グラファーでは「生成AIを企業でどう使えばいいか分からない」「生成AIによる成果が出ない」といった課題に対し伴走型の支援や研修、プロダクト開発を通じて一気通貫で支援します。生成AI活用でお困りの方はお気軽にご相談ください。
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目次
- グラファーでの社内情報管理について
- 「情報はあるのに、探せない」現状。そこで思いついた“ひと工夫”
- チャットツールから、esaの情報を探せたら?
- esaアシスタントで、情報探しをもっと簡単に
- esaアシスタント開発に至るまでに
- Slackから社内ナレッジにたどり着く、esa×Geminiでつくる検索アシスタントの設計
- 1.質問の意図から検索キーワードと関連カテゴリを自動生成
- 2.自動生成した検索キーワードと関連カテゴリから該当記事を絞り込み
- 3.絞り込んだ記事から、最初の質問に対する回答を生成
- ハルシネーションを減らすための工夫
- ポイントは、"AIに「全体感」を渡す"こと
- 質問回答のその先へ
グラファーでの社内情報管理について
グラファーでは、社内の出来事や業務ナレッジを蓄積する場としてesaというサービスを活用しています。各担当の社員がそれぞれの記事を執筆し、管轄はありつつも、サービスや業務運用に関する知見は各自が主体的に記載する文化です。内容が古くなっていると気づいた場合は、見つけた人が直接修正するか、記事のオーナーに更新を依頼する運用をとっています。記事にはバージョン管理が導入されており、履歴を追いながら常に最新の情報を参照できるのが特徴です。
情報探索の基本フローはシンプルです。何か分からないことがあれば、まずesaで検索します。esaはキーワード検索に対応しており、関連度の高い順に結果が並ぶため、上位の記事から順に開いて目的の情報を探します。社内専用のグーグル検索のようなものですね。もし該当する記事が見つからない場合は、次の手段としてチャットツールであるSlackを通じて該当部署に質問し、必要な情報や文脈を補完していく、という流れが定着しています。
例)検索ワード=休暇

「情報はあるのに、探せない」現状。そこで思いついた“ひと工夫”
実際、esaにはチームの知見やノウハウが数多くストックされています。
しかし、いざ必要なときに検索してみると、どの記事を見ればいいのかわからない、結局ほしい情報を見つけるまでに時間がかかってしまう、といった課題がありました。
有力な情報も、探し出せなければ意味がありません。
チャットツールから、esaの情報を探せたら?
「Slackで探したい情報を検索し、そのまま回答が得られたらどうだろうか?」といったアイデアが生まれました。Slackは日常的に使っているコミュニケーションツールです。そこから直接、esaにストックされた情報へアクセスできれば、検索する手間も省けます。
esaアシスタントで、情報探しをもっと簡単に
ドキュメントなどで特定の言葉を見つけたいとき、私たちはよくキーワード検索を使いますが、人に質問する時は文章で質問をしますよね。esaの中にある情報を“人に質問するように”呼び出せるようにしたのが、esaアシスタントです。
Slack上で質問するだけで、関連するesaの記事を探し出して回答してくれる。まるでチーム専属のリサーチアシスタントのように、必要な情報へスムーズに導いてくれます。
esaアシスタント開発に至るまでに
esaアシスタントを設計するにあたって、必要になる「カテゴリの一覧をとる」機能が存在しないことが判明しました。そこで開発元である企業にやりたいことを伝えたところ、ベータ版として機能開発を行ってくださいました(ありがとうございます!)。
Slackから社内ナレッジにたどり着く、esa×Geminiでつくる検索アシスタントの設計
社内で手軽に使ってもらうため、まずはSlackボットのフレームワークを使いました。これにより、ユーザーはSlackで質問するだけで使えるようになります。裏側ではGeminiを使い、esaから情報を取得して回答を生成します。よく社内文書や規定類の問い合わせ対応の手法として用いられるRAG(検索拡張生成)ではなく、質問のたびにesaへ全文検索をかける設計を採用しました。Geminiはロングコンテキストに対応しているため、ヒットした記事をまとめて投入しても処理でき、精度も高く保てます。
しかし、いきなり全ての記事を検索することはGeminiの最新モデルでも不可能のため、以下のような順番で検索・生成を行っています。
1.質問の意図から検索キーワードと関連カテゴリを自動生成
