2022.05.17 Tue

元コンサルの経営企画担当が「Govtechの市場環境」を分析してみた

こんにちは、2021年9月からグラファーに経営企画としてジョインしました岡本と澤田です。

グラファー、社会において、より大きな価値を生み出すためには、何をなすべきかを考え、云々うなっている毎日です。この悩みを一緒に解決するメンバーを探すべく、分かりそうで分からない「Govtech(ガブテック)の市場環境」について、少しまとめてみることにしました。

是非、記事をご一読いただき、ガブテック、そしてグラファーに興味を持っていただければ幸いです。

元コンサルの経営企画担当が「Govtechの市場環境」を分析してみた

Govtech(ガブテック)市場とは?

新しい行政を創るガブテック

ガブテックとは、地方自治体や官公庁などの行政機関が、DXを実現するための手段です。一般的な民間企業でもよく言われることですが、単なるシステム導入によるIT化や業務効率化の推進のみならず、真の意味でのDX、つまり、「デジタルを前提とした業務を通じて、業務を変革し、今まで以上の価値を生み出す」という範囲が、ガブテックの概念に含まれます。

関連情報:『ガブテック(Govtech)とは。行政デジタル化の最新事情

市場規模は6,000億円超

総務省のレポートによると、平成29年度における市区町村の「情報システム経費」の合計金額は、4,786億円となっています。矢野経済研究所のレポートによれば、都道府県を加えると、実に地方自治体だけで約6,800億円超の市場規模があると想定されます。

官公庁も含めれば数兆円の市場規模ともなるガブテック市場は、他産業のテック市場と比較しても、引けをとらない大きな市場規模といえます。


ガブテック市場は、大規模プレイヤーのプレゼンスが大きいものの、新旧のさまざまなプレイヤーが参入する市場

ガブテック市場において金額ベースでプレゼンスが大きいプレイヤーは、NEC、富士通、日立などの大手Sierであり、過半のシェアを占有しています。その他については、各地方や都道府県に根付いたベンダーがシェアを取り合っているような状況です。

スタートアップのプレイヤーとしては、グラファーの他、トラストバンクやアスコエパートナーズ。それ以外にもEBPM(※1)や政策支援などを推進しているケイスリーやWiseVineなど、いくつかのプレイヤーが参入し、行政に新しい価値を提供しようと邁(まい)進している状況です。

(※1)EBPMとは
EBPMとは、「エビデンスに基づく政策立案(Evidence-Based Policy Making)」のこと。統計データなどの客観的なエビデンスをもとに、政策の決定を行うことを意味します。

行政デジタル化の実態

行政領域におけるデジタル化は、約20年前からはじまっている

行政デジタル化は最近はじまったことのようにも思えますが、実は1996年頃からスタートしています。国の主導で、行政以外の領域も含めた日本全体のデジタル化を推進すべくe-Japanが発表されたのが2000年。行政領域においても、基幹システム等の導入が進みました。他にも、住基カード(住民基本台帳カード)の交付も2003年から開始されました。しかし、真の意味でデジタル化が進まず、市民・行政機関ともに、課題を抱えている状況です。

行政手続きにかかるコストは、年間3兆1,070億円

内閣府の調査によると、調査対象となっている行政手続きについて、手続きを進めるにあたって、費やされているコストは、国の手続きだけでも、3億3,337万時間。都道府県の手続きでは、8億9,901万時間と膨大なものになっています。換算すると、国で約8,000億円、都道府県で約2.3兆円のコストが毎年発生している計算です。市区町村を除いた行政手続きコストだけで、実に約3兆円に上るコストが発生していることが公表されています。

市民目線で見るガブテック

次は、ガブテックを市民の目線で考えてみます。市区町村の役所の窓口における待ち時間は、全体として、非常に長くなっています。例えば、奈良市では、お昼の時間帯における待ち時間は、1時間を超えることが公表されています。

