AI時代に企業価値を提供し続けるための、国分グループの生成AI活用戦略

1712年の創業以来、酒類食品卸売業として300年を超える歴史を持つ国分グループ。時代の変化に対応し続ける彼らが、最新テクノロジーである生成AIを導入した背景は何だったのでしょうか。「Graffer AI Solution」の導入後、どのように取り組みをスタートし、全社的な推進を行ったのか、その実践的な事例と効果についてお伺いしました。

背景

・時代の変化を乗り越え企業価値を高めるために、全社での生成AIの導入を決めた
・ChatGPTを利用した内製ツールの開発を経て、外部AIツールの検討を開始
・セキュリティ面・伴走支援や、プロダクト自体の思想・柔軟性などを評価し「Graffer AI Solution」を導入

成果

・新入社員をはじめとした社員が、当たり前に生成AIを業務に活用できる仕組みを整備
・マーケティング部門や広報部門をはじめ、さまざまな部門で活用事例が生まれている
・生成AIの利用を通じて、人にしかできない業務に、より集中する風土の形成を目指しグループ全社へ展開

社会の変化に迅速に対応していくために、業務において当たり前に生成AIを使える環境を用意することを決めた

――どのような背景で生成AIの導入を決めたのでしょうか。

酒井:これから起こり得る社会の変化を乗り越えるために、生成AIの自由な発想を取り入れるべきだと考えたのが背景です。当社の300年以上の歴史の中で大切にされてきた考えが、「継続する心、革新する力」です。人類の英知とも言える生成AIは、まさに大きな変化で、人の想像力を支え、革新を生み出すことに役立てられるツールだと感じました。

――生成AIを、単なる効率化のためのツールとしてではなく、人の想像力を支えるツールとして活用しようと考えられたのですね。

酒井:その通りです。生成AIを活用する根底には「なぜこの仕事をするのか」という価値観(パーパス)があるべきだと考えています。いくら自分のパソコンで生成AIを利用できても、企業理念の一節である「食を通じて世界の人々の幸せと笑顔を創造する」に向かう「ありたい姿」が想像できなければ、生成AIを自分の行動変容に結びつけることは難しいのではないかと思います。このように、事業を通して実現したい「目的感」や「ありたい姿」があった上で、私たちの想像力をサポートする役割として、生成AIは大いに活用ができるツールだと考えています。

執行役員 情報システム部長 兼 サプライチェーン統括部 業務改革推進部長 兼 デジタル推進部長

酒井 宏高様

――導入の取り組みはどのようにスタートしたのでしょうか。

酒井:2022年末にChatGPTが登場した当初、実は生成AIの利用を禁止していました。逆張り的ではありますが、社内から「使いたい」という声が挙がることを期待したという背景があります。なぜなら、生成AIが競合やお取引先に与えるインパクトはかなり大きいことが想定され、社員自らがより主体的に、迅速に学ぶ必要があると考えたためです。結果的に、社内で「生成AIを使いたい」という声が挙がり、全社導入に踏み切りました。

セキュリティ面・複数モデルの選択可否・伴走支援などが導入の決め手に

――全社導入を決めた後、どのような流れで取り組みを進めたのでしょうか。

酒井:まずはChatGPT登場の半年後である2023年6月に、情報統制のために社内の生成AI利用方針を策定しました。その後、利用者を限定したChatGPTのテスト利用の実施、またChatGPTのAPIを利用した「KOKUBU-GAI」という生成AIツールを社内で開発し、マーケティング部門での利用を開始しました。役員にも使ってもらうことで、初期の段階から経営陣が具体的なイメージを持てるようにもしました。

――まずは、生成AIツールの自社開発に取り組まれたということですね。

吉田:はい、まずは内製化でChatGPTツールを開発しました。しかし、内製化にはデメリットもあります。

最新情報の入手に関する点です。生成AIは変化の激しい領域のため、常に最新の状況をキャッチアップし続ける必要があります。これらを常に社内のリソースだけで担うには限界がありました。

次に、複数モデルへの対応です。ChatGPTが発表された当初は、「生成AIといえばChatGPT一択」のようなところがありましたが、現在はさまざまなモデルが登場し、状況は刻々と変化しています。こうした状況に柔軟に対応できるようにするには、内製化だけでは難しいと考えました。そこで、内製化を経て外部のAIツールの検討を開始しました。

マーケティング・商品統括部 事業推進部 デジタルマーケティング課 グループ長 兼 サプライチェーン統括部 デジタル推進部 デジタル推進課 グループ長

吉田 尚起様

――内製化でスタートした後、外部のAIツールの検討を始めたということですね。比較検討はどのように進められましたか。

酒井:展示会などで情報を収集しながら、機能やサービスを比較しました。その際に主な判断軸となったのが、セキュアなサービスであること、モデルを容易に切り替えられること、伴走支援サービスがあることです。

グラファー社は自治体に対してサービスを提供しているなど、セキュリティ面での信頼性の高いスタートアップ企業です。モデルに関しては、GPT-3.5 turboやGPT-4 turboなど最新のモデルから選択することができます。さらに、生成AIという変化の激しい領域において、地に足の付いた伴走支援を提供していると感じました。こうした点で「Graffer AI Solution」が我々にとって最適な選択肢だと判断しました。

