「マネジメント層も巻き込み活用事例が拡大」熊平製作所がスモールスタートから進める生成AI活用

背景
・ChatGPT登場後、開発部門で自発的な活用が始まる一方で、全社的なセキュリティ統制の必要性を認識。
・間接部門の生産性向上という経営課題に対し、生成AIが持つポテンシャルに大きな可能性を感じ、全社推進を決定。
・スモールスタートの方針のもと、企業の信頼性・セキュリティ・価格・担当者のフォロー体制を評価し「Graffer AI Solution」を採用。
成果
・導入から1年で利用率が25%から50%に向上。AI活用が「当たり前」の文化として醸成されつつある。
・開発部門のコーディング速度向上に加え、人事や生産部門でも活用事例が生まれている。
・若手社員のスキル補完やマネジメント層の意思決定支援など、役職や部門を問わず全社的に活用が浸透。
社内では生成AIの活用が「当たり前」の環境に
――熊平製作所では生成AIが登場して間もない頃から生成AIの活用に取り組んでいます。生成AIの導入によって、社内にはどのような変化がありましたか。
松井:導入当初は「生成AIとは何?」「生成AIに書かせるのではなく自分でプログラムを書けばいいのでは?」といった懐疑的な声も少なからずありました。それが今では、何か課題があると「生成AIを使えばよいのではないか」という会話がごく自然に出てくるようになりました。生成AIに限らず幅広いテーマで実施している改善活動の報告会でも、生成AIを活用した改善事例を発表するチームが複数出てくるなど、具体的な変化が生まれています。生成AIを使うことへの心理的な抵抗感がなくなり、積極的に活用して成果を上げようというポジティブな文化が醸成されてきたと感じています。
――生成AIの利用率にも変化がありましたか。
松井:生成AIの利用率については、導入当初は25%ほどでしたが、1年後には50%に向上し、着実に浸透している様子がうかがえます。

情報管理部 部長 松井 雅広様
――社員からは、どのような声が挙がっていますか。
松井:社員から特によく聞かれるのが、「生成AIを壁打ち相手として活用している」という声です。同僚には相談しにくいような内容でも、生成AI相手なら気軽にアイデアをぶつけることができます。そのため、自分一人では思いつかなかったような画期的なアイデアが生まれたり、行き詰まっていた課題の突破口が見つかったりしている様子がうかがえます。
全社に広がる具体的な生成AI活用事例
――特に成果が上がっている活用事例や、特徴的な使われ方があれば教えてください。
小松:開発部門では特に活用が進んでおり、「コーディングが劇的に速くなった」「グラファーは欠かせない存在」「グラファー先生と呼んでいます」といった声が寄せられています。生成AIを活用しながらソフトウェアの開発を進めることで、調査やエラーへの対応、コーディングなどの業務をより効率的に進めることができるようになっています。様々な開発言語に対応しているため、生成AIのサポートを前提に新しいプログラミング言語の習得に挑戦するエンジニアが出てくるなど、自律的なスキルアップにもつながっています。

情報管理部 情報管理グループ 主査 小松 祐様
――他にはどのような活用事例がありますか。
小松:人事部門ではスカウト文面の作成や添削に生成AIを活用しています。全社的には、音声データからの議事録作成もはじめました。文章作成の際は、まず生成AIにたたき台を作ってもらい、その後、人が内容を調整するという流れをとっています。さらに、各部門でもプログラム作成を積極的に行うようになり、業務改善につながっています。
また、若手社員のスキルアップにも効果を発揮しています。例えば、若手社員がお客様へのメールを送る前に、生成AIを使って敬語や表現が適切かを確認する、といった使い方です。上司や先輩が細かくチェックする手間が省けています。

――利用者層としては、どのように広がっていますか。
松井:各担当者だけではなく取締役などのマネジメント層でも活用が進んでいます。例えば事業方針を練る際の壁打ち相手として使ったり、導入当初はAIにまったく興味を示さなかった役員が海外の最新情報を収集・要約するために活用し始め、ほぼ毎日使うなど活用が進んでいます。
スモールスタートから全社定着へ
――ここで改めて、生成AIの導入を検討された背景やきっかけについてお聞かせください。
松井:最初のきっかけは、社会的な注目を集めたChatGPTの登場です。すぐに社内のソフトウェア開発部門で自発的な活用が始まり、他部門からも「業務で本格的に利用したい」という声が挙がるようになりました。一方で、生成AIは便利なツールであると同時に、情報漏洩などのセキュリティリスクも無視できません。そのため、まずは会社として安全な利用環境を整備し、統制を図る必要性を感じていました。
同時に、生成AIのインパクトと、事業や社内業務をこれまでと違う次元に引き上げる可能性も感じていました。過去にはRPAやOCRなどを導入して生産性向上に取り組んできましたが、生成AIほど誰もが直感的に使えて、かつ大きなインパクトをもたらすツールはないと感じます。こうした観点で生成AIは、これまでの仕事のやり方を根本から変え、生産性を飛躍的に向上させる可能性があると考え、全社的に活用を推進することを決定しました。
――守りと攻めの両面から、全社的な活用の検討を始められたのですね。
松井:ただ、当時はまだ費用対効果が見えなかったため、社内での反発も予想されました。そのため、大規模な投資をしていきなり導入するのではなく、まずは小さく始めて試すことを重視して候補を絞り込みました。
――候補を絞り込む中で、「Graffer AI Solution」を選ばれた最終的な決め手は何だったのでしょうか。
松井:理由は大きく4つあります。
まず、企業としての信頼性です。グラファーは広島市など多数の自治体にサービスを提供している点で、信頼性が高いと判断しました。
次に、セキュリティです。入力したデータが生成AIの学習に利用されない、セキュアな利用環境は必須条件でした。
さらに価格の妥当性も重視した点です。他社からは大規模な投資が必要な提案をいただくこともありましたが、グラファーは「スモールスタートで取り組みを進めたい」という我々の方針に合った、導入しやすい価格体系とサブスクリプションモデルでした。
そして最後は、担当の方の熱意あるフォロー体制です。提案時から親身にサポートしてくださっていました。担当の方からは定期的にお声がけいただいたり、新機能やイベントのご案内を頻繁にいただいたりと密なコミュニケーションが取れており、心強く感じています。

