成及び特定盛土等規制法に基づく適合証明書交付申請」について、従来は、窓口で申請を受け付けた後に職員が申請データをExcelに手入力し、1件ずつ手作業で審査・証明書発行を行っていました。

※「宅地造成及び特定盛土等規制法に基づく適合証明書交付申請」とは、宅地造成及び特定盛土等規制法の規制対象外であることの証明をする書面交付を申請する手続きです。

現在では、グラファーでオンライン申請が行われると、申請データが自動的にkintoneに連携され、証明書データが自動作成されるようになりました。その後の庁内決裁のワークフローもkintone上で組まれているため、証明書発行の手前までの業務全てがデジタル化されており、職員の業務負荷は従来の約半分の工数まで減少しました。

証明書交付の多くの業務が自動化できるようになった。


他には、「産後ケア事業実施結果報告書」について、従来は産後ケア施設が実施状況や金額を一組の親子ごとに手書きで記入して申請していました。計算が煩雑なためミスも多く、職員に大きな負担がかかっていました。

現在では、産後ケア施設からオンライン申請が行われると、データがkintoneに自動連携されます。kintone側で自動計算が行われるように設定しているため、産後ケア施設側では計算の必要がなくなりました。職員は手入力や毎回の計算の必要がなくなり、オンライン申請されたものについては8割の負荷削減につながる見込みです。

※産後ケア事業実施結果報告書については、2025年11月現在、検証段階です。

※「産後ケア事業実施結果報告書」は、産後ケアを実施する助産施設が産後ケアの実施内容などを提出し、その内容に基づいて審査・委託料の支払いが行われるものです。

これまでは金額の計算ミスによる再計算や、誤りがあった場合の産後ケア施設との連絡のやりとりに時間がかかっていたが、自動化により大幅な事務軽減に。

——他にはどんな業務に活用していますか。

金田:他には、市民からのアンケート収集および集計や、会議室の予約、会計年度任用職員のメールアドレス登録などにも自動連携を活用しています。

例えば、市民からのアンケート収集では、オンライン申請でアンケートを受け付けると、データが自動的にkintoneに連携されます。kintoneは集計機能が豊富なため、わざわざExcelで集計することなく、事前設定に基づいてリアルタイムに集計業務を進めることができます。

会議室の予約については、オンライン申請で予約を受け付けて、kintoneでカレンダー形式で表示することで、専用のシステムを入れることなく簡単に管理することができるようになりました。

会計年度任用職員のメールアドレスの登録については、従来はオンラインでの登録の都度、ダウンロードして手作業でリスト化していたのですが、リスト化が自動化できるようになりました。

政策局DX・AI戦略室 DX推進担当係長 金田 典子氏

職員からは「とても便利」という声

——便利で効果も大きい反面、職員にとっては設定の難易度が上がるのではないかという懸念もあります。実際に自動連携を利用している職員からは、どのような反応がありましたか。

金田:職員からは「とても便利に使っている」、「他の手続きにも拡大していきたい」といった前向きな声が届いています。

職員からは前向きな声が寄せられている。

——職員の活用が進んでいるのですね。導入はどのようなステップで進めましたか。

金田:まずは1カ月間の実証実験を行い、運用フローや職員の操作性などを確認しました。その結果、業務に支障なく運用できる見通しが立ったため、本格導入というステップで進めました。

——職員に対して設定のサポートなどは行ったのでしょうか。

中尾:職員向けのヘルプデスクやマニュアルを用意しました。ヘルプデスクについては、外部委託して「北九州市デジラボヘルプデスク」として運用しています。マニュアルについては、グラファーから提供されたものに対して、検証内容を踏まえてより詳細な説明を加えることで、さまざまなケースに対応できるように工夫しました。

職員向けに、実際の画面を用いたマニュアルを用意するとともに、最新情報を定期的に知らせている。

——丁寧な支援を行っているのですね。

中尾:せっかく導入しても職員がうまく使えなければ効果は限定的になります。問い合わせがあった内容や検証の結果については、マニュアルを随時アップデートすることによって、職員一人ひとりが仕組みを理解し、安心して活用できるように努めています。

中邑(北九州市デジラボヘルプデスク):kintoneはさまざまな種類の業務システムを構築することができるため、別の施策として、kintoneの活用事例についても定期的に取り上げています。このような事例を見て「やってみよう」と考える職員も増えています。

政策局DX・AI戦略室(手続きオンライン化推進担当) 中尾 友美氏

行政デジタル化の次なる挑戦へ

——オンライン申請のkintone連携に関しては、今後どのような取り組みを進めていきますか。

金田:オンライン申請のkintone連携については、まだ始まって間もない取り組みです。有効な活用事例が生まれている反面で「便利そうだけど、まだ使い方が分からないので教えてほしい」という職員の声もあるため、丁寧にサポートしていくことで職員が仕事を進めやすい環境を整えていきたいと考えています。

——市全体のデジタル化の取り組みに関しては、どのような方向性を描いていますか。

金田:北九州市では「対象手続きのオンライン化率100%」を目指してデジタル化を推進しており、達成率は84%です(2025年4月現在)。一方で、オンライン化されていない手続きについては、業務フローの見直しが必要など、難易度が高いものが残っている状況です。そのため、申請フォームの作成支援などを行うことによって、現場の課題解決に取り組んでいます。こうした積み重ねにより、業務の効率化と市民サービスの質の両立を図り、職員も市民も使いやすいデジタル行政の形を目指していきます。


取材・写真:柏野 幸大 / 取材・文:東 真希(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)

北九州市が取り組む、オンライン申請のkintone連携は「Graffer スマート申請」によって実現できます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしで分かりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。

グラファー Govtech Trends編集部

Govtech Trends(ガブテック トレンド)は、日本における行政デジタル化の最新動向を取り上げる専門メディアです。国内外のデジタル化に関する情報について、事例を交えて分かりやすくお伝えします。

株式会社グラファー
Govtech Trendsを運営するグラファーは、テクノロジーの力で、従来の行政システムが抱えるさまざまな課題を解決するスタートアップ企業です。『プロダクトの力で 行動を変え 社会を変える』をミッションに掲げ、行政の電子化を支援しています。

北九州市

人口:
96.13万人(令和2年国勢調査)

導入サービス:
Graffer スマート申請
Graffer 手続きガイド
お悩みハンドブック