空港運賃助成金申請をオンライン化。県および6市の共同調達でフロントヤード改革を進める北秋田市
国内事例

空港運賃助成金申請をオンライン化。県および6市の共同調達でフロントヤード改革を進める北秋田市

2025.07.15 Tue

空港運賃助成金申請のオンライン化を進める秋田県北秋田市。県および6市で「Graffer スマート申請」を共同利用することによって、コスト削減や運用負担軽減といった課題を解決しながら、市民の利便性向上と職員の業務効率化を実現しています。

対応工数を窓口の半分以下に短縮

——空港運賃助成事業におけるオンライン申請について、詳しく教えてください。

坂本:空港運賃助成のオンライン申請は、北秋田市民を対象に実施している大館能代空港の運賃助成の申請手続きを、スマートフォンやパソコンで行える仕組みです。

市民は、スマートフォンやパソコンから簡単に助成金申請が行えるようになった。

助成自体は数年前から行っており、2025年に申請方法としてオンライン申請を新たに追加しました。

総務部総合政策課政策係 主査 坂本 康彦氏

——オンライン化によってどのような効果がありましたか。

千葉:従来の窓口や郵送での手続きと比べて、オンライン申請では1件あたりにかかる職員の対応時間を半分以下に短縮できました。窓口や郵送の場合、1件あたり10分以上かかっていましたが、オンライン申請では5分以内で対応できるようになっています。

1件あたりの職員の対応時間が半分以下に短縮された。

——他にはどのようなメリットがありましたか。

千葉:記載事項の誤りや添付書類の抜け漏れなど不備率の減少にもつながっています。これまで郵送による手続きでは、約半数に不備が発生しており、その都度、電話でのやりとりが発生していました。電話がつながらない場合は書面でお知らせを送付したり、場合によっては自宅まで訪問したりすることもあるような状況でした。

総務部総合政策課政策係 主任 千葉 優奈氏

一方、オンライン申請ではシステム上で自動入力制限が入るため、不備率が大幅に減少しました。仮に追加で連絡をとる際にも、申請時に登録されたメールアドレスに連絡することによって、やりとりのスピードは大幅に向上しています。

——市民からはどのような反応が届いていますか。

千葉:実際にオンライン申請を利用した市民からは、「来庁しなくてよいので楽になりました」「使いやすい」といった声が寄せられています。北秋田市は高齢者率が高いため、導入前は利用してくれるのかどうか不安がありましたが、実際には、30〜50代を中心に多くの市民の活用が進んでいます。

市民からはポジティブな反応が届いた。

県および6市による共同利用で、調達の負担を10分の1以下に

——市民の利便性向上と職員の業務負荷軽減につながっているのですね。取り組みのきっかけは何だったのでしょうか。

工藤:秋田県および6市で共同利用する、電子申請システムの刷新がきっかけとなりました。北秋田市では旧システムの頃は利用がそれほど進んでいなかったのですが、今回のシステム刷新をきっかけに、オンライン化に関するさまざまな見直しを進めることができました。

——県主導の共同利用に対して、どのようなメリットを感じていますか。

工藤:共同利用では、調達に関わる主な事務を県が担うため、市としては大きな負担なく電子申請システムを導入することができます。市だけで調達事務を行った場合の、10分の1以下の負担で調達を行うことができたのではないかと思います。

総務部総合政策課デジタル化推進係 主任 工藤 晃大朗氏

——調達事務の負担をかなり削減することができるのですね。

工藤:当市だけで電子申請システムの導入や刷新を行おうとした場合、最低でも1年ほどの期間に加えて、選定に伴う膨大な工数がかかることが想定されます。当市のデジタル化推進係は現在3名体制で、庁内のシステム管理からDX推進まで、多岐に渡る業務を担当しています。このような体制の中で電子申請システムを見直すのは非常に大きな負荷となります。こうした点で、県主導での共同利用には大きなメリットを感じています。

——他にはどのようなメリットを感じていますか。

工藤:導入している自治体同士でナレッジを共有できるのも、大きなメリットです。最近は、近隣自治体からオンライン決済の徴収方法や業務フローについて具体的な事例を聞くことで、スムーズに検討を進めることができました。また、他市が「Graffer スマート申請」でどのような手続きをオンライン化しているのかを知ることで、手続きの選定にも役立てられています。

