2021.05.24 Mon

元国税庁職員の経験はスタートアップでどう活きるのか。職員時代とスタートアップとの違いを聞く

グラファーで活躍するメンバーにざっくばらんに話を聞く、よもやま部屋。今回は、元省庁職員でBizdevメンバーとして、多くの自治体のDXを最前線でリードする櫻井さんに、広報兼Bizdevの本山が話を聞きます。

【今回取り上げる人:櫻井 優広島県出身。2004年広島国税局に入職。各地の税務署での勤務を経て、国税局へ。その後2016年に国税庁に異動し、確定申告システムの改善プロジェクトに携わる。2019年にグラファーに入社。政令指定都市を中心とした、多数の自治体におけるデジタル化プロジェクトを牽引する。

元国税庁職員の経験はスタートアップでどう活きるのか。職員時代とスタートアップとの違いを聞く

省庁での経験は、スタートアップの仕事に活きるのか?

——今回は、省庁出身のグラファーメンバーに、省庁での経験がスタートアップで活きるのかどうかをざっくばらんに聞きます。はじめに自己紹介をお願いできますか。

2019年にグラファーへ入社。行政が手続きをデジタル化する際の、プロダクトの仕様設計、法令や業務フローの整理、UI/UXの設計などを行っています。

新型コロナウイルス対策支援金申請をはじめとした、数々の大規模プロジェクトを統括する櫻井さん。

——櫻井さんは、法令やプロダクト、UI/UX設計の細部まで理解したうえで、行政が抱える課題を最前線で解決しています。櫻井さんを知る、横浜市や神戸市などの職員さんからは「櫻井さんがいたから成功した」と言われるほど信頼されていますよね。

ありがとうございます(笑)。

——実際のところ、現在の仕事には省庁での勤務経験が活きていますか?

省庁での経験が活きているのは間違いありません。前職では約15年間、税に関わる仕事をしていました。入庁当時は、税務署で窓口業務や税務調査に従事。2012年頃からは、広島国税局で中国地方の所得税所管部署組織の運営に従事。その後、全国を管轄する国税庁で全国の所得税所轄部署組織の運営や国会対応、会計検査院の組織運営を行っていました。大きな組織で議論したことや、優秀な同僚から学ぶことは多くありました。

——例えば、どんな経験ですか?

特に活きているのは、業務効率化を突き詰めた経験だと思います。

省庁勤務で、業務効率化を突き詰めた経験が役に立っているという。

——業務効率化を突き詰めた経験というと、具体的にどんなことでしょうか。

業務を効率化する時に、「目的設定、現状の定量分析、実行、結果を評価」というプロセスを踏んでいた経験です。業務効率化は、行政の現場でもよく課題となりますが、しっかりと計画して評価するというプロセスなしに「業務を効率化しよう!」と進めてもうまくいかないものです。このプロセスが身についていることは強みになっていると思います。

——なるほど。デジタル化は効率化を進める手段の一つですしね。

そうですね。デジタル化といっても魔法のようなことをするのではなく、その前提にあるのはあくまでも業務を整理して運用にのせていくことかなと思います。

——もう一つ聞いてみたかったのが、櫻井さんって法令を深く理解しながらも、自分でコードを書いたり、UIを最適化するためにエンジニアと議論したり、というところまでされていると思うのですが、もともとどんな経験をしていたら、そこまで幅広くできるようになるのでしょうか。

国税庁の頃に、システムベンダーの方々とやりとりをしていた経験が大きいと思います。

リアル謎解きゲームにはまる本山が、櫻井さんの強みの謎を解きます。

——システムベンダーの方々とやりとりをしていても、コードを書けるようには……なりますか?

そこは自分で勉強していました。システムベンダーの方々とやりとりする際に、「これはシステムで実装できる・できない」という判断をすべて任せるのではなく、自分自身で調べて、より適切な方法があるのであれば、そちらの方法に切り替えてもらったり。どんな些細なことでもネットで調べて解決する癖をつけていました。

些細なことでも、納得いくまで自分で調べることが、回り道のようで近道なんですね。

——なるほど。その積み重ねでシステムの知識が身についたということですね。法令に関しては仕事柄接する機会が多かったので深く理解されている、ということでしょうか。

法律に関しては、法律自体を知っていることよりも、法律の読み方や、何をどう調べればよいかという点が必要になってくると感じます。そういった意味では、前職で法律を読むのに慣れていたことや、どう調整すればよいかという勘所が身についていることは役立っていると思います。

——あと、櫻井さんがやる製品の品質チェックは半端なくすごい(笑)といろんな方から聞いています。どういう経験がこのスキルに結びついたのでしょうか?