全社に利用を拡大するための工夫
――導入後、全社に広めるために、どのような取り組みを行いましたか。
木原:最初のステップとして、全社員を対象とした生成AIに関する研修会を複数回開催しました。特定の部門に限定せず、全部門を必須参加としました。全社で生成AIに関する共通の知識基盤を築き、活用に向けた温度差が生まれないようにすることが狙いです。その上で、さらに深く学びたい部門には追加研修も実施しました。生成AIがこれから社会の中で確実に浸透していくと考え、研修では、生成AIを業務に使う・使わないにかかわらず全社員に注意事項も含めた基礎を学んでもらうことを意識しました。

情報管理部 情報管理グループ 木原 愛未様
――研修の後、本格的に利用を拡大していくために行ったことを教えてください。
木原:研修後には大きく5つの取り組みを行いました。まず1つ目が、導入初期に限定した私的利用の許可です。まずは個人の興味から自由に生成AIに触れてもらうことで、「生成AIは難しそうだ」という心理的なハードルを下げてもらうのが目的です。現在は業務利用に限定していますが、「お試し期間」として設けたことで、その後の業務活用への移行がスムーズになりました。
――効果的な第一歩ですね。利用をさらに広げるために、他には何をされたのでしょうか。
木原:2つ目の取り組みは、利用状況の可視化です。 利用回数を部門別にグラフ化して社内に公開することで、他部門の活用状況を共有し、利用促進のきっかけとしました。
3つ目は、現場を巻き込んだ技術評価です。新しいモデルが公開された際には、推進担当だけで判断するのではなく、各部門から協力者を募って一緒に評価を行いました。「このモデルは〇〇業務には使えるが、△△には不向きだ」といった、現場のリアルな声を収集することができました。
4つ目は、双方向のコミュニケーションを目的としたアンケートの実施です。生成AIを一方的に「便利なツール」として紹介するだけでは定着は難しいと考え、「実際に使ってみてどうか」「もっとこういったことに使いたい」といった要望から、「期待外れだった点」のようなネガティブな意見まで、率直な声を拾い上げることを重視しました。
5つ目は、部門のニーズに寄り添った柔軟な導入支援です。私たちの役割は「Graffer AI Studio」を使ってもらうことではなく、あくまで「生成AIで業務を改善すること」です。そのため、ツールに固執せず、部門のニーズに合わせて各種AIサービスの導入を積極的に支援しました。具体的には、部門が主体となって導入を進め、私たちは情報管理部門としてセキュリティチェックや運用管理といった専門的な部分をサポートする体制を整えました。

――社員の声に丁寧に耳を傾けていったのですね。
松井:中でも意識したのは、生成AIを「全ての仕事をこなす万能システム」ではなく、「業務を少し楽にしてくれる便利なアシスタント」として位置づけることです。「あくまで主役は現場の社員である」というメッセージを伝えることで、誰もが安心して生成AIを試せる環境づくりを目指しました。
まずは「生成AIでできること」と「社内でやりたいこと」のすり合わせから
――これから生成AIの導入を目指す企業へ向けて、実際に試行錯誤を重ねた経験から得られたアドバイスをお願いします。
松井:我々が直面した課題は、大きく2つです。まずは、「生成AIで何ができるか」という共通認識の欠如です。生成AIの得意なことや限界が分からないまま全社展開するのはリスクが大きいと感じました。ヒアリングを通じて社内でやりたいことと生成AIでできることを、丁寧にすり合わせることが重要です。この初期段階での期待値調整が、その後の方向性を大きく左右するのではないかと感じました。
次に社内情報の活用です。「社内データを使って業務を効率化したい」という要望は多かったのですが、その前段階である「社内にどんな情報が、どこに、どう存在するのか」の把握と、「それを具体的にどう活用したいのか」というニーズの解像度を上げるプロセスには、地道な工程が必要でした。技術検証と並行して、こうした社内の情報資産を棚卸しし、現場ニーズの解像度を高めていく地道な活動が必要なのではないかと考えています。
「呼吸するようにAIを使う」未来へ。次の5カ年を見据えた展望
――今後、生成AI活用の展開として、目指していきたいことは何ですか。
木原:よく「生成AIが普及すると仕事がなくなる」という言葉を耳にしますが、生成AIには「創造力や判断力を引き出すためのサポート」としての可能性があると感じています。社員が業務で壁にぶつかった際、生成AIによってアイデアや発想が助けられる状態を目指していきたいと考えています。
小松:社内情報と連携した生成AI活用も模索しています。生成AIが社内の文書やデータを参照して回答を生成するような環境を構築することで、問い合わせ対応の効率化や無人化にチャレンジしていきます。
松井:直近の取り組みとして、間接部門の生産性向上に向けた、全社的な業務時間の可視化に着手しています。これまでの感覚的な改善から脱却し、データに基づいて改善の方向性を絞っていきます。最終的に目指すのは、社員が「AIを使っている」と意識することなく、「呼吸をするように自然にAIのサポートを受けられる状態」です。AIが単なるツールではなく、創造性を引き出してくれるパートナーとして共に働くことで、社員一人ひとりの生産性をさらに高めていきたいと考えています。
※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。
生成AIの活用で企業変革を実現する「Graffer AI Solution」
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