――実際にサービスを利用してみていかがでしたか。

酒井:「Graffer AI Solution」は期待通りのサービスで、特に伴走支援が充実していると感じます。生成AIという変化の激しい領域に企業として取り組むのは、実際のところ不安もあります。しかしグラファー社はこうした不安に寄り添い、国分グループが「なぜ企業として生成AIに取り組むのか」といった思いや背景を理解したうえで、最適な提案を行ってくれます。

――外部サービスとして「Graffer AI Solurion」を選定した後、どのような流れで導入を進めましたか。

吉田:「Graffer AI Solution」の選定後、2024年1月に対象者を限定し、検証導入をスタートしました。その後、社内での調整を行い、同年4月にサービスを全社公開。全社員がサービスを利用できるような環境を用意しました。4月を公開時期に設定したのは、これから入社してくる新入社員が、当たり前に生成AIを業務に活用できる環境を作るためです。短い準備期間でしたが、グラファー社の伴走支援のおかげもあり、適切に進めることができました。

「DXラボ」「社内研修」などを通じて社内への生成AI浸透を図っている。

――新入社員からは、生成AIに対してどのような反応がありましたか。

相部:新入社員研修の中で生成AIについて紹介した際には、鋭い質問や意見がありました。例えば「人とAIでどのように仕事のすみ分けを行うのか」「外部の会社と連携しながら生成AIの導入を進めているのか」といった質問です。

――国内の多くの企業からは「どのようにして生成AIを社内に浸透させるか」という点に苦労しているという声も聞かれます。国分グループでうまくいったと思う取り組みや、工夫したことがあれば教えてください。

吉田:まずは体制についての工夫です。国分グループでは「業務DXラボ」を中心に生成AIの検証や活用支援を行っています。「ラボ」という名前の通り、新しい技術やサービスを積極的に検証して、業務活用を検討する組織です。企業として新しい「変化」を取り入れる際、生成AIのように「活用できそうだが、実際の業務にどのように役立てられるか分からない」という技術は多くあります。こうした領域に対して、研究を通じて社内での応用を積極的に行っています。

――生成AIを含めた、さまざまな新技術を検証するのが「業務DXラボ」ということですね。

吉田:はい。「業務DXラボ」では常に複数の技術を検証しています。体制としては、現場から「デジタルエバンジェリスト」という人材を募り、彼らとともに技術の検証と現場への活用に取り組んでいます。

単に技術を検証するだけではなく、デジタル人材の育成も目的としているため、現場の業務課題を整理したり、社内での調整を効率的に行ったりするための座学も行っています。若手社員からベテランまで「何かを変えたい」と思っているメンバーが多く、パワフルな組織となっています。

――組織がしっかりと体制を整えてくれるのは、当たり前のようで、実際にはなかなかないことだと感じます。「業務DXラボ」に取り組む中で、苦労したことはありますか。

吉田:「業務DXラボ」の取り組みを始めて3年目となりますが、課題も見えてきました。例えば、多くの知識を得た「デジタルエバンジェリスト」が現場で十分な力を発揮できないという課題です。こうした点について、今後は体制に工夫を加え「デジタルジーニアス」という情報システム部門の人材が、現場の「デジタルエバンジェリスト」の活動をサポートする体制を整えていく予定です。

――組織的に「変化」を受け入れ、現場を巻き込みながら改善を重ねているのですね。生成AIについては現場への「研修」についてもよく話題にあがるポイントです。国分グループで効果があった研修があれば教えてください。

吉田:特に効果があったのが、プロンプトの書き方に関する研修です。すでに生成AIを活用している方にとっては当たり前のことかもしれませんが、生成AIには得意・不得意があります。これらの得意・不得意を理解せず「何でもできそう」という期待値で生成AIを使ってもよい成果は得られません。実際「社内システムの使い方」や「○○株式会社について教えて」といったような生成AIにとって苦手な内容の質問をした結果、適切な回答が返ってこず、低評価となっているケースを目にします。

しかし、生成AIの得意とする使いどころを見定めて、適切にプロンプトを書くことができれば評価も変わります。特に研修時の反応がよかったのは「プロンプトには前提条件を書く」という知見です。このような研修とあわせて、前提条件を書くためのプロンプトをテンプレートで用意し、さまざまなケースをカバーできるようにしたところ、生成AIのポテンシャルを引き出せる社員が増加しました。プロンプトの書き方については、今後実施する社内研修にも取り入れていきたいと考えています。

社内での生成AI活用事例:マーケティングなどのさまざまなシーンで活用

――具体的な活用シーンについてお聞きします。生成AIを社内のどのような業務で活用していますか。

相部:一つがマーケティング部門での活用事例です。店舗視察レポートのコメントを要約したり、アンケートを作成したりする際に生成AIを活用し、業務効率化につなげました。