業務の指示をするために、指示文書を書いていた経験が役に立っていると思います。文章に誤りや齟齬がないようにしないと、解釈や理解のギャップにつながり、現場の運用に影響するという経験をしました。グラファーでも、非常に多くの文章をチェックする機会があります。こういった経験を日常的にしていたのが、仕事の中で役立っていると感じます。

オンライン申請のUX設計やUXライティングにも抜かりのない櫻井さん。「UXは、システムを使う相手を想像して思いやること」と話す。

一番の違いは「意思決定のスピード感」

——逆に、省庁からスタートアップに入って苦労したことはありますか?

意思決定のスピードが早いのは大きな違いでした。省庁時代は、どうしても決裁を取るために「叩くプロセス」。つまり、何人もの合意や承認を得ていくを経る必要があります。これはどちらがよい悪いではなく、組織が大きい分、仕方がないことではありました。

公務員から民間企業で働くのは、しんどさもあった……という櫻井さん(笑)。

——環境の違いで、戸惑ったり悩んだりしませんでしたか?

スピード感の違いはありますが、それに悩むということではなく、自分の中ではあくまで違いといった感じです。省庁で、意思決定の過程で行ったりきたりする「叩くプロセス」はそれはそれで貴重な経験だったと思います。

——意思決定のスピードが早いのは、櫻井さんにとってはストレスではなかったと。

そうですね。グラファーで意思決定をする時には、感情論ではなく、合理的に進むと感じることが多く、そういった面ではやりやすさを感じています。自分の主張が非合理であればはっきりとNGをもらえるし、合理的であればOKがもらえる。そこには、肩書きや感情が介在する余地がないというか。やりたいことに対して、ロジカルに、リスクを含めて考えれば、顔色を伺わなくてもよいという仕事の進め方はやりやすいと感じます。

「グラファーでは合理的な判断が多い」には、その場にいた全員が合意。

——確かに「やりたいことに対して合理的であればOKがもらえる」というのは、その通りですね。

若いメンバーが遠慮なく「この方が良いと思う」と発言して、それが実際に反映されている場面もよく見ます。職員時代は、やりたいことがあっても、自分がそれを決められる立場になるまで耐えるような人もいた印象があります。

スタートアップは決してきらきらではない

——スタートアップへの転職を考える方へのメッセージがあれば聞かせてください。

スタートアップって、「早い、きらきら、かっこいい」みたいな漠然としたイメージがある人が多い気がしています。自分も公務員で働いてる頃はそう思っていました。だけど、実際には、役割が細分化されてない分、自分自身で学習しないといけない範囲も広く、決して「きらきら」ではないと感じています。

いま一番大切にしたいことは何か。その答えは日々変わる。

——実際には泥臭くやらないといけない部分もあると。では、スタートアップへの転職に興味がある公務員の方は、どういった基準でキャリアチェンジを判断したらよいと思いますか?

少し抽象的かもしれませんが「自分が人生で何を大切にしたいか」といった価値観に従って選択するのがよいと感じます。公務員は、すごく意義がある仕事です。私自身も、やりがいがなくなったというより、自分にとって大切なことと、組織の一員として求められてることにギャップが出たというのが率直なところです。

——櫻井さんの場合は、スタートアップに転職して今は幸せだということですね。

そうですね(笑)。結果としてこの会社でよかったと思います。自分の価値観だったり意思、求める環境がたまたまスタートアップだっただけで、マッチする会社で働ければ幸せなのではないかなと感じます。


編集後記
プロジェクトが終わったお客さんに「櫻井さんとの仕事が終わっちゃってさみしいから、新しいことやらなきゃ」と言わせる櫻井さん。今回、その敏腕っぷりの裏側を聞くことができ、なるほど!と頷きまくりでした。スタートアップはきらきらではない、には同意ですが、櫻井さんはきらきらと輝いて見えますよ!これからもよろしくお願いします。

(※文中の敬称略。撮影時のみマスクを外しています。役職等は取材時点の情報です。)


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