先取りしておきたい!自治体の調達事務を効率化する「デジタルマーケットプレイス(DMP)の基本」デジタル庁インタビュー特別編
2024年秋頃を目標に、デジタル庁では「デジタルマーケットプレイス(DMP)」の本公開に向けた準備が進んでいます。DMPについては、「名前を耳にしたことはあるけれどよく分からない」という行政職員の方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、DMPの仕組みや、先取りで理解しておきたい知識について、デジタル庁企画官の吉田泰己氏に伺いました。
※本記事に紹介されているDMPの機能は開発予定のものを含むため、予告なく変更となる可能性があります。
デジタル庁 企画官 吉田泰己(よしだひろき)氏
Part1. DMPとは?
デジタルマーケットプレイス(以下、DMP)は、国の行政機関や自治体が事業者によって登録されたクラウドベースのソフトウェア(SaaS)とその利用支援を仕様に合わせてカタログサイトから検索し、絞り込み、その結果を証拠として調達に利用できる新しい方式です。
DMPカタログサイトはeコマースの商品サイトをイメージすると分かりやすいかもしれません。職員はカタログサイトを利用して、調達だけでなくそれぞれのサービスに関する情報を収集したり、調達時に必要な資料として使用したりすることができます。
事業者は、カタログサイトに自社のソフトウェアや利用支援サービスを登録することで、国や自治体の認知拡大と販売の拡大が行いやすくなるメリットがあります。2023年度からデジタル庁では、DMPカタログサイトの実証版をリリースしており、こちらのアドレスから見ることができます。
2024年度後半にDMPカタログサイトの正式版がリリースされ、上記の調達形式でソフトウェア調達が可能となる見通しです。
Part2. DMPカタログサイトが活用できる業務
それでは実際にDMPカタログサイトは、調達に関わるどのような業務に活用することができるのでしょうか。主な活用シーンについて以下で簡単にご紹介します。
【業務①】事業企画・予算要求段階での情報収集
まずは情報収集です。これまではインターネット上で検索したり、サービス導入している他の行政機関、自治体から聞き取りしたりするなどの方法で、ソフトウェアの情報を収集する必要がありました。DMPカタログサイトを利用することによって、掲載されたさまざまなソフトウェアの情報から、目的に近いものをより効率的に探し出すことができるようになります。
例えば特定のセキュリティ認証を持っているという要件を満たすことが必要だとした場合、これまでは必要な情報をベンダーにヒアリングしたり、ネットや紙面を参考に確認していたのではないでしょうか。事業者ごとに公開している項目はバラバラなため、記載されていない場合にはその都度問い合わせる必要があったのではないかと思います。
DMPカタログサイトでは、さまざまな項目を横串で確認しながら、効率的に仕様を把握することができます。複数の絞り込み条件を指定して、候補のソフトウェアを絞り込むことも可能です。これにより、事業の企画段階、予算要求段階において利用が可能なソフトウェアの検討をつけることが可能となります。
【業務②】事業企画段階・予算要求段階での事業費見込みの把握
2つ目は事業費見込みの把握です。従来は予算要求の前段階で、事業者に依頼して概算費用に関する情報を得る必要がありました。DMPカタログサイト正式版では、事業者に参考価格を登録いただき、比較することができるようにすることを予定しています。これにより1社1社に概算費用を確認する手間を省き、より簡単に概算の事業費を把握することが可能です。また、予算要求時にも登録された参考価格情報から必要なライセンス数などを加味して大まかな予算要求額を推計することができるようになることが考えられます。
【業務③】調達に必要な文書作成の簡素化
3つ目は調達仕様書や理由書の作成です。これまで、調達仕様書や業者選定理由書、随意契約理由書等、調達に必要な文書はすべて人の手によって作成されていました。システムに関する知識がない職員が、システムに関する調達仕様書を作成するのは大変で、時間をかけて手探りで進めているケースも見受けられます。
DMPでは、調達仕様シートといった形でソフトウェア調達の際に検討しなければならない項目をチェックボックスでチェックする形で調達したいソフトウェアの仕様を特定し、これに沿った検索条件で、カタログサイトで検索することによってソフトウェアを絞り込み、その情報を電子媒体で出力できます。これを随意契約や指名競争入札における業者選定理由書や随意契約理由書として使うこともできるため、工数の大幅な削減が期待できます。
Part3. 自治体へのメッセージ 〜DMPの狙い〜
DMPの狙いは、行政機関、自治体における調達迅速化と中小・スタートアップも含む多様なソフトウェア事業者の参入促進です。
行政機関、自治体はDMPを利用することによって、ソフトウェアやサービスの調達にかかる手間を減らし、調達期間を短縮することができます。また1からソフトウェアを開発するのではなく、既に完成しているソフトウェアを調達することで迅速な導入が可能となり、行政DXのさらなる前進が期待できます。
一方、事業者の目線では、行政機関、自治体へのソフトウェア販売にかかる負担を軽減することができます。これまでは、煩雑な調達手続きや、行政側の調達ニーズの不透明性から、中小事業者やスタートアップが公共調達に参入するハードルは高く、一部の限られた企業しか参入できない状況でした。DMPを通じて幅広い行政機関、自治体の目に触れ、良いソフトウェアであれば販売を拡大できるチャンスが広がるほか、調達プロセスの簡素化を通じて中小事業者・スタートアップも調達に参加できるような参入障壁の引き下げが図られることを期待しています。
2014年にDMPをスタートさせたイギリスでは、2009年時点では18社のベンダーが国のIT調達額の8割を占めていました。DMPを機に選択肢が増え、2021年には中小事業者・スタートアップの登録数は9割以上となり、調達金額もDMPを通じた調達額の4割を占めるまでになっています。日本でもDMPによって、行政DXと国内ソフトウェア産業振興の両方に貢献することを目指しています。
2024年4月現在はカタログサイトのα版が公開されているため、試しにご利用いただき、ご意見をお聞かせください。
DMPに関するお問い合わせ先
デジタル庁 戦略・組織グループDMP担当
https://www.dmp.digital.go.jp/inquiry/
DMP(α版)に掲載されているグラファーのサービス
手続きガイド:https://www.dmp.digital.go.jp/software/?id=76005f4e-cbae-4801-8e0e-1e103a3c0a24
グラファー Govtech Trends編集部
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