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目次
- グローバルでのAI活用はどこまで進んでいるのか
- レポートの要旨
- 【マッキンゼーのレポートより】トップ6%の企業から学ぶAI活用の成功要因
- ポイント1:野心的な目的を定義する
- ポイント2:業務のワークフローを抜本的に再設計する
- ポイント3:強い変革意識を持つ
- グラファーが考える、従来のシステム導入とAI導入との違い
- 目的から考えるためのステップ
- ステップ1:何を実現したいのかを考える
- ステップ2:ワークフローを考える
- AIを導入することがゴールではない
グローバルでのAI活用はどこまで進んでいるのか
2025年11月にMcKinsey & Companyが発表したレポートでは、世界のAI活用は急速に広がりつつも、多くの企業がまだ実験段階にとどまっているという状況が示されています。レポートの中で特に押さえておきたいのは以下のポイントです。
レポートの要旨
88%が、少なくとも1つの業務機能でAIを定常的に使用している。1年前の78%から増加している。
62%が、AIエージェント(※1)の試験導入を進めている。
39%が、AI活用によって企業全体への収益性(※2)に影響を確認しているが、大きな影響を与えるには至っていない。
6%が、AI活用によって企業全体への収益性(※2)に顕著な価値を得ている。
(※1)AIエージェントとは……計画・複数ステップ実行が可能なシステムです。
(※2)企業全体への収益性(EBIT)……利払い前・税引き前利益を示します。
出典:「The State of AI in 2025: Agents, Innovation, and Transformation」
【マッキンゼーのレポートより】トップ6%の企業から学ぶAI活用の成功要因
レポートでは、6%の企業が、AI活用によって企業全体への収益性に顕著な価値を得ていることが明らかになっています。それでは、「これからAI導入を進めようとしている」「AIを導入したが期待した成果が得られていない」という企業は、AIによって収益性を向上している、このような「ハイパフォーマー企業」の行動からどのようなヒントを得られるのでしょうか。

ポイント1:野心的な目的を定義する
まず最初に取り組むべきは、AIを使って「何を達成したいのか」という事業レベルの目的を明確にすることです。このとき、効率化だけではなく、「顧客ターゲティングの改善」や「新しい製品機能による収益向上」「新規ビジネス創出」「ビジネスモデルの変革」といった、経営に直結する野心的な目標を設定します。
今回の調査でも、ハイパフォーマーの82%が、AI活用の目的に「成長」を掲げており、それ以外の企業(50%)の1.6倍に達する割合となっています。「イノベーション(新しいサービス開発など)」を目的に設定する割合も、ハイパフォーマーは79%で、それ以外の企業(50%)の1.6倍です。多くの企業が効率化を目的とする中、ハイパフォーマーはAIを売上を生み出すための武器や、新しいビジネスや価値を生み出すものとしてとらえています。
ポイント2:業務のワークフローを抜本的に再設計する
成長やイノベーションを実現するためには、「現在のやり方をAIに置き換える」という発想ではなく、全く新しいプロセスに作り直すというアプローチが有効です。
今回の調査では、ハイパフォーマーの55%が「AIを導入する際にワークフローを根本的に再設計する」と回答しています。これは、一般企業の20%と比較して大きな差です。AIを単なる部分最適の道具として使うのではなく、事業の根幹から変革を起こすための戦略的なエンジンとして捉えていることが、ハイパフォーマーの際立った特徴だと言えます。
ポイント3:強い変革意識を持つ
ビジネスを抜本的に変革するという「強い変革意識」を持つことも重要です。
今回の調査では、「今後3年間で、AIを活用して自社のビジネスを変革する意図がある」という設問に対して、ハイパフォーマーの50%が「革新的変化」を意図していると回答しました。これはそれ以外の企業(14%)の約3倍です。既存業務にAIを「付け足す」のではなく、AIの能力を最大限に引き出すために「仕事のやり方そのものを変革」しようとしていることが、高い成果を生む鍵となっている可能性があります。
グラファーが考える、従来のシステム導入とAI導入との違い
それでは、これらのレポートの内容を踏まえてグラファーが考える、従来のシステム導入とAI導入との違いについてご紹介します。
このようなAI導入プロジェクトは、これまでの一般的なDXのためのシステム導入とは異なる点にも注意が必要です。
従来のシステム導入では、「既存業務の効率化」が主目的であり、組織や人材には新システムを活用しながら、現状の業務プロセスをより円滑に回す役割が期待されていました。一方で、生成AI導入は「業務そのものの再構築」や「これまでに存在しなかった価値提供の実現」を目的とします。そのため、ワークフローや責任分解点の見直し、業務ルールの再定義、担当者の役割やスキル転換といった、より大きな変革が求められています。
つまり、AI導入はテクノロジーの導入プロジェクトではなく、事業・組織変革プロジェクトだと言えます。だからこそ、変革の起点となる「目的設計」と「ワークフローの再構築」が欠かせないのです。

目的から考えるためのステップ
それでは、実際に目的を設定し、ワークフローの変革まで成し遂げるためにはどのように考えればよいのでしょうか。
ステップ1:何を実現したいのかを考える
「成長」や「イノベーション」という観点で、自社が実現すべきことは何なのかを考えます。効率化にとどまらず、以下のような野心的な目標を検討します。
新しい収益を生み出す新規事業
顧客体験の圧倒的な差別化によるシェアの拡大
全社データを活用した新サービス
特定のセグメントで売上200%を達成する
このとき、目的の水準が低いと、AIの活用は部分最適で終わりやすくなります。そのため、ビジネスモデル変更も含めた観点で達成したい内容の合意形成を図ります。
ステップ2:ワークフローを考える
ステップ1で検討した目的を達成するために、ワークフローを再設計します。AIを中心に据えて、業務の流れ自体をゼロベースで作り替えます。「現在の業務をAIが代替する」のではなく、例えば、以下のような視点でAIを基点にして「何を・誰が・どこで・どの順番で行うのか」を再定義します。
AIを中心に据えてプロセスを自動化し、担当者の役割を変更する
AIが判断して必要なときだけ人が介入するようなワークフローを組み立てる
部署ごとに個別対応するのではなく、1部署が体験を一気通貫で最適化する
このとき、目的達成に対して価値を生み出していない工程はないか?という観点で見直し、人とAIの最適な役割分担を設計することが重要です。
AIを導入することがゴールではない
AI活用はどの企業も多かれ少なかれ取り組んでいる一方で、そこから「利益」にまでつなげられている企業はごくわずかです。今回のレポートを通じて、その違いを生み出しているのが「経営レベルでの野心的な目標設定」、「ワークフローの抜本的な再設計」、そしてその「ビジネス変革をやり切る強い意志」であることが見えてきました。
しかしこれらは一朝一夕に実現できるものではありません。多くの企業がAI活用の正念場を迎える中、 「まず導入」というフェーズから卒業し、AIを中心とした業務変革へと踏み出すことができれば、企業の成長機会を広げ、持続的な競争力強化につなげることができるのではないでしょうか。
文:東 真希 / 図:望月 麻由