サプライチェーン統括部 デジタル推進部 デジタル推進課
相部 真由様

――店舗視察レポートのコメント要約とはどのような業務ですか。

相部:店舗視察レポートは、クリスマス、母の日など食に関連するイベントにおいて、マーケティング部門のメンバーが複数の小売店を視察し、社内用に作成するレポートです。

これまで、店舗視察レポートを最終的に取りまとめるのは、個々のメンバーの仕事でした。しかし、生成AIを活用することによって、「各個人のレポートから共通点や特徴を探して要約する」というタスクが自動化され、マーケティング部門のメンバーは、より施策の分析や販促のヒントとなる考察コメントの作成に集中できるようになりました。

――次に、アンケート作成についても詳しく教えてください。

相部:食のトレンドを把握するために展開しているマーケティングサイト「ぐるっぱ」で実施する生活者向けアンケートの作成に、生成AIを活用しています。アンケートの作成で工夫したのが「○○についてのアンケートを作成してください」といったように、1ターンで結果を出さないようにすることです。まずは生成AIでアンケートの設問の軸を作成し、人の目で方向性に齟齬(そご)がないかを確認したうえで、その軸をもとに設問・回答の選択肢を作成することで、当初のイメージとずれのないアンケートを作成することができます。

マーケティング部門では、要約やアンケート作成に生成AIを活用している。

――他にはどのようなシーンで活用されていますか。

森:広報チームにおいて、新商品のリリース文の作成やキャッチコピーの作成などに生成AIを活用しています。

情報システム部 システム企画・管理課
森 佑貴様

――リリース文の作成については、どのように生成AIを活用していますか。

森:プレスリリースなどの素案を作成する際に生成AIを活用しています。新商品の企画書に記載してあるさまざまな情報をインプットして、最終的にこれまで人が作っていたリリースのフォーマットに近いものを出力することができています。

工夫したのは、生成AIとの会話を重ねる中でずれを修正しながら、最終的なアウトプットを出すことです。文章作成後の文章校正にも生成AIを活用しています。

――キャッチコピーの作成については、どのように生成AIを活用していますか。

森:リリースのサブタイトルのキャッチコピーを考える際、アイデア出しをするタイミングで、生成AIを活用しています。これまでは人がコピーを考えていたため、ある意味でアイデアには限界もありました。しかし、生成AIを使いリリースに記載した内容を端的に表現したキャッチコピーのアイデアを複数個出すことで、新たな発想を持つことができるようになりました。

広報部門では、リリース文の作成やキャッチコピーの作成に生成AIを活用している。

――実際に現場で利用した社員からはどのような反応がありましたか。

相部:「生成AIの速さに驚いた」「すごい」という声が多く聞かれました。導入当初は、「使いこなせないかもしれない」という不安の声も耳にしましたが、研修などを通じて徐々に雰囲気が変化してきたように思います。特に、プロンプトを変化させると、アウトプットが理想に近づいていくという経験を通じて、最終的には「どんどん使っていきたい」というポジティブな印象に変わってきていると感じます。

今後は「人にしかできない業務」に集中するために生成AIを活用していく

――生成AIの社内展開については、どのように進めていく予定でしょうか。

吉田:さまざまな研修機会を通じて、生成AIの有効な使い方を社内に浸透させたいと考えています。研修の中では、生成AIに対する誤解を解きながら、業務に応用しやすい環境を適切にサポートしていきます。

――生成AIについての誤解として、どのようなものがあると感じますか。

吉田:まずは「何でもできる」という誤解です。生成AIを業務で活用する際、正しい知識があるかないかによって、アウトプットは大きく変わってきます。そのため、現在のステージでは何ができて、なにができないのかを理解することは重要だと感じます。

次に、「生成AIを使えば仕事が楽になる」という誤解です。一般的には生成AIによって仕事が効率化されて楽になるというイメージもありますが、私自身は「生成AIを使いこなすと仕事はさらに難しくなる」と伝えるようにしています。

――生成AIを使うことで、仕事が難しくなると考えられているのはなぜですか

吉田:生成AIを使いこなすということは、生成AIの回答内容が正しいものであるかを判断するための知識と思考力が必要になるということです。生成AIをうまく使うことができると、まるで100人の部下がいるようなスピード感で判断すべきアウトプットが次々と出力されます。そのため、人はむしろ、生成AIの手綱を握りながら、スピード感を持って判断していくような働き方にシフトしていくのではないかと考えています。

――会社全体としては、生成AIを今後どのように活用していく方針ですか。

酒井:まずは、人が行っている仕事のうち代替できるものから、生成AIに任せていきたいと考えています。その背景には「人は人にしかできない価値を作ることに集中してほしい」という考えがあります。社会の変化に伴い、お客様のニーズも変化しています。こうした変化に柔軟に対応し、最終的にはお客様に新たな価値を提供することに力をそそいでいきたいと考えています。

※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。所属や氏名、インタビュー内容は取材当時のものです。

生成AIの活用で企業変革を実現する「Graffer AI Solution」

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プライバシーマークおよび情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得済み。これまで200以上の官公庁にサービスを提供してきた株式会社グラファーが運営しているため、エンタープライズ企業で安心してご利用いただけます。無料お見積もり、デモのリクエストなど、お気軽にご相談ください。

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