出典:【市長会見】窓口案内システムの導入で混雑状況を見える化(令和3年3月25日発表) - 奈良市ホームページ

住基カードについては、総務省の発表によると交付から10年以上経過した2014年時点での交付枚数は、約833万枚となっています。e-Japan以降、システム導入や住基カードの交付などの施策が行われましたが、ユーザーエクスペリエンスの観点で考えた際、必ずしも職員や市民にとって使いやすいシステムとはいえませんでした。この背景には、システム導入自体が目的化していたことや、ベンダーロックイン、オンプレミス型システムの問題があったといわれています。

グラファーではどのような価値を提供している?

ではこのような市場環境で、グラファーが何をしようとしているかを一言で言うなら、「従来解決することができなかった課題に取り組む」です。

グラファーでは、最適なユーザーインターフェースや、市民・職員にとって使いやすい機能開発、ガバメントサクセスを通じて、プロダクトが市民・職員に利用されることを重視しています。例えば、毎週行われるAll Staff Meetingでは、プロダクトの利用状況を全員で共有しています。また、ガバメントサクセスチームでは「自治体にプロダクトを導入してもらうことがゴール」ではなく、「実際に市民に活用してもらうことがゴール」と捉えて、自治体をサポートしたり、市民や職員の声を踏まえ、継続的に改善を行っています。

グラファーが現在目指しているのは、すべての行政サービスがデジタル上で完結するようにデータ連携を図る「エンドツーエンド」の実現です。プロダクトを通じて、行政手続きや情報発信、審査業務やデータ活用といったすべてのデータが連携するようにしていきたいと考えています。そのために取り組むのが、まずはデータの入り口となるオンライン申請などに関わる領域です。ガブテックによって日本の行政をデジタル変革し、市民が恩恵を受けるために、「エンドツーエンド」の視点は欠かすことができません。

ガブテック市場のこれから

直近では、制度改革が加速

2019年12月の「デジタル手続法」を機に、デジタル化の流れが加速しています。さまざまな法整備を通じて、「オンラインでも手続きができる」という状況から、「手続きは原則オンライン」という方向に、大きく転換しています。2025年度末までには、すべての市町村が、ガバメントクラウド上に構築する標準準拠システムを利用できるようにするという動きも進んでいます。

行政デジタル化が社会的に注目されている背景には、2020年以降、コロナ禍における「デジタル化の遅れ」がメディアなどでクローズアップされたこともあります。行政におけるデジタル化が毎日のように報道されたことを受けて、国の中心的課題に位置づけられるようになりました。

一方、国・自治体のIT市場において、高額な「保守・運用費」の政策的縮小も目指されています。基幹システム類については、クラウド活用、仕様標準化などによりコストを削減する方向で議論が進んでいるため、最終的には数社のベンダーに集約されていき、規模としてはやや縮小する見込みです。

ただし、「攻めのIT投資」の領域は成長を続けると考えられます。オンライン申請をはじめとした市民サービスの拡充、プッシュ型行政サービスの検討、EBPMの深化、役所全体のBPRなど、攻めのテーマに予算が回ってくれば、これらの予算がそのまま新規参入のチャンスとなります。

また、デジタル庁におけるベンチャー・スタートアップの活用や民間人材の活用などスタートアップにとってはチャンスといえる状況が続いているといえます。実際、デジタル庁には、スタートアップ企業のマネジメント層が多く在籍しています。さらにグラファーにおいては、2021年に「J-Startup」に選定されており、スタートアップ企業として、調達時にさまざまな優遇が受けられる状況です。

参考:株式会社グラファーが2021年「J-Startup企業」に選定されました

以上を踏まえると、ガブテック市場では、今後も「攻めのIT投資」が加速することが予想されます。グラファーにおいても、制度面での支援も受けながら事業をどんどん加速させていきたいと考えています。ぜひこの機会にジョインしたい!という方をお待ちしております!

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