「ステップ・バイ・ステップではなく、あえて一気に」リコーITソリューションズのAI駆動開発を中心とした組織変革

こうした成果の背景にあったのが、実践型研修「AI駆動開発プログラム」です。「AIを極限まで使いこなせばここまでできるという到達点を体感できた」というプログラムの導入背景や具体的な成果、そしてビジネスモデルの変革を見据えた今後の展望まで詳しく伺いました。
背景
・生成AIの活用は社内でも一定程度進んでいたが、ソフトウェア開発のあり方そのものを変えるには至っていなかった
・生成AIを前提に開発プロセスを変革できる企業とそうでない企業の間で、今後決定的な差が生まれるという問題意識があった
・「リコースタンダード」に代表される、高品質なソフトウェア開発を支えてきたリコー独自の品質基準を維持しながら、AIによる効率化・生産性向上をどう両立させるかが課題だった
成果
・AI活用と開発プロセスの見直しにより、当初11人月と見積もっていたタスクを約1.5人月で完了(実質86%の工数削減)
・設計段階からAIに設計資料の作成を支援させ、人によるレビューと組み合わせることで、ユニットテストの工数を従来比約50%削減
・セキュリティの定常業務では、AI向けテンプレートの整備により、半日かかっていた作業が約1時間に短縮
※いずれも特定の取り組みにおける実績であり、対象範囲や開発条件により効果は異なります。
一気に目線を引き上げる「ぶっ飛んだ研修」を選んだ理由
――グラファーの「AI駆動開発プログラム」を受講したきっかけは何だったのでしょうか。
印田:生成AIの登場以降、社内では一定の活用が進んでいました。ただ、ライセンスを配っても使う人は使う、使わない人は使わないという状態で、組織全体としての動きにはなかなか広がりませんでした。そのため、現場の自発性に任せるだけでは、これ以上は進まないのではないかと感じていました。
また、生成AIを前提に開発プロセスそのものを変えられる企業と、そうでない企業との間では、今後決定的な差が生まれるという危機感もありました。社内の足並みがそろうのを待っているうちに、その差は開いていきます。だからこそ、外部の力を借りて一気に目線を引き上げるべきだと考え、「AI駆動開発プログラム」の受講を決めました。
――受講を通じて、現場ではどのような変化が起きていますか。
印田:まず数値の面で、社員がAIを使っている時間が、以前と比べて目に見えて増えています。
組織ごとのAI利用状況をヒートマップで可視化し、その変化を追っているのですが、受講した組織は前後を比べて色が一気に濃くなりました。AIが「使える人が使うツール」から、チーム全体で当たり前に使う開発手段へと変わったことが、数値の上でもはっきり表れています。
――研修を振り返って、特に印象に残っていることはありますか。
印田:最初は「本当にここまでできるのか」と半信半疑だったメンバーが、最後の成果報告の場では全員が生き生きと語っていたのが印象的でした。オフィスに戻ってきた瞬間、明らかに高揚しているチームもあり、手応えをつかんだ社員が、回を重ねるごとに増えていったことにも驚きました。私も第1回に参加したのですが、良い意味で「ぶっ飛んだ研修」だと感じる場面が多々ありました。
取締役 専務執行役員
CTO
ITソリューション事業本部 本部長
印田 悦久様
――数ある選択肢の中から、グラファーのプログラムを選ばれた決め手は何だったのでしょうか。
印田:最初にお話を伺ったとき、よい意味で「これまでにない研修をやっていただけそうだ」という期待感がありました。一般的な座学や実習を組み合わせた研修はこれまでいくつも見てきましたが、グラファー社のプログラムは設定されているゴールが突き抜けて高く、「本当にそこまで到達できるのか」と思わせるものでした。その水準の高さ自体が、カリキュラムとして大きな魅力でした。
多くの企業は、AI活用を「いきなり大きく変えるのではなく、ステップ・バイ・ステップで進めよう」と考えがちです。しかし私たちは、「AIを極限まで使いこなせば、ここまでできる」という到達点を、社員にできるだけ早く体感してもらうために、あえて一気に目線を引き上げることが必要だと感じていました。こうした意味で、最初から高いゴールを掲げるグラファーのアプローチが、まさに私たちの狙いと合致していました。
現場では、当初11人月を見込んでいた開発タスクをわずか1.5人月へ
――「AI駆動開発プログラム」の受講によって、現場にはどのような変化がありましたか。
淺野:伴走支援の中で、パイロット的に既存製品の機能開発に取り組んだ結果、当初は11人月かかると見積もっていたタスクを、わずか1.5人月で完了させることができました。対象の製品は私自身それまで全く触ったことのないもので、本来であれば多人数で長期間かけて進めるような規模の開発でしたが、AIを活用することでやり遂げられたことは、大きな驚きでした。
デジタルサービス&プロダクツ事業本部 エッジデバイス事業センター 第3開発部 第1グループ 淺野 悠太様
山下:開発体制が特定の人に依存しにくくなったことは、大きな変化でした。これまでは、その領域に詳しい人が初めから終わりまで対応し続け、障害が出ればまたその人が動く、という属人的な進め方になりがちでした。
一方で、AI駆動開発を取り入れてからは、対象領域の経験がないメンバーでも、有識者に頼りきることなく開発を進められるようになりました。判断に迷う場面でも、AIが選択肢やパターンをあらかじめ示してくれるため、手戻りが少なくて済みます。結果として、ケアレスミスが減り、レビューする側の負担も軽くなっています。
――テスト工程など、ほかの工程ではどのような効果がありましたか。
星野:テスト工程にも大きな変化がありました。設計段階からAIに設計資料の作成を支援させ、人によるレビューと組み合わせるようにしたことで、ユニットテストの工数を従来比で約50%削減できました。後工程のテストでも約20%、テスト全体では約30%の削減を見込んでいます。テーマによっては効果がさらに大きく、ユニットテストを普段は自分で書く場合と比べ、約80%削減できたケースもありました。