まず、ユーザーの質問を受け取ると、Geminiが質問の内容から検索キーワードとカテゴリを自動生成します。カテゴリは社内で定義している一覧をすべてAIに渡しておき、質問内容から適切そうなカテゴリを三つほど選ばせます(例:製品、プロダクト、[プロダクトの個別名称:スマート申請]など)。同時に、質問文から複数の検索キーワードも作成します。
2.自動生成した検索キーワードと関連カテゴリから該当記事を絞り込み
自動生成したこれらの検索キーワードとカテゴリを組み合わせてesa内を検索し、該当する記事を絞り込みます。
3.絞り込んだ記事から、最初の質問に対する回答を生成
次に、その絞り込んだ記事の本文をまるごとGeminiに読み込ませ、そこから元の質問に対する回答を生成します。Geminiはロングコンテキストに対応しているため、グラファー社内で管理している記事の量であれば全文検索が可能です。
ハルシネーションを減らすための工夫
カテゴリという情報構造とキーワード検索を組み合わせることで、社内の文脈に沿った解釈が可能になり、的外れな回答を減らしています。マルチターンの対話にも対応しており、追加質問が来た場合でも、前の文脈と参照記事を踏まえて回答を更新できます。
なお、アシスタントは基本的にesaの情報を用いるよう制限しており、回答の根拠が一般情報ではなく社内ナレッジに紐づくよう設計しています。Slackから自然に質問するだけで、適切なesa記事を根拠にした回答へたどり着けるのが、このアプローチの価値です。
作成したツールの利用イメージ

ポイントは、"AIに「全体感」を渡す"こと
このアシスタントで最も大事にしているのは、AIがesaを見たときにまず「全体感」をつかめる状態を用意することです。人間も全体感を把握していない人が適切な情報にたどり着きづらいことと同様で、普段私たちが情報を探すときに無意識に行っているようなことを、AIにも同じように処理をしてもらっています。
例えば、単にカテゴリ構造だけを渡しても、文脈の幅や粒度が合わないことがあります。そこで、カテゴリに加えて記事タイトルの一覧や記事内のタグをすべて提示し、領域の見取り図を先に把握してもらう設計にしています。タイトルやタグなどは情報の要点や範囲を圧縮して表現してくれるため、AIがトピック同士の関係性を素早く見立てやすいのが利点です。
ユーザーの質問を起点に解釈の幅を広げ、そこから生成したキーワードでesaを検索する。質問→解釈拡張→キーワード検索→必要部分の深掘り、という段階的な取り込みにすることで、情報過多を避けつつ関連度の高い根拠だけを参照できます。
要するに、AIに渡すべきは「俯瞰できる最小限の地図」と「質問から導かれる適切な探索キーワード」。記事タイトルやタグなどで全体感を掴ませ、キーワード検索で的を絞り、必要箇所だけを深く読む。この二段構えが、精度と効率を両立させる鍵になっています。
もちろん、記事のカテゴリ分けや記事自体を最新状態に保っていく必要があるなど、日々取り組むべきことはありますが、それにより新入社員でも素早く適切な情報にたどり着ける環境が維持できます。
質問回答のその先へ
esaアシスタントの次の目標は、単にユーザーの質問に答えるだけの存在を超えることです。esaの記事から得られる知見を土台に、プロジェクトに役立つ「案」を自ら構築し、提案まで踏み込めるアシスタントへ進化させたいと考えています。
たとえば、新入社員向けのオンボーディングフローの提案。過去のドキュメントや運用ノウハウを横断的に捉え、必要なタスク、想定スケジュール、参照記事までをひとまとめにしたプランを提示できれば、立ち上がりの速度と品質は格段に上がります。
目指すのは、情報提供にとどまらない伴走者のような存在です。esa上の最新情報を根拠に、課題の整理、選択肢の提示、具体的な次のアクションの提案までを一連の流れとして支援する。そうした「提案型」の機能が加わることで、意思決定の初動が早まり、チームのワークフローはさらに効率化されていくと考えています。質問に正確に答えることは出発点に過ぎません。その先で、組織の知を編み直し、前に進める力へと変換するアシスタントを目指して、社内の生産性向上に取り組んでいきます。
本記事では、「esa」というサービスを活用したナレッジ管理・問い合わせ対応の効率化についてご紹介をしましたが、別システムにおいても一般的なRAGの手法だけでなく、段階をふまえた社内ナレッジ検索ツールを作成することで解決できる可能性があります。
グラファーでは生成AI活用推進のための支援を行っていますので、ぜひ本記事で気になった方はお気軽にご相談ください。
文:ゴーシュ 凜 / 図:望月 麻由