受付開始当日からオンラインで申請が届く

——もともとは窓口と郵送で申請を受け付けていたということでしたが、オンライン申請の開始後、どのくらいの期間で利用がありましたか。

千葉:オンラインでの受け付けを開始した当日から申請が届き、非常に驚きました。直近では、毎日10件ほどのオンライン申請が届き、市民に浸透している様子がうかがえます。

——オンラインでの申請数はどのように変化していますか。

千葉:導入前は、窓口の申請が9割、郵送が1割という状況でしたが、現在は窓口が7割、オンラインが3割、郵送はごくわずかにまで減少しています。これまで郵送していた方に加えて窓口に来ていた方の一部がオンラインに移行したと考えられます。

開始から間もなく、オンラインが全体の3割に増加した。

分かりやすい申請フォームになるよう工夫を重ねた

——市民の活用が広がっていますが、導入にあたって、うまくいかなかったことなどはありますか。

千葉:今回はじめてオンライン申請のフォームを作成したのですが、私自身パソコンの操作が得意ではなかったこともあり、最初は「使いこなすのが大変そうだ」と感じていました。

しかし、「一回失敗してもいいからとにかく作ってみよう」という気持ちで着手したことで、段階的に改善を重ねながら作り上げることができました。進め方としては、まずは自分でフォームを作成し、その後、課内のメンバーに実際に申請してもらい、利用者目線での意見を集めながら少しずつ改善していきました。

——オンライン申請の開始後も申請フォームの改善は続けているのでしょうか。

千葉:オンライン申請が始まった後も、市民からのフィードバックをもとに申請フォームに改善を加えています。例えば、当初は添付ファイルの形式が限定されていたのですが「他の形式にも対応してほしい」という声を受けて、さまざまな形式の添付ファイルに対応できるように改善しました。フォームの細かい部分についても、気付いたことがあればすぐに修正することで、市民がよりストレスなく申請できるようにしています。

広報面では漫画も活用

——市民に対するオンライン申請の広報としては、どのような取り組みを行っていますか。

千葉:市の広報紙や、公式LINE、ホームページ、空港や市役所、公共施設などに掲示したポスターなどを通じてオンラインで申請できることを市民に周知しています。

——幅広く広報を行うことで、利用を促進しているのですね。

千葉:例えば広報紙では、漫画を使ってオンライン申請のメリットを分かりやすく紹介するなど、親しみやすく伝える工夫をしています。視覚的に伝えることで、より多くの市民に関心を持ってもらえるようにしました。

誰にでも分かりやすい漫画の形で市民に広報を行った。

今後も、市民に寄り添いながらデジタル化を推進していく

——今後はどのような取り組みを行っていきますか。

千葉:オンライン申請の利用は着実に広がってきていますが、依然として7割の方が窓口で申請を行っている状況です。その中にはスマートフォンなどのデバイスを利用するのが難しい方もいれば、そもそもオンライン申請の存在を知らない方もいるのではないかと思います。そのため今後は、市役所に訪れた方が待ち時間にオンライン申請について知るきっかけになったり、待ち時間に電子申請を済ませたりできるよう、ポスターなどを活用した広報も検討していきたいと考えています。

坂本:現在も各種申請のオンライン化によってペーパーレス化を進めていますが、さらに見直せる部分がないかを検討していくことも今後の課題です。あわせて、文書管理システムの電子決裁機能についても検討していくことによって、対応できる手続きの幅が広がり、フロントヤード改革の「市役所に行かせない取り組み」のさらなる充実にもつながっていくのではないかと思います。市民の利便性向上と職員の業務効率化の両立を目指して、引き続き取り組んでいきます。

工藤:北秋田市は高齢化率が高いため、高齢の方にもオンライン申請を安心して利用してもらえる環境づくりも欠かせません。今後はオンライン申請の使い方講座などを通じて、操作に慣れてもらえるような機会を継続的に設けていきます。職員のバックヤード業務についても、より効率的かつ正確な業務運用が実現できるよう推進していきます。

取材:柏野 幸大 / 取材・文:東 真希 / 写真:菅原 大(Govtech Trends編集部)
(※文中の敬称略。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。)

北秋田市が取り組む、助成金申請は「Graffer スマート申請」によって実現できます。複雑なプログラミングや手続きは必要ありません。情報の追加や変更も追加費用なしで分かりやすく設定することができます。費用や導入期間などについては、無料お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。

グラファー Govtech Trends編集部

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北秋田市

人口:
3.02万人(令和2年国勢調査)

導入サービス:
Graffer スマート申請