ITソリューション事業本部 データアナリティクスセンター 第1開発部 第3グループ 星野 彰太郎様
及川:障害対応のチームでもAIによる解析が進んでいます。AIがなければ解決に時間を要したであろう事象が短期間で片付いた体験を通じて、「これは使わなければ」という空気へと変わってきました。
――チームや組織全体としてはどのような変化が生まれましたか。
淺野:「AI駆動開発プログラム」をきっかけに、チーム全体がAIを中心に据えた開発体制へと変わってきています。受講後、チーム内では「AIにこういうこともできるのでは」という声が自然と挙がるようになり、個々人の活用にとどまらない動きが生まれています。
星野:AIを前提とした業務環境づくりも活性化されています。背景にあるのは、誰が担当しても同じようにAIを動かせる状態をつくりたいという考えです。
具体的には、これまで個人ごとにバラバラだった資料をAIが読み取りやすいマークダウン形式に統一し、複数の場所に散らばっていたコードを集約してAI向けの設定ファイルを準備するようにしています。各工程の作業も、手順をスキルとしてテンプレート化しています。
こうした土台づくりは、定常業務の効率化にも直結します。例えばセキュリティの定常業務では、確認すべきポイントをAI向けのテンプレートとして整備したことで、これまで半日かかっていた作業が1時間ほどで完了するようになりました。
学びを実践に変えた、専門家との定例ミーティング
――プログラムの中で特に学びにつながったものはありますか。
淺野:私自身、特に学びが大きかったと感じるのが、伴走支援で行われたグラファーとの定例ミーティングです。定例ミーティングでは、毎週講師との対話を通じて、その時々の課題を持ち寄り、解決の糸口をその場で見つけていくことができます。こうして活用の引き出しを一気に広げることができました。
――定例ミーティングならではの良さは、どこにありましたか。
及川:定例ミーティングでリアルタイムで具体的な相談ができたことによって、研修で学んだことを実践へとそのままつなげることができました。AIに関する困りごとについても、その場ですぐにアドバイスを受けられるので、迷いなく前に進めたのがありがたかったです。
今後はさらに、ものづくりのあり方を刷新していく
――最後に、今後AI駆動開発をどのように広げ、生かしていきたいかをお聞かせください。
及川:AIを使うことで、これまでなかなか取り組めなかった「緊急度は低いものの、工数が大きく後回しにせざるを得なかったタスク」に着手できるチャンスが生まれてきたと感じています。こうした仕事に踏み込めるようになった意味は大きく、今後はチーム全体でAIの実践例をさらに増やし、その手応えを一人ひとりが実感できる状態にしていきたいと考えています。
山下:AIの活用を広げていくためには、まだ対応が必要な部分もあります。例えばレガシーな環境とAIの出力との間で、文字コードのような細かな不整合が生じることがあります。AIを最大限に生かすには、こうした足元の環境をAIが扱いやすい形に整えていく必要があります。こうした土台を着実に整えながら、価値の創出に注力できる状態を目指していきます。
左から、デジタルサービス&プロダクツ事業本部 エッジデバイス事業センター 第1開発部 第1グループ 及川 玲奈様、山下 沙希様
淺野:実際のプロジェクトへのAI活用も、スピーディに進めていきます。詳細設計やコーディングではすでに十分な手応えがあり、実践の場で、工数削減に直結させたいと考えています。あわせて、まだ使い慣れていないメンバーの支援にも力を入れ、活用の裾野を広げていきます。
星野:直近の課題は、要件定義やレビューといった工程ごとのスキル整備や、資料の集約といった環境づくりです。チーム全体でAIを活用していけるよう、「各自が試し、出てきた課題を定例会に持ち寄って解決することで、これまで人手のみに頼っている業務も、徐々に自動化していく」といった流れを作っていきたいと考えています。
――現場の動きを踏まえ、会社全体として目指す姿をお聞かせください。
印田:当社が何より大切にしているのは、品質です。長年培ってきた「リコースタンダード」という開発プロセスは、その品質を支える根幹であり、これからも揺るがないものだと考えています。
一方で、AIによる効率化と生産性の劇的な向上も、同時に取り入れていかなければなりません。品質を守りながらも、開発のあり方そのものをどう変えていくか。既存のプロセスをAIの時代に合わせて、私たち自身の手で作り変えていく必要があると考えています。
その先に見据えているのは、私たちが提供できる価値の質を、さらに高めていくことです。AIによって開発の生産性が大きく向上する中、長年培ってきた開発力を軸に、より上流の課題解決や、踏み込んだ提案にも取り組んでいきたいと考えています。そのためには、人材の力が欠かせません。AIを使いこなし、新たな領域で価値を発揮できる人材を育てていくことが、これからの成長を支える基盤になると考えています。
※文中の敬称略。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。
生成AIの活用で企業変革を実現する「Graffer AI Solution」
生成AIの活用に対するお悩みはグラファーにお寄せください
「Graffer AI駆動開発プログラム」は、生成AIを開発プロセスのコアに統合し、組織全体の生産性を抜本的に向上させるための伴走型支援プログラムです。ツール活用スキルの習得に留まらず、要件定義から設計、実装、テストに至る開発ライフサイクル全般をAI前提でアップデートする「実践的な型」を組織に定着させます。AIとエンジニアが共創する次世代の開発体制を構築することで、変化の速い市場におけるデリバリー速度の最大化と、事業競争力の強化を支援します。
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